乳傑断魔 ピゾン ②
素の主人公……覚醒の時!
―――ピタッ
頬に当たる母乳の雫で目が覚めると、真っ暗で何も無い空間に居た。
「こ、ここは!? 私は先程まで母乳コロシアムて……はっ! アマンダは!? 母乳処刑人は!? 一体何がどうなったんだ!?」
私が何も無い空間で狼狽えていると、後ろから何者かが近付いてくる。しかしそれは真っ黒でどんな姿をしているのか見ることが出来なかった。
「すまない。ピゾンは僕が思っていたより強かった。僕は暫く戦えない……だから、君に託すしか無いんだ」
黒い人?は私の目の前にピンク色のスプーンを取り出した。
「粉ミルクのスプーンかい?」
「古の母乳神器の一つ『母乳太刀 チルミーソード』だ」
どう見ても粉ミルクに付いてくるピンク色の計量スプーンは、柔らかくて力を込めると折れそうな程だったが、不思議と折ることが出来ずスプーンの凹みの縁は鋭く謎の切れ味を放っていた。
「僕達の中に眠る母乳神は未だ目覚めの日は遠い。母乳属性が固まる前に母乳神を育てておくんだ、いいね」
「待ってくれ! ……わ、私が戦うのか?」
「乳英雄が本来の力を取り戻せば、世界は再び混乱の渦に巻き込まれる。手遅れになる前に乳英雄は残らず離乳させるんだ!! それが君の使命だ!!」
そう言い残すと黒い人は姿を消し、残された私の視界に冷たい地面と赤いヒールを履いた後ろ姿の女性が映り始めた…………。
「あっ! ダンカンが目覚めたぞい! 良かった生きておる!」
「ああ……ダンカン様!!」
何がどうなっているのか分からないが、黒い自分の体と目の前に居る半裸の女……恐らくピゾンだろう。そして右手のスプーン。ついでに遠くで倒れている母乳処刑人とアマンダ。……状況は何となく掴めた。
「……まだ息があるの? しぶといわねぇ」
振り返り私の方へ向かってくるピゾン。マズい、このままでは殺されてしまう。私は悲鳴をあげる体を必死で起こし、『チルミーソード』とやらを握り締めた。
「それは母乳神器!! やはりアナタ只者では無いわね……ここで確実に殺すとしましょうか!!」
ピゾンの乳圧が一段と高くなり、圧されるような気迫におもわず足が竦む。
「ダンカン無理は止めるのじゃ! はよ逃げよ!!」
必死で叫ぶナツメの声が聞こえたが、私は親指を立ててその声援に応えた。恐らくピゾンはここで私を殺す気だ。顔を見れば分かる……だから私は生きるために奴を仕留める!!
「さあ、母乳断ちの時間だ―――掬え チルミーソード!!」
勢い良く掲げたスプーンは軽くそれでいてしなやかな程良い大きさへと巨大化した!!
読んで頂きましてありがとうございました!
粉ミルクに付いてるスプーンって、何て名前なんですかね?




