白き夢の後に
赤子に戻り夢の中のまま消え行くバースディ。そして母乳大陸はゆっくりと元の位置へと戻っていった……。
燦々と広がる母乳花の花弁がヒラヒラと舞い散る。風に乗り花弁が私の顔についたり離れたりを繰り返した。
「花が……消えていく?」
「始祖が消えた今、世界から母乳エネルギーが無くなるのじゃ……」
振り向いたそこに、今にも消え果てそうな程に薄く透き通るナツメが居た。
「ナ、ナツメ!!」
「なに、吾輩の肉体はとうの昔に滅びておる。早かれ遅かれいつかはこうなる定めなのじゃ……」
消え行くナツメを抱きしめようとも、この腕は空を切るばかり。そしてナツメは「さらばじゃ……」と一言だけを残し、消えた……。
「ダンカン様―――」
情けなく崩れた私の頬に伝う涙。それを彼女は優しく拭いてくれた。
「残された者はそれでも強く生きなくてはなりません。そして次へと繋ぎゆくのです……」
母乳大陸が海に浮かび、直ぐ近くに灯台が見えた―――
それから母乳が出ることが出なくなった私はベビーグッズ専門店を開き、そこでお客さんの子育ての悩みや疑問を聞きアドバイスをする仕事に就いた。先祖代々の母性や知識だけは残ったので、ヤバい位に赤子の扱いに手慣れてしまった。
「あなた……♡」
大きくお腹を膨らませたサヤカが私の隣にゆっくりと座る。私は彼女の手をマッサージした。今日はつわりは落ち着いているようだ。
「もうすぐね……♡」
「そうだね」
「名前……決めた?」
「うーん……男の子なら強そうな名前にして、女の子なら可愛らしい名前にしたいな♪」
「ふふふ、そうね♡」
私達の子が生まれるまで後僅か。これから私達は幾多の困難に遭うだろう。それでも生きた証を、これまでの軌跡を、これからの未来を……伝えていかなくてはいけない。
――END――
これまで読んで頂きましてありがとうございました!!
色々と酷い有様でしたが、構想通り終われたことに一先ずホッとしております。
やはり私に長編ストーリーは向きませんね。どうしてもその場の勢いで舵取りしてしまうので話が滅茶苦茶になってしまいます。
1話読み切りのショートショートが性に合っているのかもしれませんね……。




