第三十九話
お久しぶりです
「どうやら情報部の連中、上手くやったようだな」
「獲物は餌に釣られましたか」
空母大鳳の艦橋で小沢中将は新任の参謀長戸塚少将とそう話していた。情報部は開戦前に創設された部署であり、欺瞞情報を流したり暗号解読を主な担当である。
「ではもぬけの殻に近いニューカレドニアを攻略しよう」
「そうですな」
第一機動艦隊は新たに複数の空母を迎えていた。元一航戦の赤城と加賀は改装等のために内地のドック入りをしていた。代わりに加入したのが装甲空母大鳳、飛龍の設計図を流用を元に設計建造された雲龍型空母の雲龍、天城の三隻である。
三隻の乗員の半数はドック入りしている赤城と加賀の乗員である。
また、この三隻はアングルド・デッキが備えられていた。流石にニミッツ級空母のようなアングルド・デッキではなく、史実のタイコンデロガ級空母八番艦アンティータムをモチーフにしている。
「第一次攻撃隊、準備完了ですわ」
航空参謀に就任した淵田中佐が艦橋に入ってきて小沢にそう報告をする。
「宜しい。第一次攻撃隊発艦始めェ!!」
前部飛行甲板から蒸気が流れ、水蒸気が前部飛行甲板から後部飛行甲板に流れていく。大鳳が風上に向かっている証拠である。
発着指揮所の赤ランプが青ランプに変わり、それを確認した戦闘機隊一番機の進藤三郎大尉が発艦を開始した。
戦闘機はまだ零戦だが、改良型の五三型である。金星千五百六十馬力だが速度は六二二キロを記録しているがそこらが限界だった。基地航空隊はまだ暫くは零戦を使用するが、母艦航空隊は試作戦闘機烈風の配備が決定されている。
それは兎も角、戦闘機隊が発艦すると続けて発艦するのが艦爆隊であり新型の彗星一一型である。
この彗星は史実の彗星三三型を踏襲している。違うのは後部旋回機銃が十二.七ミリ機銃な事だろう。
そして最後に発艦するのは天山一一型である。これも史実と同じ天山一二型甲を踏襲している。腹に抱えているのは六十キロ陸用爆弾六発である。
「よし、行こうか」
攻撃隊総隊長兼艦爆隊隊長江草少佐は操縦桿を握りつつ攻撃隊の編隊を組む。一航戦のベテランは内地で教官としているので必然的に江草が隊長をする事になっていた。
彼等攻撃隊は一機も欠ける事なくニューカレドニアのヌーメア港に飛来したのである。
「ジャップはフィジーに行ったんじゃないのかよ!!」
「無駄口を叩くなビリー!! 叩いている暇があるなら手を動かせ!!」
ヌーメア基地で米守備隊員達はそう愚痴りつつも対空機銃に取りつき対空射撃を開始する。攻撃隊は弾幕を潜りながら攻撃を開始するのである。
「行くぞ」
江草は小さく呟くと操縦桿を前に倒して急降下爆撃に移行する。至近を駆け巡る機銃弾や高射砲弾が視界に移りつつも江草は目標物――輸送船――を見つつ思い出した。
「……ルーデルの奴もこんな対空射撃を経験しているのだろうか」
江草はそう呟くも高度五百で五百キロ爆弾を切り離して投下、輸送船に見事に命中するのであった。攻撃隊はヌーメア基地を台風のように荒らし回り、上陸船団はニューカレドニア北部に上陸、三個師団は一路ヌーメアに向かうのであった。
「ふむ、フィンランドで飲む牛乳は美味いものだ」
フィンランドのカレリア地方のとある飛行場で起床後に牛乳を飲むのは空の魔王、戦車撃破王の異名を持つハンス・ウルリッヒ・ルーデルである。
彼はフィンランド派遣義勇軍の一員としてフィンランドにいた。というよりも上官に直訴して移動していた。
「イワンを叩けるぞ」
ルーデルはウキウキとして上官に直訴したと言われるほどの逸話である。それは兎も角、フィンランド軍はドイツの支援を受けて継続戦争をしていた。
序盤ではソ連軍は大粛清の影響で指揮官不足で冬戦争で獲得した領土を奪われた(フィンランド側にしたら奪い返した)が、ジューコフの懸命な指揮の元で漸く立ち直りつつあった。
特に兵器類も旧式から最新に更新しているなどがある。戦車も史実のT-341942年型、SU-152重自走砲などが戦場に現れていた。
無論、フィンランド軍とドイツ義勇軍も負けてはいない。ヒトラーは火消し部隊で使用されているティーガーを優先して義勇軍に送り込んだ。
「ソ連とは力と力の勝負だ。一度負けたら津波のように奴等は押し寄せてくる」
ヒトラーはフリッチュ達にそう言っていた。そのおかげかは分からないがフィンランド軍はドイツに次ぐ第二位のティーガー戦車の保有率になる。
それは兎も角、ルーデルがいる基地に新しい機体がやってくる事になっている。
「うん?」
飛行機の爆音が聞こえてきたのでルーデルは牛乳を飲みながら外に出る。基地上空に十数機の編隊が視認された。
「新型機……だな」
ルーデルが見ている前で新型様は次々と着陸していくのであった。
「シュトゥーカの代わりか?」
「はい。やはりシュトゥーカだと遅くて食われる危険もありますからね」
ルーデルは仲の良い整備兵のロートマン一等軍曹と話す。
「元はヤーパンの新型艦上爆撃機らしいです。なので爆弾倉を付けて高速化を計ったみたいですよ」
「うむ。機体も細いから高速化を狙ってたのは分かるな」
「元々エンジンは我がドイツの液冷を使おうとしたみたいですが、まだ工業力がそこまでなかったのでヤーパンでは空冷エンジンを使用しているようです」
「……となると液冷でも行けるというわけだな」
「ヤー。今来た機体もドイツ本国で生産されてダイムラー・ベンツDB605液冷エンジンを搭載してますよ」
「ほぅ。義勇軍主力戦闘機のをか」
義勇軍の戦闘機の多くはBf109G戦闘機でありハルトマン等の撃墜王がスコアを増やしていた。エンジンが同じであれば整備もしやすい利点があった。また、ダイムラー・ベンツDB605エンジンを搭載した事により彗星の速度は六〇八キロを記録しドイツ空軍の爆撃機で最速であった。
「ヤーパンでは彗星です」
「ふむ……なら我々は金星と呼ぼうか」
「金星ですか?」
「我々爆撃機のパイロットにとっては女神のような存在だからな」
「成る程。それは良いですね」
そしてドイツ版彗星は口コミ等でヴェーヌスと呼ばれる事になる。なお、ルーデルは機体が到着したその日にヴェーヌスに乗り込み出撃しているのであった。
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