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ノワの方舟  作者: EVO
傭兵業開始
12/71

012.リザルト

『こちら旗艦ガルガンチュア艦長、想定外の出来事に遭ってしまったが大規模作戦はこれで完了だ、皆の奮戦に感謝する、ありがとう。 傭兵各艦の報酬については数日以内に算定、支払いを終える予定だ、暗黒生命体との戦闘も勿論対象となる』


 艦長、少佐さんの話を聞きながら、私達アークは撃破した賊艦の『宝探し』をしていた、他の傭兵も同様で宝探しの収入を捨てるなんて有り得ない。

 額も結構凄いんだけど、良いよね宝探し・・・、こう、ゲームと言うと語弊があるかも知れないんだけど、宝探し自体が、その、とても楽しい。

 ブレードで斬った艦はトラクタービームで牽引、小型艦数機くらいなら引っ張れるから、これをコロニーに持って行ってジャンク屋や機体ディーラーに売るだけでも3000万マニくらいにはなりそうだ。

 爆散したものは作業用ドローンとアームで物資を回収、ミサイル艦が無事だったら良かったのになー、誘爆しちゃってボカーン!と跡形もなく吹っ飛んだから儲け0だ。


「で、駆逐艦はどうしよう・・・」


 小型艦のアークより大きい、大型艦に分類される駆逐艦は流石に搭載されたトラクタービームの容量を超えている、かと言ってだよ? これだけの図体が売れればかなり高くなりそうで置いていくのは勿体ない。

 艦橋を切断しただけだからほぼ完品なんだよね、賊が逃げる際に金目の物は満載で逃げているだろうから、宝探しをするだけでも他の撃破した艦より遥かに稼げる。


「こういうのはね軍に買い取ってもらうのさ、ほら噂をすれば影だ」


 帝国軍重巡洋艦が1隻、アークと駆逐艦に近付いて来ると機体スキャンをして査定額を定時、キャプテンが頷いたので了承すると手馴れた様子で駆逐艦を曳航して行った。

 帝国艦隊のスキャンは高性能で、ガサ入れ、臨時検査とも呼ばれる怪しい艦に対する捜査の為に搭載されている。

 積まれている物資も丸裸にしてアークへ送信、買取額も一瞬で提示してその場でスピード売買だった。


「今回の収入で恒星系いくつかは飛ばせるかな」

「そうだねえ、かなり主星へは近付くんじゃないかい?」


 運転資金が1億を超えているのに更に稼ぐのはワームホールドライブを使用する為だ、現在居る星系から主星エル・アトランディアまで光速ドライブで移動するとなるとかなりの時間が掛かる。

 それがワームホールドライブを使用すると大幅に短縮出来るのだけど、その為には星系軍が管理するゲートを使わないとワームホールを使用出来ない、使用するには使用料が必要でひとつの恒星を移動するだけでも2000万マニ程必要になる。

 星域や宙域によって料金はまちまちだけど、主星まで移動するだけでかなりのマニが必要なのだ。


 小型艦150万、中型艦500万、駆逐艦1000万、撃破数が小型艦18、中型艦5、駆逐艦1隻。

 2700万、2500万、1000万に固定報酬500万、宝探しと2枚卸し小型艦と駆逐艦売却益が7000万、この時点で合計1億3700万マニだ、1日で億稼ぎ、すごい・・・

 最近になって漸く出費と収入の桁に慣れてきたけど、流石に1度の作戦で億は震えるよ。


「ここに暗黒生命体の報酬が追加されるんだよね」

「だな」

「そうなりますね」


 キャプテンもシェフィも平然としているのは傭兵稼業の経験が違うからなのかな、ちょっと前まで庶民として暮らしていた私にとっては既に一生涯の収入を稼いだ感がある。

 暗黒生命体は数ではなく戦闘貢献度という尺度で算定されるので、傭兵の中では爆縮弾と超重力砲を撃って貢献した私達が1番稼いでいると思われる。


「さってと!今日は宴だよ!」

「宴?」


 帝国艦隊が暗黒生命体の残骸を回収したいるのを横目に私達は先にL2コロニーへ帰路を取る。

 暗黒生命体も資源なんだよね、肉塊は分解再構成されてタンパク源に、体液も水と薬品、触手先端のレンズは航宙艦の資材に生まれ変わる、・・・キモイけど。

 サブシートで伸びをするキャプテンは既にオフの気分になって、くるりとキャプテンシートの方を向いて言った。


「大規模作戦後は文字通りお祭りさ、傭兵も帝国艦隊も大量の資源を近隣のコロニーに持ち込むからね、コロニーは景気が良くなる、傭兵も大金を稼いで景気が良い、軍人も危険手当が支給される、ある種の打ち上げみたいに皆パーッとやるのさ!」

「へえー」

「ストイックに資金を貯蓄に回すのも良いのですが、ある程度気分転換も兼ねて発散するのも良いかと進言します」


 おお、いつもはキャプテンの財布にひと言あるシェフィが言うならそういう物なんだね。


「じゃあ、戦勝記念にアーククルーの慰労も兼ねて私持ちでやろう」

「よっ!キャプテン・ノワ太っ腹!」

「キャプテン、お酒は程々に」


 収入の9割が私の財布に入るからね、キャプテンとしてクルーの為にこれくらいは還元して当然、必要経費でしょ。

 食べ物に関しては全てキャプテンに一任しているので宴に相応しいセッティングをしてくれる筈だ。


 ***


 事前に連絡を入れておいたお陰で斬った賊艦はジャンク屋が速やかに引き取って行った、私達アークは足が速く担当宙域も広くなかった事で混み始める前に港湾へ入る事が出来た。


「行くぞ、野郎共!」

「女だよキャプテン」

「野郎ではありませんね」


 上機嫌なキャプテンは行き先を決めているのかズンズン進む、私とシェフィはそんなキャプテンを見てクスリと笑って後を追った。

 コロ二ーには戦勝報告のニュースが拡散されていて、既に浮ついた空気が拡がっているようだった。

 暗黒生命体セールで培養肉が安くなるとかイメージ悪くない? あの見た目を見てきたばかりだから買う気になれないよ・・・

 あっ、歪曲率完全0パーセントの全周天モニタが安っ、くはないね、これセールって書いているけど元の値段の上に高い価格を書いて消しただけの嘘セールだ。

 うーん、雰囲気に任せてセール (セールとは言ってない)で買わせようって奴だ、危ない危ない。


「ほれ、フラフラしてないで、まだ物資が出回る前は物も安くならないから買い物は後々だよ」

「はーい」

「仕方ないねぇ」


 道が混み始めてキョロキョロとあちらこちらを見ていたらキャプテンとは結構離れてしまっていた、キャプテンはこっちだよと言って私の手を引いて歩き始める。


「ここさ!L2コロニーでパーッとやるならこの店しかない」


『Nama Nama-C』


 な、生々しい? なんとも言えないネーミングなんだけど大丈夫なのかな?

 通された室内は高級構造材で、内装、装飾品が品よく並んでいる、まるで貴族の家のような。

 ざわ・・・、ざわ・・・

 これは多分、気の所為じゃないね?

 席に座る時さえ店員が椅子を引いてくれる店、メニューを恐る恐る開いた時、答えは出た。



 ヒダギュンのステーキ 300g 36万マニ

 ボジョボジョワーワイン 9万マニ

 ミネラルウォーター 1万マニ


 デ、デター!高級店!本物の食材専門店だ!

 え、お肉100gで12万マニ?


「えっと、ヒダギュンのステーキ500、それに合う赤ワインも頼むよ、それと・・・」

「ヒェッ、キャキャキャキャプテンさんキャプテンさん?大丈夫なの?支払い!」

「あん? 支払いはノワだろう? アンタの財布には幾ら入ってると思ってんだよ、ビビるな!食え!」

「ええ・・・」

「ノワ様、この場はパーッとです、パーッと、世間一般的に言いましてノワ様は高給取り、成功者です」

「あ、そ、そうだよね」


 震える手で私はヒダギュンステーキ300gを頼んだ、シェフィは200g、飲み物は搾りたての本物オレンジジュース (24800マニ)を2つ、食後にスペシャルパフェ (15万マニ)を注文した。

 シェフィはアンドロイドだから食事は取らなくてもいい、但し人に寄り添うメイドロイドには味覚も搭載されているし、家族と食事をする事もコミュニケーションとなるので食べられるように造られているのだ。

 食べさせないオーナーも結構居ると聞くけど、私にとってシェフィは家族なので勿論美味しいものは共有してもらう。

 初めて食べた本物のお肉はとても美味しかった、口に入った瞬間肉から旨味がジュワーと溢れて解けた、お肉が、口のなかで、解けた!


「おいひい、ぎゃふてん、こえ、おいひい」

「ほらほら、口の周りまでソースつけて」


 あまりの美味しさにモリモリと口の中にお肉様を突っ込んだ私の口の周りを、キャプテンが呆れた様子でナプキンで拭いてくれた。


「ガーリックライスも一緒に食べてみな」

「うん、・・・! ・・・っ!・・・ンンー!」

「落ち着きなって、美味いだろう?」

「ウン!」

「日々の活力は食からなんだ、流石にこれを常食するのは無理だが飯は美味ければ美味いほど良いだろ?」

「ウン!」


 ガーリックライスとヒダギュンの組み合わせは暴力的だ、スルスルと喉を通ってしまってお肉様とライスが消えていく。


「シェフィ、という事でアークの食費の見直しもだな」

「・・・まあ良いでしょう、ノワ様が望むなら許可も吝かではありません」

「しゃあっ!」

「ですが、食費の中で許す酒類はひと月5本まで、それ以上はキャプテンの財布からどうぞ」

「サー、イエッサー!」

「サーではありません・・・」


 私が本物のパフェを食べている間にそんな交渉がキャプテンとシェフィの間で締結された。

 キャプテンはガッツポーズをすると残っていた赤ワインをググッと飲み干した。


「くあー、最高だねえ」

「キャプテン、いつも思ってたんだけどお酒って美味しいの?」

「お、興味あるかいノワ」

「あるにはあるかな、一応成人したし」

「じゃあ1杯飲みやすいやつを選んでやるよ」

「ノワ様、合わない方も居られますので少しずつですよ」

「はーい」


 そうしてキャプテンがメニューから自分が呑む分を追加したついでに、私にも飲みやすいお酒を注文してくれた。

 目の前に置かれたのはキャプテンがよく飲んでいるワイングラスやブランデーグラスとは違って細長いグラスだ、液体の上部がブルーで下へ向かってグリーン、イエローとグラデーションが綺麗なカクテルだ。


「カクテルってのは甘くて飲み口が良いんだ、だけど割っているアルコール自体は結構強いからイッキなんてしちゃダメだよ」

「うん、じゃあいただきマース!」


 ***


「ハッ!?」


 あれ、私いつの間にアークに? えっと、賊を掃討して暗黒生命体もやっつけてL2コロニーに帰って・・・、そうだ!キャプテンと宴にって事で本物のステーキとか食べて、カクテルを呑んで、・・・・・・からが全く記憶が無い。

 ゴロリと寝返りをうつとモニュリと大きなマシュマロ2つにぶつかった、うーん大きい、良いなあ私ももう少し大きくなりたいモニュモニュ・・・、じゃなくて!シェフィが運んでくれて一緒に寝たのかぁ


「う、ンン・・・? 起きたのかいノワ」

「ふひっ」


 変な声が出た、マシュマロから顔を上げるとそこにはキャプテン・ドレイクが一矢も纏わぬ姿で居たからだ。

 因みに私も全裸だ、寝る時は下着のみかシェフィと寝る時は裸で寝る、どうせ脱ぐし。


「キャキャキャキャプテンっ?」

「おう」

「・・・・・・・・・、ヤっちゃった?」

「ヤったかヤってないかで言えばヤったな、ノワ、カクテルを口にした後は覚えてるかい?」

「ぜ、ぜぜんぜん」


 はあー、とそれはもう深い深いため息を吐いてキャプテンはゆっくりと語り出した、これが大人の色気かため息も何もかも妖艶な雰囲気があった。

 昨日、そう、昨日の事だ、私がカクテルを呑んだ瞬間、フニャフニャになってしまったそうだ、1口目にして目がトロリとなり、2口目からシェフィに絡んだ。

 その時はまだ良かった、下戸なんだな飲ませないようにしよう、と2人の間で決めたらしい。


「シェフィのおっぱい大きくていいなぁ」


 そう絡み出した私はそれはもうねちっこくシェフィ、いやおっぱいに絡んだ、その対象がキャプテンに移るのも時間の問題で、会計を済ませて早々にアークに帰艦したのだが、キャプテンにべったりの私を引き剥がせずにそのまま共寝と相成った。


「ああああ」

「ノワ、お前は2度と酒を飲むな」

「はい・・・」

「ウチなら、まあ許す、外はダメだ、いいな?」

「はい・・・」

「あと、ヤるのは構わない」

「はい・・・、はいぃ?」

「アタシも生身の人間だ、溜まるもんは溜まるからね」

「・・・ハイ」


 ちょっと色々情報過多で処理が追い付かない、これなら暗黒生命体に360度囲まれて戦った方がマシまである。


「ただ、起きたら既に寝てましたってのも良くないな」

「へ?」


 キャプテンは起き上がると私の上に覆いかぶさった、くせ毛の茜色の髪が揺れ、色気全開の片瞳が降りて来た。


「あ・・・」






 キャプテンもすごかった、シェフィもすごいけど、キャプテンもしゅごいの・・・

 夜 (ヤったらしい)と朝からの疲労でその日1日はずっとベッドで過ごす事になった、シェフィはぐったりする私のお世話が楽しいらしく甲斐甲斐しくお世話されました。

 尚、その夜には部屋にシェフィが現れて言った


「キャプテンだけズルいです、私も御奉仕致しますね?」








まぜて・・・

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