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望み。

うっかり掲載し忘れた本文があり、急遽24話と25話の間に割り込み投稿をしました。

そちらも目を通していただければ幸いです。

ブクマなどがずれてしまう可能性があるかと思います。

申し訳ありません。







 運が良かったと言われて私は手をギュッと握った。


「そうね。いつも通り、できる限りで戦ったわ……」


 でもたぶん魔物がもっといたら私たちはやられていただろう。

 何よりティナがいなければ私は死んでいた。

 デイビッドが震える私を強く抱きしめる。


「怖かった……」

「あぁ」

「死んだと思ったから……」


 髪を優しくなでられても震えは止まらない。

 やっぱり私は弱いんだな。

 死への恐怖を思い出し、心が打ちのめされている。


 それ以上何も言えない私にデイビットは「各国が協力して討伐隊を出し、全世界で一斉に魔物を殲滅することになった」と言った。


 思わず見上げると、吐息がかかる距離にデイビッドの顔がある。


「え、あ、あの」

「各国の軍隊、冒険者が足並み揃えて行軍する」


 挙動不審気味の私に構わずデイビッドは続けた。


「この前の調査を終えて、各地で魔物が増えていることを確認できた。国は軍を編成し、各国やギルド所属の冒険者たちと連携して魔物を駆除していく」

「そ、そうなの……」

「俺もホールズワース領の代表として、国軍に帯同する」

「デイビッドが?」

「実力を考えたら妥当だ」


 あっさり言う様子に緊張などは見られない。


「ずっと、お父さまとその話をしていたの?」

「そうだ」

「私も……参加できる?」

「リリは連れて行かない」

「なんでっ!」


 私には荷が重いということだろうか。


「今回の件でも分かったと思うが人里でも魔物は来る。こっちにも人を残さなくてはいけない」


 国が主体となって編成される討伐隊はランクが上の冒険者と軍人のみ。

一騎当千とは言わないまでも我が身を守り切れる実力者だけとする。それが各国共通の取り決めだそうだ。

 それ以外の者は人里近くでの討伐になる。


 例外はないと言われて、気持ちはともかく頭では納得した。

 実力がない人間を連れて行って足手纏いになったら、目的を遂行できない。

 守ってもらう前提での私なんか、はなから参加資格さえなかった。


 我知らず思い上がっていた自分に気付き。穴があったら入りたい。でもデイビッドの胸を押して、顔を上げる。


「いつから行くの?」

「参加者の選定は終わった。数日後には出発する」

「どのくらいで……帰ってくる?」

「わからない」

「ちゃんと、戻ってくるわよね……?」

「どうだろうな。魔物を殲滅したら俺がホールズワース家に雇われている理由がなくなる」

「そ……っ、そんなはずないでしょう!」


 デイビッドがそばにいないなんて考えたことない。

 ずっと私に剣を教えてくれて守ってくれて……それが続いていく。

 そう思っていた。


 だが、と温度の感じられない声でデイビッドが続ける。


「リリが望むなら、またここに戻ってくる」

「の、ぞむわ」

「分かった。それでリリが満足するなら」 


 そう言われて頭をガツンと殴られた気持ちで言葉を失う。


 ここで私が望まないと言ったらデイビッドは私のそばからいなくなるということ……?

 デイビッドの気持ちは関係なく、私が望むからデイビッドは護衛に戻ってくれる?


 どんなに寂しくて惨めか。


 泣きたいなんて思ってなかったのに、涙がボロボロとこぼれ落ちる。

 目をつぶったら、毒が回ってきた時のことを思い出した。


 死ぬんだと思った。

 くやしい。

 エリーやティナ、みんなに申し訳ない。

 そして最後はデイビッドのことだけ考えてた。


「わた、し、は……」


 護衛とか侍従とかそういうのじゃなく、そばにいて欲しいのは……。


「デイビッドがいい」


 背中に添えられた手が一瞬ピクリと動く。

 私は力の入らない手でデイビッドの胸を押し、そばにある琥珀色の瞳をひたと見つめた。


「好き」


 口から勝手に言葉が出ていった。




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