完全母乳超獣トイザス
恐竜達の前足による斬擊はコロシアムの地面へ大きな痕を残すほどに強烈だった!
母乳処刑人は棍棒を投げ捨て、ギリギリ両手でそれを受け止めると、ジリジリと前足を押し返し足を掴んではブンブンと恐竜を振り回し始めたではないか!!
「何て馬鹿力だ!!」
アマンダが身を翻してコロシアム中央へと駆け抜けようとした!
しかし寸での所で母乳処刑人が離した手から恐竜が放たれ、アマンダの体を巻き込みもう一匹の恐竜目掛けて吹き飛んでいった!!
「アマンダ!!」
「何たる事じゃ……」
「ひ、酷い……」
そのまま恐竜毎壁へ激突したアマンダ。壁はヒビ割れ恐竜達はピクピクと足を痙攣させて動けなくなった。
「へへ、終わりだな……」
同じく動けなくなったアマンダの首を掴み、母乳処刑人はアマンダの躰を高らかに持ち上げた。
「ギブアップしろアマンダ!!」
「ダメじゃ! あれでは首を捕まれ声が出せん……!!」
「こ、殺されてしまいます……!!」
―――コン、コロコロ……
その時アマンダの服から小さな玉の様な物が転げ落ちた。
「あ、あれはあの時の……」
母乳の塔の地下で見つけた宝箱に入っていた小さな玉。それがアマンダの服から転げ落ちたのだ。
「待つのだ! 処刑人!」
突如コロシアムに流れる女性の声。
「ははっ!」
母乳処刑人は首から手を離しアマンダを地面へと押さえつけた。
「この声は……乳英雄が一人ピゾンの声……!!」
「なんじゃと!?」
「これが……」
ザワつく会場。突然の事にどうやら戸惑っているようだが……。
「其奴が今落としたのは『母乳玉』ではないか!? 其奴には聞きたいことがある。生かして捕らえよ!」
「ははっ!」
母乳処刑人が母乳玉を拾い上げると、半分意識を失ったアマンダを抱えコロシアムから背を向ける。私は無意識に―――
「待てっ!」
私はコロシアムへと飛び降り、母乳処刑人の背中に声を掛けた。
「おーっと! 試合終了かと思われた最中に突然の援軍だ!」
「あっ! ダンカンめいつの間に!」
「ダンカン様!?」
私が勝てる見込みは万一にも無いだろう。しかしここでアマンダを見捨てるのだけは絶対に違う筈だ!!
「んん? 何だお前?」
母乳処刑人は首だけで振り返ると、眉をひそめ溜息を一つ。爛れた皮膚が未だ痛々しい。
「アマンダを置いていけ」
「ならぬ。ピゾン様の言う通りにするのがオイラの仕事だ。それとも……」
母乳処刑人が壁際で横たわる恐竜達を一別する。
「お前もああなるか?」
私は横目でチラリと恐竜達を目にしたが、近場で見ると尚更凄まじい迫力だ。思わず母乳が漏れそうになる。
「くく、強がりは止めておけ。お前はどう見ても雑魚だ」
薄ら笑いを浮かべ立ち去ろうとする母乳処刑人。
「こらダンカン! 死ぬ前に帰ってくるのじゃ!!」
「ダンカン様……」
ナツメが何やら騒いでいる。やはり私など相手にしてもらえぬのか……。
「ククク……可愛い保護者が呼んでいるではないか? それともお前も母乳を出してあっちの幼い恐竜達と遊ぶか?」
―――幼女?
私の意識の奥底で何かがヒビ割れ、手を突き出した。
「……オサナイ?」
「……ん? アイツらは精々二歳程度の赤子だよ。オイラはアレの三倍大きい恐竜を倒した事もあるぜ?」
「……ヨウジョ……?」
私の意識の奥底で何かが激しく割れ、私の意識はまたしても漆黒の海の中へと消えていった…………。
「何やらダンカン様の様子が変ですが……」
「むむ!? 何やら良く分からんがこれで勝ったぞ! やれダンカン! 其奴を八つ裂きにして仇を取るのじゃ!!」




