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母乳ポリス

 母乳ポリスにジリジリと迫られたじろいでいると、母乳ポリスの一人が口を開いた。とりあえず説明を……誰か早く!


「貴様見ない顔だな……さては外から来たばかりと見える」


 木製の棒をペチペチと掌で鳴らす母乳ポリスは実に威圧的で何も悪いことをしていない私が何故かとても悪いことをした様な気分になってきてしまった……。


「身分証明母乳は出せるか?」


「―――へ?」


 私が訳も分からず呆けた顔をしていると、母乳ポリスは一際大きく棒を鳴らした。


 ―――バチィン!!


「!!」


 思わず竦み上がる私はガチガチに緊張してしまった。


「普通の母乳を出せば宜しい。200ccばかりこのコップに入れろ」


 母乳ポリスが取り出したのは半透明の頭にねじ込みが入った軽い素材のコップで、胴体部分には容量を示す目盛りが付いていた。


「ダンカン。どうやらここは大人しく従った方が良さそうじゃぞ……」


 仕方なく私はそのコップへと母乳を注いだ。そして母乳ポリスはそのコップにゴムで出来た尖った先端の蓋をねじ込むと、他の母乳ポリスが取り出した赤子を模した機械の口へとコップをセットした。


 

  ―――ゴクゴクゴク


 凄まじい勢いで無くなる私の母乳。それを見守る母乳ポリス。これは一体……何なのだ?


 ――ゴクゴク……ゲェェェェップ!


 凄まじい音を立てて機械からコップが外れると、機械の赤子の瞼が閉じて安らかな寝息が聞こえてきた。


「……巡査部長! センサーに異常はありません! マジモンのマジモンです!」


「……『☆無し』だと? 母乳ポリスに配属されて20年になるが初めて目にしたぞ! 貴様! 名前は!?」


(説明は……まだかな? そろそろ母乳ワードが貯まってきているんだけどなぁ……)


 色々と置いてけぼりな展開に困惑しつつも、私は軽い自己紹介と現在に至るまでの経緯を説明した。勿論コヌビの話はしていない。


「ふむ。貴様の肩に居るのは母乳神様の成れの果てとな……これは無礼を致した。お許し頂きたい」


「う、うむ。苦しゅうないぞ……!!」


 流石のナツメも困惑気味に私の肩の上で腕を組んでどうしたら良いのか分からない状態だ。


「『☆無し』はこの街でかなり目立つだろう。この疑似☆を渡しておくから有事の時には着けると良い。着けるのは一つだけにするんだぞ? 二つ着けると逆に虐げられるからな」


 薄いシールの様な金色の☆を手渡されると、ゾロゾロとその場を後にする母乳ポリス達。そして残された私に説明をしてくれる者は誰一人として居なかった…………。


「ダンカン。早くこの街を出るぞい」


「ああ。ココに居ると頭がおかしくなりそうだよ……」

ココだけで明かされる母乳ワールドの説明!


  *母乳センサー*

 赤ちゃんの見た目をした母乳測定用の機械。母乳ポリス御用達の公式測定器だ! この街に住む母乳一族は測定が義務づけられており違反するとヤバイのだ!

 専用の容器に母乳を入れ口へと入れると測定が始まり、赤子の反応によって母乳ランクが決定されるぞ!

☆無し:安らかな寝息を立てスヤスヤと眠る。

☆一つ:不満げにぐずり出すか母乳を残してしまう。飲めないことは無いが満足感が得られない普通の母乳。

☆二つ:口にした瞬間吐き出し酷い泣き声をあげる。その泣き声は近隣住民の耳へも届くほどだ。


 ☆は乳首を隠すための物なので、☆が少なければ少ない程名誉な事とされている。

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