表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ノワの方舟  作者: EVO
先の星へ
13/71

013.バレちゃった!?

 暗黒生命体戦闘貢献度:優、報酬額1億マニ

 そんな明細書が帝国艦隊からアークに届いたのは、爛れた・・・、いや、ストレス解消をした日から2日後だった。

 添えられたメッセージに書かれていたのは、現在の帝国艦隊規約では即金1億以上の支払いに時間が掛かる為、先払いでこの額を支払う、との事だ。

 つきましては報酬支払いの遅延の詫びと大規模作戦の御礼を兼ねて旗艦ガルガンチュアでお食事でも、とのお誘いが書かれていた。


「どうなのキャプテン、軍からのお誘いってあるの?」

「んー、まあそれなりにある話ではあるね、ウチらは今回の戦役でかなり貢献した、腕利きの傭兵と懇意になりたいって軍人はそれなりに居るよ」

「そういうもの?」

「ああ、特にノワは(ニャービー)級だから、クラスが上がって有名になる前に繋ぎを取ろうとしてる可能性が高いねえ、こちらとしても軍とのパイプはあって困らない、まああの少佐なら良いんじゃないかい?」

「そっか、じゃあ招待受ける方向で、あっ、マナーとかは大丈夫かな」

「傭兵相手に煩くは言わないさ、その辺はあちらさんも織り込み済みの歓待をしてくれるだろう」

「ご心配であれば私がマナー指導を致しますが」

「あ、じゃあシェフィお願いします!」

「はい、では早速今日から簡単なメニューで実践していきましょう」


 キャプテンは産みのママの友達、機動騎士の家系で代々貴族の護衛艦を駆る家の出身なので意外な事にマナーは完璧だった、普段は長い茜色のくせっ毛をワシワシしたりお酒を飲んでほろ酔いになってるイメージが強いのにね。

 私も実は育てのママの教えが正式なマナーだったらしく、シェフィに細部を指摘された程度で済んだ、経験なしからの付け焼き刃にならなくて良かった、帝国艦隊の左官級は大半が貴族だからね、失礼のないように気をつけよっと。


 ***


 旗艦ガルガンチュアへはアークごと向かう、指定の格納庫に着艦する、港湾の時と同じでオートで発着だね、マニュアルでも出来るけど間違って戦艦に傷を付けようものならどれだけの損害請求が来るか分からない、安心安全のオートだよオート。

 着艦後はメインジェネレーターの出力を最低に落として、艦表面の冷却、安全を確認後ハッチを開ける。


「堅苦しいねえ」


 そう言うキャプテンは普段の古代海賊(クラシックパイレーツ)の様な格好ではなく、紺色の上下パンツスーツだ、キャプテンは身長高いし脚長いから何を着ても格好良い、ただ上着にいつもの金糸の刺繍が入った革のロングコートを羽織っているので、今度は古代極道(クラシックマフィア)みたいに見える。


「私は変じゃないかな?」

「お似合いですよノワ様」


 私も正装、とまでは言わないけどそれなりに体裁を整えた服装だ、白を基調とした赤のリボンタイが可愛い膝丈のドレス、勿論シェフィプロデュースで正装にしてはカジュアル、普段着にしてはちょっぴり気取った感じに仕上がっている。

 流石にこの服装にキャプテンから借りている海賊三角帽子は似合わないので、皇族の証である白銀髪と蒼眼隠しにオーロラヴェールと呼ばれる偏光技術が使われたヴェールを被っていく、これのお陰で白銀の髪は少しくすんだ銀、蒼眼は翡翠眼に見える、そしてシェフィは常にメイド服だ。

 キャプテンが先にタラップを降りて振り向く


「さあ姫君、御手をどうぞ」

「ありがとう、ドレイク」


 キャプテンの悪ふざけはあながち嘘でも無い、まあドレスのせいで足下が良く見えないので有難くエスコートを受けた。


『おお、アレがアークの少女キャプテンか?』

『誰だよ「あんな機動で戦う女は絶対ゴリラだ」って言ったやつ』

『身長高い方が好みだな、迫力美人つーか、野性味があって』

『俺はお嬢さんの方が良いなあ、本当に傭兵か? 小国の姫って言われたら信じるぞ』

『あんな可憐な子がブレードを?』

『すげぇよな、俺戦闘ログ確認したけど、どの艦も斬った時の間合いがピタリ一緒なんだぜ』

『メイドロイド萌えーー!』


 最後変な声がしたけど、格納庫には大勢のメカニックさんやパイロット、軍人達が集まっていた、2層上のロフトからも覗かれている。


「騒がしくて申し訳ありません、皆娯楽に飢えていまして、私は旗艦ガルガンチュアの艦長ワグナス少佐の副官ニーナ中尉です、皆様の御案内をさせていただきます」

「サブパイロットアドバイザーのドレイクだ」

「キャプテンのノワです」

「オペレーターのシェフィです」


 ニコリと頷いたニーナ中尉に着いていく、ニーナ中尉は黒髪で肩で切り揃えた凛々しい女性士官だ、今日は艦長であるワグナス少佐のプライベートスペースでの食事会となっているらしい。


「皆様の活躍に我々帝国艦隊は非常に感謝しております、暗黒生命体出現時の迅速且つ効果的な行動がなければ艦隊の一部に被害が出ていたでしょう」

「あ、いえ!アレは運が良かったと言いますか」

「帝国艦隊の運が無かったねえ、くくく」

「ちょっとキャプテン!」

「いえ、その通りです、まさか背後にあのタイミングでの遭遇戦は悪運としか言い表せません」


 ニーナ中尉は苦笑しながらも特に気にした様子もなく歩を進める、キャプテンいつもの調子で失礼なこと言わないでよね。

 それにしても戦艦って本当に広いなあ、小型艦のアークは勿論、艦載機である帝国の主力小型機ストライク・ホークが数十機ズラリと並んでいるし、今通っている通路にしても幅広く天井も比べ物にならない。


「戦艦は初めてですか?」

「はい、本当に広いですね」

「艦載機に加えて、弾薬、エネルギーパック、医療物資、食料品と艦隊に必要な物資も積んでいますからね」

「補給艦には積まないんですか?」

「補給艦ですとどうしても荷室容量ばかり優先になって護衛戦力を割かなくてはならないんです、撃沈されて物資不足になっても困るので1番落ちにくい最大戦力の戦艦に集中させてます」

「へえー、色々考えられているんですね」

「戦艦が落ちる時は艦隊が崩壊している時だからね、メインとシールドジェネレーター出力を考えたら合理的な判断さね」


 ふんふん、母艦兼主力という事だね、まあ暗黒生命体に撃ち込んだ主砲を見ても分かるけどパワーこそ正義と言わんばかりの射程と破壊力だもんね、理にかなってるか。


「こちらです、少佐、アークの皆様をお連れしました」


 戦艦に搭乗するなんて中々無い経験だからね、気になったものに質問するとニーナ中尉は快く答えてくれた。

 歩いて10分程だろうか、案内されたのは左官級のプライベートエリアのようだ、ニーナ中尉がインターフォンで呼び掛けるとブリーフィングや広域通信で聴こえていた少佐さんの落ち着いた返事が返ってきた。


「おお、これはこれは・・・、星々の輝きも霞んでしまう美しいレディー達をお迎え出来て光栄だよ」

「・・・少佐」

「中尉、これは紳士として淑女に贈らなければならない賛辞だよ」

「・・・まずはご挨拶からでは?」

「おっとすまない、改めて、私は帝国艦隊所属ワグナス少佐だ、この艦の艦長を任されている」

「副官のニーナ中尉です」

「キャプテン・ノワです」

「ドレイクだ」

「メイドのシェフィと申します」


 少佐さんはニコニコと頷いた、見た感じは裏がなさそうでホッとした。


「さあ、まずは乾杯しよう、軽食だけど本物の素材を使って用意させたんだ、こちらへレディ」

「その前に、少し良いかな少佐殿」

「ん、どうしたのかねミス・ドレイク」

「キャプテン?」


 席へエスコートしようとする少佐を遮ってキャプテンが硬い声を挙げた。


「この部屋、監視や記録は?」

「うん? 此処は私のプライベートエリアだ、客人を持て成す場所にそんな野暮な物はないよ」

「誓ってかい?」

「・・・誓うとも」


 キャプテンが試す様な視線で少佐と中尉を睨む、様子が変わった事で少佐と中尉の表情も固くなる。


(ちょ、ちょっとキャプテン何してるの!流石に失礼じゃ・・・)


 と、私がキャプテンの脇をつついて小声で言った時だった、キャプテンの右手が私のオーロラヴェールを剥ぎ取る。


「あっ」

「えっ」

「なっ!?」


 反応は劇的だった、私を見た、正確には私の白銀の髪と蒼眼を確認した少佐と中尉が胸に手を当ててその場に跪いたのだ。


「キャプテン!・・・あわわ、ち、違うんです、これは、その、皇族ごっこが私好きでして、あははは・・・」

「いえ、いいえ、その白銀の御髪、深き蒼眼、間違いありません、貴き御方の御印、間違いありません」

「いやいや、よく見て下さ、いや見なくていいや・・・、ニセモノですよ、ニーセーモーノ!」

「僭越ながら、私は皇帝陛下に拝謁を賜った事が有ります、間違い、ありません」

「そ、それに、皇族方の御色は正確に言えば市販で再現してはいけないと一級の禁制品と定められていますので・・・」


 あ、これ完全にバレたね? 似たような色に変える事は出来ても、本物の色そのものは禁止されていて、見る人が見れば一発でバレてしまうという事だ、軍人は庶民よりも皇族に近い立ち位置なので一目瞭然。

 必死に誤魔化そうとした私の言葉も虚しく、少佐と中尉は目線を落としたままで、完璧に皇族に対するような姿勢を崩さなかった。

 どうするのこれー、私はキャプテンに助けを求めつつ勝手な事をした怒りを込めて、思い切りおしりに平手打ちをした。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ