母乳処刑人
「グヘヘヘヘヘ……」
卑しい笑いと舌舐めずりをぶっかまし、母乳処刑人はコロシアムの得物をジロジロと見回した。
「今日は良い女が居るじゃねぇか……!」
―――ブンッ!
ココまで聞こえるほどの風切り音を放ちながら、母乳処刑人は手にした棍棒を振るい地面を吹き飛ばした!
抉れた地面から吹き飛ばされた礫は他の参加者へ容赦無く当たり、次々と地面へと倒れていく。しかしアマンダは軽快なステップで身を躱すと、母乳処刑人の後ろへと回り込んだ!
「先手必勝! 喰らいな!!」
―――ブンッ! バギィッ!!
アマンダから繰り出された上段回し蹴りが母乳処刑人の脇腹を的確に捉えた……!!
「おおっ!」
ざわつく会場! そして私は手に汗を握りながらアマンダの活躍を見守った。
「……グヒヒ、強気な女はオイラ好きだぞぉ?」
母乳処刑人はアマンダの一撃を物ともせず、左手でアマンダの足首を掴み宙へとぶら下げた!
「は、離せコラ! それに俺は男だ!!」
宙吊りのアマンダが乳を曝け出す!!
「おおっ!」
「いいぞー!!」
豊満な乳に会場からは嫌らしい声援が贈られる。しかし私は母乳を出そうとするアマンダを制止するために声を張り上げた!
「母乳は出すな!!!!」
しかし私の声は会場の熱気に飲まれ、アマンダへ届くこと無くアマンダは母乳アシッドを盛大に噴射した!
「グオォォ!!」
顔の右半分に母乳アシッドを受け、思わず手を離し顔を押さえた母乳処刑人。そして今までコロシアムの隅で寝ていた二色の恐竜がアマンダの母乳の臭いで敏感に目を覚ます!!
「トイザスとベビザスが目を覚ましたぞ!? 一体どうなるのじゃ……!!」
ナツメも初めて見る古の怪物に不安の色が隠せない様子だ。
「……オモヂャャャャャャャ!!!!」
「ガッデヨォォォォォ!!!!」
盛大に口を開け牙を剥き、耳を劈く戦慄の咆哮をあげる恐竜に、会場にいた観客は思わず怯んでしまった!
「凄い鳴き声だ……!!」
「耳が痛いのぅ……」
「脳がやられます……!」
私達は思わず両手で耳を塞ぎ身をすくめたが、唯一母乳処刑人とアマンダだけは堂々と向き合い、次へと備えていた。
「顔に母乳が着いてるぜ? そのまま恐竜共に食われちまいな!」
「…………オイラの顔が……!!」
母乳処刑人の顔は焼け爛れ色が変わり痛々しい赤紫になっていた。そして母乳に塗れた処刑人目掛けて、腹を空かせた恐竜が足音轟かせ走り出す!
礫を受け倒れた他の参加者は、気が付いた者からその恐ろしさにコロシアムから逃げ出し仲間達と会場を立ち去る!
「おおっと! コロシアムに残されたのは母乳一族唯一人! 彼の仲間は固唾を飲んで見守るしかありません!!」
実況と会場が白熱するコロシアム。母乳処刑人目掛けて走り出す恐竜と、アマンダに向けて棍棒を振り回す母乳処刑人。そしてアマンダは軽やかに棍棒を躱しつつも、確実に壁際へと追いやられていた…………
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