母乳神殿
終わる!
終わっちゃうよ!!
ついに訪れた母乳神殿。扉には一人の男の絵が描かれており、左右の乳の部分には凹みが設けられていた。
「ここに金の乳首と銀の乳首を入れるんだな?」
アマンダは舌舐めずりをかましながら乳首を凹みへと押し込んだ。
──ゴゴ、ゴゴゴ……!!
重々しい観音扉が開き、私達はついに母乳神殿へと足を踏み入れた。
「……って何も無いぞ!?」
母乳神殿の内部は何も無く、中央に台座が一つあるだけだった。
「ナツメ……これは?」
台座には謎の文字が書かれており、とてもじゃないが私には読めなかった。ナツメなら何か知っていると思い、ナツメを肩車し解読をお願いする。
「……これは『古代母乳文字』じゃな」
「で、何て書いてあるんですか?」
ビキニアーマー姿のサヤカが覗き込む様に台座を見ている。アマンダは何も無い神殿にイライラしながら金目の物を探していた。
「母乳魔神へ続く台座……と書かれておる」
「じゃあ、それぶっ壊せば良いんだな!?」
──ピュン!!
アマンダの無計画な母乳レーザーが私達の側を飛ぶ。
「戯け!! ココに母乳玉をはめるのじゃ!!」
ナツメがプリプリと怒りながら私のポケットから母乳玉を取り出し台座へとはめると…………私達は淡い光に包まれた!!
「おわっ!」
「何だ!?」
「眩しいです!」
「……母乳大陸へ……行くぞい!!」
私達は覚悟もままならぬ状態で母乳大陸へとワープした―――
―――怪しい光に導かれ、私は気が付けば一面花畑のど真ん中に居た。
色取り取りの花に囲まれ、私はすうっと立ち上がる。
「こ、ここは……」
周りを見渡しても誰も居らず、どうやら私一人の様だ。かすかに花畑の向こう側、遠くの方に高く聳える塔の様な物が見え、私はそこへ向かって歩き出す。
花畑を抜ける爽やかな風が心地良い。
(皆は何処に行ったんだ……?)
花畑は次第に深くなり、私の腰辺りまでの深さで足下が見えなくなる程だった。それでも私は歩き続ける。どうやら遠くに見える塔の様な物は大きな石碑であり、その高さはかなりの物の様だ。
私は足を止める。
石碑の根元へと辿り着き、そこに聳える石碑の大きさに思わず息が漏れた。
「コヌビは赤子のように【無垢】だった……」
子どもの声、だがしっかりとした語り口がどこからか聞こえてきた。落ち着き払った芯の座った声が風と共に私の耳へと届く。
「チュベビは【純心】でピゾンは【白地】そしてターベッタは【したたか】だった…………」
その声は石碑の中……いや、後ろからだろう。私はその声に思わず一歩引いた。
──ゴン……
踵に何かがぶつかり私は足下を見た…………
「あ、アマンダ……!!」
それは酷く母乳に塗れたアマンダだった。花畑にうつ伏せに倒れており強く揺さぶるも息は既に無い……。
「母乳一族……それはつまらぬ柵みに囚われし白き一族。本来母乳とは愛する我が子の為に分け与える『愛の雫』であるべき……そう思わぬか?」
「アマンダ!!」
「其奴の母乳神は腐っていた。正しく母乳一族の今を映す鏡の様な男だ」
私は紫の煙を放ちながら消えゆくアマンダを必死で揺さぶり続けた。そしてこの手の感触から消え果てると、後ろへと尻餅を着いた。
「ここは始まりの地。この花たちは全ての母乳神、そして全ての母乳一族!!」
立ち上がろうとすると、ふと花々の隙間から倒れる人の姿が見えた。
「……え、えっ!?」
綺麗な肌色と赤のビキニアーマー。それはまさしくサヤカだった。
「良かった! まだ生きている……!!」
私はサヤカを引き起こし肩を叩く。しかし眠っているのか目を覚ます気配が無い。息はあるが生きている気がしない。まるで魂が抜けたかの様だ!
「母乳一族はやり直すべきなのだ……そう、今一度空っぽの状態から……!!」
声の主がゆっくりと石碑の裏から姿を現した………………………………
髪を朱く染め、瞳は強く黄色に輝いていた。まるで何かに取り憑かれた様な変貌ぶりだったが、その姿は紛れもなくナツメだった―――!!




