第三十二話
卒論何とか終わった……。
就活? ……うん、結果待ち。
――サイパン島、司令部――
「対空電探に反応ッ!! 敵機ですッ!!」
「敵の数は?」
「凡そ二百機余りになります」
サイパン島の司令部で第四艦隊司令長官の井上成美中将は苦笑した。
「敵は空母三隻を投入したようだな」
「ですが此方も負けてはなりません」
「そうだな。迎撃隊は?」
「既に離陸中です」
サイパン島の航空基地では零戦や局地戦闘機鍾馗等が離陸している途中であり数は約二百機であった。
サイパン島の至るところには高角砲や対空機銃が設置されており、砲員や機銃員が砲弾やら弾薬を装填して銃砲身を上空に向けていた。
「GFはどうだ?」
「小沢長官の第一機動部隊は既に呉を出撃しています。同じく高須中将の第一艦隊もです」
小沢中将の第一機動部隊は赤城を旗艦とした正規空母八隻(第一、第二、第三、第五航空戦隊。第三航空戦隊は空母扶桑と山城)と改装空母の隼鷹型二隻の計十隻の空母を要していた。
第一艦隊には旗艦大和を主軸に長門型二隻、伊勢型二隻の五隻の主力戦艦を要しており、護衛として龍驤、祥鳳型二隻の三隻の小型空母がいた。
「両艦隊が来てくれたら我々は勝てるぞ」
井上はニヤリと笑った。
――総統官邸――
「それで、結果的にどうなったんだ?」
「はい、日本の大勝利ですな」
ボルマンはそう報告した。報告だと、キンメルの太平洋艦隊がサイパン島で釘つけの時に小沢、高須艦隊が来襲。
小沢の第一機動部隊は空母エンタープライズ、レキシントン、サラトガの全隻を撃沈して空母部隊を率いていたハルゼー中将を戦死させた。
更に高須艦隊が艦隊決戦を挑み、陸奥と日向が大破するも米太平洋艦隊の戦艦部隊を全て沈めた。キンメル長官は艦艇喪失の責任をとり旗艦ウエストバージニアと運命を共にした。
残存艦艇はスプルーアンス少将の指揮の元、何とかオアフ島に帰還したがどの艦艇も損傷しており太平洋艦隊は事実上壊滅状態だった。
勿論、ルーズベルトの怒りは爆発していた。
「我が合衆国海軍が負けるなど有り得ないッ!!」
ルーズベルトは事実確認を再度促したが返ってくる報告は全て太平洋艦隊の壊滅であった。更に日本は真珠湾を攻撃して基地機能を喪失させた。
一方、アメリカの攻撃を凌いだ日本は南方攻略に着手した。フィリピンは台湾航空隊が爆撃して米航空基地を殲滅。
陸軍はマレー半島のコタバル等に強襲上陸を敢行した。米軍や自由イギリス軍は果敢に反撃したが日本は制空権を手中に納めており失敗する有り様だった。
そして日本は開戦から三ヶ月でマレー半島を攻略し、シンガポールをも攻略した。更にフィリピンにも上陸してマッカーサーをコレヒドール島に押し込めた。
後にマッカーサーはB-17で脱出するが、警戒飛行していた海軍の零戦三機に追われて撃墜され戦死するのであった。
「……日本が南方をほぼ掌握したか」
「ヤー、それにつきましてインド洋での作戦がやり易いようペナン島に寄港する事が出来ました」
「ふむ……Uボートがインド洋で展開しやすくなるな」
「は、それと日本側は太平洋の地盤を固めてからインドに侵攻したいと……」
「確かにアメリカの太平洋艦隊を壊滅させたとはいえ、大西洋にも艦隊はいるからな。日本側にセイロン島空襲か潜水艦の通商破壊を依頼しよう」
「それは名案ですな総統。早速大島に依頼しましょう」
セイロン島にはサマービルの東洋艦隊がいるからな。マダガスカルを押さえていると言ってもドイツ海軍はまだUボートしか入港していないしな。
「問題は……イタリア海軍だな」
「……奴等は地中海を押さえたいだけですからな。航続距離が短いですな」
イタリア海軍は地中海での戦闘しか想定していないので重巡と潜水艦を除いた艦艇の航続距離は約三〜四千浬と短かった。
「ムッソリーニに要請して航続距離を伸ばした艦艇を建造させるか。それに重巡と軽巡を派遣させるよう要請もするか」
俺はそう呟いた。
――ホワイトハウス――
「……それで、太平洋はどうかね?」
ルーズベルトは海軍長官のノックスに尋ねた。
「は、ジャップは我が太平洋艦隊を壊滅後にパールハーバーを爆撃と艦砲射撃を敢行。パールハーバーの基地機能及び航空基地、工廠、燃料タンク群は甚大な被害を出しました。特に燃料タンク群は艦砲射撃で全滅に近い損害を出しております。現在、復旧作業を急がせてはおりますが時間が掛かります」
「うむ、戦死したキンメルの代わりは?」
「ニミッツに継がせます。また、機動部隊指揮官にはスプルーアンスに継がせます。空母ですが、大西洋からヨークタウン、ホーネット、ワスプを回航して太平洋に投入します」
「大西洋は大丈夫かね?」
「レンジャーだけでも大丈夫です。それに護衛空母が十二隻おります。この護衛空母は四隻を大西洋に、残りの八隻は太平洋に投入します」
アメリカの工業力恐るべしであった。更にアメリカはエセックス級空母を十月までに三隻が太平洋戦線に投入する予定だった。
アメリカもドイツや日本と同様に開発は進んでいた。ドイツと日本がより密接な関係になった事が皮肉にも原因だったのだ。
一方の自由イギリスは開発は進んでいない。むしろ史実より遅れていた。
チャーチル歩兵戦車等、部隊配備前に本土が降伏したためカナダに移転するなどで配備がかなり遅れていたのだ。
チャーチルはそれをアメリカのシャーマンで補っていたが、結局は撃破されるので意味はあまりなかった。
日本は輝義の逆行で工業力は史実に比べて大きく進歩しており、そのおかげで大和や翔鶴型が戦争に間に合った。更に日本はトラック諸島に修理工廠を建設しており、史実に比べてトラック諸島の役割は大きくなっていた。
それでも明石型工作艦を三隻建造しており工廠の役割は十分に判っている。
陸軍とも親密になり(主に同人誌で)、新型兵器の共同開発等乗り出すのであった。
「兎も角だ。ぐずぐずしているとジャップが調子に乗り出す。早めに反攻作戦を急がねばならん」
「それにつきましては些か報告があります」
「何かね?」
「チャイナの蒋介石が我々と協力するようです」
「ほぅ……」
ルーズベルトは面白そうにニヤリと笑った。
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