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その25 『守破離』から考える嫌悪感の対処について

 ニートだった主人公は神さまのチートで最強に。名立たる勇者や賢者をも圧倒し、英雄と称えられるようになった。

 盗賊から助けたヒロインにいきなり「結婚してください!」と一目惚れされた。


 『テンプレ』小説でよくあるシーンだが、一読者としての私の感想を述べると……「ちょっと受け入れがたい」である。じゃあ読まなければいいじゃないという話ではあるが、それでは考察にならんのでご容赦いただきたい。

 さて、今私が表に出した感情とは『嫌悪感』である。

 ありえない、納得できない、こんなのおかしい、こういった考えの積み重ねだ。

 『なろう』の感想欄においては、『テンプレ』に限らず「○話の時点でリタイヤしました」「もう読みたくない」といった声がちらほら見られる(本来こういう感想はマナー違反にも思えるが)。

 ちゃんと先が続いているにも関わらず「これ以上はムリ」と言ってページがめくれなくなる現象が『嫌悪感』であり、読者サイドにおける『ヘイト』の一種といっていい。ただし、この場合の『ヘイト』は空腹というよりは……食べたい物とはあまりに違う料理を出される感覚が近いだろうか。

 「え、ここのお店ってこんな料理出してくるの? これじゃあこの先出てくる料理も不安だなぁ……」という心理なわけだ。

 こういった、読者にとって望ましくない感情である『嫌悪感』。どうにかして無くしていく方法はないものだろうか。





 小説において読者が感じる『嫌悪感』は大きく二分できる。

 『期待度』と『常識』。

 『期待度』については、極端な例だが「世界で一番おもしろい」なんて評価を受けている小説を読んだけど、実際は全く面白くなかった場合など。

 『なろう』内では、主に「期待していた展開にならなかった」場合が多いだろうか。あまりない展開だとは思うが、『テンプレ』小説で、主人公が颯爽と活躍してヒロインが惚れるであろうシーンで「は? あんたみたいな男に惚れるわけないでしょ、バカじゃないの」とすげなく扱われるような展開がこれにあたる(女性読者には逆に高評価かもしれない。いわゆる「ざまぁ」系になる)。

 こちらは『嫌悪感』というよりは『がっかり感』と表現した方が適切なのかもしれない。こちらに関してはそこまで説明は必要ないだろうし、考察としても主旨が変わってしまうのでそう追究もできない。

 読者が期待するような展開や設定を裏切った場合に起こる感情だとご認識いただければ、ひとまずは充分だ。


 今回は『常識』の方を重要視して考えてみる。

 この『常識』とは、世間一般における統一的な常識もそうだが、どちらかと言うと「自分の中の常識」とでも言った方がいいだろうか。

 例えば、冒頭の例文。

 「ニートだった主人公は神さまのチートで最強に。名立たる勇者や賢者をも圧倒し、英雄と称えられるようになった」

 よくある展開ではあるが、私の中の常識(、、、、、、)では、過程にもよるが「ニートがいきなり力を得ても戦いの素人がいきなり勇者や賢者には勝てないし、勝てたとしても英雄と称えられるような行いではない」と考えているから、この致命的なまでの『常識』のズレが『嫌悪感』を呼ぶのだ。

 その3でも挙げているように、『チート』とは努力の否定というのが私の見解ではある。

 努力しないで世の中で成功を収められることなどできないと思っているし、それが成り立つのであれば、その世界自体が間違っていると割と本気で考えている。

 こういった「自分の中の常識」がぶれずにある限りは、私はチートかつハーレムものなど、おそらく一生まともに楽しめないと自覚もしている。


 だが、私の考え方が日本中すべての人間に等しく適用されているなんてのは思い上がりだろう。実際、「ファンタジーなんだからいいじゃない」や、共感性特化のために「とにかく楽しめれば何でもいい」というご意見だってあるわけだ。

 そういう意味では、『常識』とは人の数だけ存在する以上、万人に等しく評価される小説など存在し得ないということだ。





 それでも、なるべく読者から『嫌悪感』を払拭したいのであれば、より多くの人の『常識』を納得させられるような展開や設定を用意すればいい、ということになる。

 本来、主人公が世間一般の常識に沿って行動するのであればさほど問題視されづらい話ではあるのだが、『テンプレ』における主人公は、その大半が常に他人より上に立つ(、、、、、、、、)方向性が強いのでそうもいかないことがある。


 例えば、主人公が難しい依頼を果たして王様に謁見(えっけん)する場面。

 王様を相手に偉そうな態度をとった主人公に対して、王様がそれを笑って許して、隣のヒロインが「王様にも媚びない態度がステキ!」なんてコメントを残すような展開。読者も「この主人公カッコいいなー」と思ってもらえる展開であればいいのだが……そこまで読者は甘くない。

 ヒロインの意見も「いや普通に失礼でしょうよ何考えてんのコイツ」という方が、大多数の人間は常識的だ(、、、、)と判断することだろう。

 「主人公さんの方がずっと偉くて強いんだから、王様だろうと頭を下げる必要なんてない!」という考えになってもいいとは思うが、それならそれで、その意見に至るまでの裏付けがないといけないわけだ。いくらチョロインとはいえ、まさか昨日今日出会ったばかりの素性の知れない男相手に、いきなり「この人が世界で一番偉いのよ~」なんて確信など持てまい。


 こういった物語を『常識外れ』や『規格外』と銘打って、主人公に破天荒な考えや動きをさせる『テンプレ』作品をよく見かけるが……『常識外れ』と『常識知らず(、、、)』はまったくの別物であることに気を付けたい。

 学校でテストを出されて、「こんなテストに意味なんてねぇよ」と言って紙を破り捨てる不良がいたとしよう。

 もしその不良の成績がいつも0点ばかりなのであれば、このような事を言っても「できもしない奴が何を偉そうに言ってるんだ」という意見が出るだろうが……もしこの不良が、常にあらゆるテストで100点を取る超頭脳派学生だったらどうだろうか。

 不思議や不思議、「こんなテストに意味なんてねぇよ」という言葉が(あまり褒められた発言ではないが)割と正論に聞こえてくる。

 正確には「もう俺にはこんなテストは必要ない」という意味合いになるが、不良は100点を取ってしっかり内容を理解した上でそう言っているわけだから、教師とてそう簡単には言い返せなくなるだろう。





 武道や茶道において、『守破離(しゅはり)』と呼ばれる概念がある。

 『守』とは定められたルールを守り、先達(せんだつ)から知識や技術を学びとること。

 『破』とはあえて定められたルールを破り、違うやり方を模索すること。

 『離』とは定められたルールとは完全に異なる、自分独自の新たなルールを定めること。

 剣道で言うなら、まずは有名な剣道場に入門し、教えを乞う。腕を磨いたら自分なりの技を試行錯誤して、新しい剣道を構築していく。最終的には自分の流派を設立し、弟子をとる――こんな感じだろうか。

 武道などに限らず、小説を含む創作もそうだし、世間大半の事柄で成功を収めるためには、ほぼ例外なく適用されるといってもいい考え方だ。


 ある意味、本考察がいい例だ。

 もし私が執筆の経験などまるでない素人で、ちょっと本を読み漁っただけの読み専だったとすれば……これまでの考察には「書いてもいないお前が偉そうに言うな」というお声が殺到していたことは想像に難くない。

 即ち、私は少なくとも『守』の要素に関しては(まだまだ道途中ではあるが)満たしている状態と言え……なくもないだろう。

 その上で、「ここはこうした方がいいのではないか?」と異なる路線を模索しているわけだから、本考察は一応『破』にあたっていると判断できる(『守』の解説が大半ではあるが)。

 途方もない話だが、この考察をより発展させて、多くの小説家志望の人に認められるようになったら、そこで初めて『離』が成立するのかと思う。





 『テンプレ』ご都合主義で往々にして起こりやすいのが、主人公以外の人間が、主人公が動くのに都合のいい動き方・考え方をしてしまっていることだ。

 主人公にとってのご都合主義も、他人から見ればただの理不尽に見えてしまうことだってざらにある。

 こういった概念も、『守』→『破』→『離』のプロセスを正しく踏めば、読者からの『嫌悪感』もかなり削減できるのではないか、という話だ。


 さっき例に出した、王様に偉そうな言葉づかいをする主人公も、この『守破離』のプロセスを踏んでいるかどうかで印象ががらりと変化し得る。

 ただ単に礼儀知らずなだけであれば、それ以上の評価が出ることはないだろうが……もし「王様への礼儀をわきまえた上で」「あえて」偉そうな態度をとったのであればどうか。

 例えば……実は主人公は身分を隠した他国の王子で、この国の王様の人となり(、、、、)を確かめるためにわざと怒りを買うような言動をしただとか(王様のメンツや不敬罪になるリスクも考慮した上でだ)。無論、ちゃんと最後には正体を明かして非礼を詫びる。

 万人が認める回答ではないだろうが、少なくとも考えなしで礼儀を欠くよりはずっと読者の『嫌悪感』は抑えられるだろうし、話そのものにも相応の整合性は与えられる。

 つまり、王様に礼儀正しい態度をとるという『守』を理解した上で、より自分が望む結果を得るためにあえて礼儀を欠くという『破』の行動をとった、という流れだ。その『破』の行動が、『守』に従っていた場合よりも望ましい結果をもたらしたのであれば、その判断は『離』として評価される。


 ちなみに、欠点となるか利点となるかは作品次第だが、『守破離』をこなせる人間というのは、『個人特性』において極めて評価が高いのだ。そもそも『守』とは世間一般の常識という定義でもあるので、そこから逸脱している以上は『共感性』などそうそう生まれない。

 要するに「普通の高校生にそんな難しい判断できるわけないだろ!」という別方向の問題が出てきてしまうのだ。

 その分、先に述べた『常識外れ』や『規格外』という一種の憧れに近い評価を受けられるので、成り上がり系などには上手く組み込めるだろう。

 使い方としては、より多くの読者の『共感性』を維持したい場合は、なるべく『守』――世間的に多く認められる『常識』を遵守(じゅんしゅ)し、『個人特性』寄りに持っていきたい場合は『守破離』の意識をキャラに持たせるのが理想なのだろう。

 

 なお、『守』をすっ飛ばして『破』を追い求める手法がダメというわけではない。「俺は誰の言うことも聞かない!」と、かたくなに自分の意思を曲げない主人公だって多く存在する。

 この場合、王様に偉そうな態度をとる理由が「他人に頭を下げるなんて俺のプライドが許さない」なんて意識になったりするわけだが……このような展開にするならば、基本的に『破』が一度失敗する(、、、、、、)前提で物語を作ることをオススメしたい。

 つまり、「不敬罪だ、捕まえろー!」とお縄になったり、隣のヒロインに無理矢理止められるなりだ。

 ここで安易に主人公の行いを正当化すると非常にまずい。

 主人公自身がどれほど強い意思を持っていようが、他人から見れば、0点なのに「こんなテストに意味なんてねぇよ」と粋がる不良と変わらないからだ。

 当たり前と言えば当たり前だが、常識を知るという『守』のプロセスを無視して『破』を押し通すならば、相応のリスクを覚悟しなければならない。

 世間的な評価としては当然ながら、考えなし、無鉄砲といったマイナスイメージが強くなり、まかり間違っても誰からも認められる(、、、、、、、、、)展開には逆立ちしてもなりはしない。


 その分、孤高の主人公に適用させるには適切と言える。

 名誉も称賛もすべて拒否して、ただ自分のやるべきことのためだけに邁進する――主人公が悪役であったり、あるいは孤独に戦うヒーローものなどによく使われる手法となる。

 言っておくが、この設定でハーレムだけはやめておいた方が無難だ。

 世間という『守』を無視して我を貫く生き方というのは、基本的に排他的な意識となる。

 この感性を持った主人公とハーレムを両立させるとなると、「俺は誰の言うことも聞かない! でもみんなは俺の言うこと聞いてね」という凄まじい暴論を吐く主人公が誕生してしまう(力で押さえ付けてすべてを支配する悪の帝王が主人公なら、いっそそれでいいのだろうが)。

 他人にどう思われようと自分の意思を貫くからこそ、『信念』という『個人特性』として評価されるにも関わらず、他人にもよく見られたいなんて思いが入っていると、せっかくの『信念』も台無しだ。

 ダメなわけではないが、まず読者からの『嫌悪感』は一気に跳ね上がることとなるし、ヒロインが主人公に付いていく(しかも複数)理由付けが極めて困難になるので、結局『ご都合主義』に頼るはめになってしまうのだ。





 この『守破離』の概念は、特にキャラクターに大きな決断をさせる場合に有効に作用する。

 例えば、今までずっと敵対していた相手が味方になる場合。

 ライバルに位置付けされる相手なら胸が躍る展開ではあるが、忘れてはならないのが、どうして急に味方になってくれたのかだ。

 せっかくなので、ここで心理テストならぬ、設定テストを出してみることにしよう。

 では、シチュエーションを用意しよう。



 主人公は勇者召喚された高校生。長い旅を通して、憎き魔王をやっつけた。

 しかし、凱旋した主人公を待っていたのは王国から差し向けられた暗殺者たち。魔王が死んだ以上、用済みになった主人公を排除しに来たのだ。

 大ピンチとなったところで、颯爽と駆け付けてきたのは――なんと、倒した魔王の娘だった。


 では問題です。

 親を殺されて主人公を憎んでいるはずの魔王の娘ですが、どうして主人公を助けてくれたのでしょうか?


条件

・魔王の娘は最終的に裏切るわけではなく、完全に味方になると定義して下さい。

・「主人公が魔王を殺した」「王国に裏切られた」という設定以外は、キャラ設定や舞台背景などすべて回答者が独自に設定して構いません。

・可能であれば、助けた後の物語の大まかな展開も記載してください。



 では、回答例。

 世界観としては、保守的な魔王国に対し、人間の王国が一方的に侵略してきた格好であり、魔王軍サイドは常に平和的な解決を訴えかけていた。

 魔王の娘はこれまで何度も主人公と交戦しており、その際、彼が王国に利用されているだけであることを既に知っていた。魔王軍に来いと何度も説得してはいたが、主人公は持ち前の正義感でそれを拒否し続けていた。

 結局父親がやられてしまうのを止めることはできなかったが、王国に踊らされたことを知り絶望した主人公を見ていられなくなり、思わず助けに入っていた。親を殺された憎しみも確かにあるが、人間も魔族も関係なく、これ以上誰かが死ぬのを見たくないという使命感の方が強かったのだ。


 この場合、敵国の人間で自国の王を殺した主人公を許せないままでいること、あるいは復讐のため自分から殺しに行くことが、本来であれば正しい判断であり、即ち『守』にあたる。

 『破』とはその前提を承知していながら、それでも主人公を助けることを選択したアクションのことを指す。

 『離』の定義は難しいが、最終的に主人公を新しい魔王にするなり、将軍にして人間の王国に逆転勝利し、人間・魔族間で平和協定を結んだとすればどうか。つまり、主人公を見捨てるという『守』の選択では得られなかった、より良い結末をもたらせればいい。


 

 ついでにもうひとつ例を出しておこう。

 世界観は先と同じ。

 助けた理由を使命感ではなく恋愛感情に置き換えてみよう。

 加減を間違えるとチョロイン一直線の選択だが、こんな流れはどうだろうか。

 父親の言いなりになる以外の生き方しか知らなかった魔王の娘は、王国に利用されている主人公に対して一種の同族意識を感じていた。

 父親が死んで生きる理由を見失っていた彼女だったが、王国に裏切られて希望を失っていた主人公に対し、憎しみよりも激しい共感(シンパシー)を覚え、思わず助けに入る。

 お互いに生きる理由を失った者どうし、誰もいない静かな場所で一緒に暮らそうと、2人はいずこかへと消え去っていった。


 バッドエンドのような気がするが、悲恋の物語としては一応形になっていそうな気がする。

 この場合、魔王の娘の精神面はガタガタになった状態のため、『守』をほとんど無視した形をとっている。

 そして、『破』がほとんど感情に任せた行動となったため、そこから繋がる『離』と言える結末が……まぁ、あまり救いのないものになっている。というより、『守』を無視して『破』を押し通したがゆえに、上手く『離』にまで到達できなかったと言うべきか。





 別に、誰もがこの『守破離』を実行しろとは言わないし、実際問題そう簡単にはできないものだ。

 小説においては、作者が求めるストーリー展開、特に主人公がこの先たどる道に応じた選択をさせるのがいいだろう。

 選択肢は大きく3つ。


 ひとつ目は『守』を順守し続けること。

 田舎でのんびりスローライフを送るなり、ただ今の平和が続けばいいという希望がある場合はこれで問題ない。無理に既存の常識である『守』から離れる必要がないし、主人公はむしろこの『守』を守るために行動しているからだ。

 普通の現代日本人がそのままの感性で進み続ける『テンプレ』なら、このスタイルが最も相性がいいのかもしれない。


 ふたつ目は『守』を無視して『破』を貫くこと。

 復讐ものや、戦いの中でしか生きられない武人の旅など、ストイックな物語を作るにはこれが適している。

 他人など関係なくただ自分の思うように生きるという物語は、主人公を孤独にし(あるいは少数の人間にしか認められない)、最後は決してハッピーとは言い切れない結末になることが大半だ。

 ちなみに、『テンプレ』ではこういったタイプの主人公が多そうな気がするが、上記のストーリーラインを考えると、その実『テンプレ』には一番向いていない(、、、、、、、、)。もう一度言っておくが、ハーレムとの相性は最悪だからねコレ!!


 みっつ目はこの『守破離』そのものだ。

 『テンプレ』主人公の最終目標にもよるが、新しい国を作って世界を統べるなり救国の英雄として称賛されるつもりならば、ぜひ意識してみてほしい。

 誰も成し遂げたことのない快挙を成すのだ、主人公にはこれくらい(、、、、、)やってもらわないと目標の大きさに吊り合わない。


 



 色々と長くなったが、自分を押し通して、かつ求める最高の結末を手にしたいのであれば、この『守破離』の概念を無視することはできないということだ。

 王様に頭を下げない堂々とした生き方を貫き通し、かつ相手にその態度を認めさせたいのであれば、それを認めてもらうための覚悟と行動が必要となるのだ。

 気に入らないから頭を下げないなど、誰でもできる(、、、、、、)

 不敬罪になって周りが敵だらけになるリスクを負ってまでも貫くのであれば、それはそれで立派な『信念』だと別の評価にもなるのだが……もしそれが『チート』で強いからなんて理由でふんぞり返っているのであれば、もうお察しだろう。

 間違っても、『守』を知らずに無理矢理『破』を押し通して、誰からも称賛される『離』を手にできるなどとは思わないことだ。『ご都合主義』でそれを無理に改変しようとするから、人々の『常識』から大きくかけ離れた道理の無い展開となり……強烈な『嫌悪感』へと発展してしまう。


 『守破離』をしっかりと実行できる人間というのは、世の中にそういるわけではない。

 既存の常識である「守りつつも」、あえてそれを「破り」、完全に既存のものから「離れた」新しい常識を生み出す――これは、いわば『革命』に準じる流れである。

 例えば、故郷から追われる身になってまで、日本の未来に維新を成した坂本龍馬。

 根強い人種差別に対し、決して暴力に訴えることなく命懸けで闘い続けたキング牧師。

 IT業界において、常に最新の流行を生み出し続けたスティーブ・ジョブズ。

 その誰もが歴史に大きく名を残した偉人ばかりであり、『個人特性』としてのひとつの到達点を見せてくれている。

 誰もが真似できることではない。

 だが、決して誰にも真似できないわけではない。

 小説上のキャラだけではなく、我々作者としても目指してみたい理想の姿だろう。


次回で(ひとまず)最終回です。

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