悲しみの海
泣いても笑っても後1戦
急拵えの墓標に向かい、静かに手を合わせる。
既に無となり悲しみは一緒に埋めた筈。それでもなお涙は未だ衰える事を知らずにポタポタと垂れ落ちてくる。あれから数日、私はことある度にミントの墓に手を合わせている。
私は、自分の命を選んでしまった……
ナツメを人質に取られ、私は自害を余儀なくなれた。しかし私は死ねなかった。死ぬのが恐ろしくなり、気が付けばナツメを救うべくターベッタにチルミーソードを向けていた。
いや、ナツメを救うのは私に取ってただの口実でしか無いだろう。結局の所、私は自分が一番可愛くて仕方なかったのだ……。
「……悲しみの海の中で悪いのじゃが、悪い報せが二つあるぞい?」
「……まだ覚悟が出来てない」
私は墓標に手を合わせたまま背中で答えた。
「母乳大陸が浮上したのが見えたのじゃ。ついに母乳魔神が復活したぞい?」
「…………」
「それと……アマンダが待ちきれずに来てるぞい」
「…………」
私はポケットの中で金の乳首を握り締めた。離乳の間際にターベッタが投げて寄こしたこの乳首は、見れば見るほどに嫌な気分にさせてくれる。
「……明日」
「ん? 何じゃダンカン?」
「明日の朝まで待ってくれないか?」
「分かった。それまで彼奴は気絶させておこう。五月蝿くてかなわんのじゃ」
私はもう一度ミントの墓に手を合わせ、己の浅はかさに目を背けた―――




