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母乳都市 チャンホンポー

「やっと着いたぞぉ…………」


 目の前に大きく立ちはだかる建物の数々に、ダンカンはその場に座り込み大きくため息をついた。


 何せ歩くこと二日間。山を越えひたすらに何も無い平野を歩き、遠くに見えた街がようやく目の前まで迫ったのだ。疲れもひとしおだろう。


「うむ、吾輩は肩車で疲れ知らずだがな!」


 ナツメがダンカンの頭をポカポカと叩くと、ダンカンは鉛のように重い腰を上げ、『母乳都市チャンホンポー』へと入っていった。


 母乳都市の名に恥じぬ大きい街並みと、真新しい店や家の数々にダンカンは胸を躍らせた。


「こんなに大きい街は初めてだぁ!」


「吾輩が最後に来たときよりも発展しているではないか」


 ダンカンは田舎者丸出しの振る舞いで一件一件店の前をジロジロと眺めていく。幼女を肩車し、店主と目が合い愛想笑いで通り過ぎる髭面のオッサンに、街の人達は奇怪な視線を送っていた。


 そんな中、路地の隙間で上半身裸の見窄らしい(みすぼらしい)男を見つけ、ダンカンは立ち止まった。


(どんなに栄えても、やっぱり貧しい人は居るものなんだなぁ……)


 先程まで燥いでいた自分が少し情け無くなり、ダンカンは肩を落とした。そして男と目が合い、ダンカンは驚いた―――



 ―――なんと、その男の両乳首は金色の☆印で隠されていたのだ!!


「――えっ?」


 ダンカンは思わず上を見た。


「いや、吾輩も流石にアレは知らんぞい?」


 暫く男とダンカンは立ち止まり見つめ合っていたが、男はそそくさと視線を外してその場を後にした……。


「何だったんだアレは……?」


「―――母乳ランクだよ、田舎者」



 後ろから声を掛けられたダンカンは驚き素早く振り返るも、そこには誰の姿も無い。


「こっちだよ田舎者」


 今度は前から声が聞こえ首を戻したダンカンが見た物は、狭い路地にギュウギュウと横に並んだ3人の青年だった。そして青年達はお互いに肩がぶつかり両手の自由は一切無い状態だった。


「お、お初にお目に掛かる田舎者。私達は乳英雄チュベビ様の懐母乳である『風の母乳三剣士』だ!」


 真ん中で頬が半分近く押され放しにくそうな赤髪の青年は、何とか右手を抜き出して眼鏡を上げる。ダンカンとナツメは呆然として立ち尽くしているが、その実逃げたくて仕方なかった。


「何処の馬の乳がコヌビを倒したかと思えば、貴殿のような田舎臭いオッサンだったとはな~!」


「――! なな、何故それを!?」


 思わず声が上擦ったナツメ。ここまで早く乳英雄に関わることになろうとは思っておらず、内心焦りを感じ始めていた。


「街にコヌビの獣臭い母乳の匂いが漂ってきたからね。直ぐに分かったよ……」


 横並びから抜け出して自由になった青年は腰のサーベルに手をかけ何やら怪しい構えを見せた。


「……ナツメ。指示を頼む」


 対するダンカンも一歩引き、形だけは戦闘の構えを見せた。

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