過ち
「おい、幼女を斬るなよ……」
もう1人の私が問い掛ける。
「仕方ないだろ!? 一体何なんだこの状況!!」
私は半ば混乱した面持ちで答えた。
ナツメは更に私に殴りかかり、私はその度に反撃した。それは仕方ない事。ナツメの目は本気の殺意を秘めており、何もしなければ私は殺されるだろう……。
「だから幼女を斬るなよ……」
「じゃあどうすればいいんだ!!」
私は心の叫びで頭がどうにかなりそうだった!
「……幼女は『善』であり母乳魔神は『悪』である。つまり浄化の母乳なら幼女を傷付けずに奴を追い出せるだろう」
「しかしそれだとまたナツメの体が乗っ取られて―――!」
「だから私が居るのだろう?」
「?」
「しくじるなよ」
「!!」
私の体が突然疼き出し、左半身が黒い母乳で染まっていく……
「が、あが…………!!」
体が真ん中から引き裂かれそうな痛みに私は白目を剥き、意識は呆然とした。
──ブチィィッッ!!
そして私の体から黒い母乳が剥がれ落ち、それはグニョグニョと蠢きながら人の形を司った。
「滅茶苦茶痛いなんて聞いてないぞ……」
「何をしている……今が好機だ」
私はナツメに向かって聖なる母乳を噴射した!!
──ブシャアア!!
「ぐっ! ぐおお!!」
ナツメは身悶えながら蹲り、体からはドス黒い煙が立ち込める!!
「さあ!こっちへ来い!!」
もう1人の私が身構えると、ナツメの体から勢い良く飛び出した黒い煙の塊が猛烈な速度でぶつかりグチャリと合体した。
「な、何が起きるんだ……!?」
「これで心置きなく母乳魔神を離乳出来る……だろ?」
「!?」
もう1人の私は、私のためにその身を犠牲にしたと言うのか!?
「ヒドイヨナキデチチヲセガムアカサン……実に馴染むぞ!! これぞ新たなる母乳王国の母に相応しい!!」
黒いボディに白い瞳、そして白い灯火を纏わせた母乳魔神が姿を現す!
「や、やるしかないのか……!! 私の意思を無駄にしない為に!!」
「この体があればお前はもう用済みだ! 母乳王国再建の露となるが良い!!」
私を指差す母乳魔神に対し、私はチルミーソードを強く掲げ奴の離乳を天に誓った。
「名前……」
「ん? なんだ小僧……?」
「母乳魔神の名前をちゃんと聞いてなかった。もう一度頼むよ……」
「くく、私の墓標に刻む名か?」
「…………」
「……我は【母乳魔神 バースディ】冥土の土産に覚えておれ!!」
母乳魔神が授乳の構えを取り最後の戦いが始まった!!




