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母乳ギルド

 足早に歩を進め街を出ようとする最中、ふとペチペチと頭をナツメに叩かれた。


「ダンカンよ、母乳ギルドじゃ! 少し路銀を稼ぐのも悪くは無いと思わんか? そして肉が食べたい」


 率直な食欲が指差す先には古ぼけた屋敷の様な建物が建っており、入口には『母乳ギルド』と薄れた文字の看板が下がっている。


「母乳以外も食べられるんだ……」


「勿論じゃ! はよ肉が食べたいのぅ……」


 確かに旅をする以上手持ちは必要だ。簡単な仕事くらいなら引き受けておいても悪くはないだろう。



 母乳ギルドの扉を開くと、そこにはガタイの良いオヤジが立っており私と目が合うなり笑顔で出迎えてくれた。


「よう! 仕事をお探しかな?」


「うむ! 手早く出来て割の良い仕事を探しておるぞ!」


 ナツメがそう求めると、オヤジはパラパラと書類を綴じたファイルをめくり、その中の一枚を見せてくれた。


 * 野盗に攫われた幼女を探せ *


「ふむふむ、悪くないのぅ。ダンカンよコレにするぞい?」


 ナツメは勝手に依頼を引き受けると、私の髪の毛を引っ張り野盗のいる方向へ私を進める。私の仕事なのに……だが幼女を人攫いをする野盗とやらは許し難い。直ちに幼女を助け出さないと……!!



 私は野盗が根城にしている廃墟の一角へとやってきた。


 街の隅にひっそりと形だけを残した建物が住人を失った今でも取り壊されずにならず者の住み家となり放置されている。


「……何やら血生臭くないか?」


「その様じゃな……」


 廃墟を進むに連れて血の臭いは強くなり、所々に鮮血の跡が残されていた。どうやら間近に争い事が起きたようだ。幼女を案ずる気持ちがより一層強くなる。


 ―――カッ カッ


「誰か来るぞい」


 廃虚の奥から、何かを抱えた誰かが歩いてくるのが見える。しかしそれが誰なのかは今一つ暗くて見えない。私は廃虚の隅に身を潜め様子を覗った!


「……ん。この獣臭い臭い……。出て来い! そこに居るんだろ!?」


 私はその声に反応せず息を潜めた。


「出て来ないと幼女を殺すぞ!」


「!!」


 私は慌てて声の主の前へと姿を現した!

 幼女に勝る命は無い。何としても幼女は死守しなくては!!


 と、その姿の正体は先程出会った赤髪の青年だった。私は幼女を抱える青年を不思議に思い、事情を聞くことにした……。

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