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第二十六話

結局、水曜日にタウイタウイ泊地に着任しましたよ。


大鳳の補給地じゃないですかやだもー。


司令部10で空母出てこない……。




「……欧州は完全にドイツが手中に納めたか」


 1940年の十一月一日、日本の東京にある三宅坂の陸軍参謀本部で輝義は陸海の将官達と会議をしていた。


「ある意味では予定通りでしょう。ドイツも少々の被害でイギリスを降しました。まぁ……イギリス王室とチャーチルが本国を脱出してカナダに向かったのは予想外でしたが」

「それにイギリス艦艇も脱出して地中海に向かっていると聞く。此処は我等も参戦すべきではないかね?」


 杉山がそう発言したが、東條は首を横に振った。


「それは無理だ杉山。陸軍は機動化のため、海軍は機動部隊の編成に追われている。それに国内のインフラ整備もあるのだ。参戦は無理だ」


 陸軍は常備師団を三十個にしつつ、ハーフトラックの開発、野砲の機動化を行っていた。

 海軍は扶桑型戦艦を空母に改装しつつ、翔鶴型、大鳳型空母の建造をしていた。(隼鷹型等も)

 更に国内のインフラ整備に高速道路の建設や橋の改修作業をしており、とてもじゃないが参戦する事は不可能だった。


「やはり無理か……だが、ドイツから何か苦言でも言ってこないか心配でな」

「その点については大丈夫でしょう。ヒトラーも十分分かっているでしょう」

「それに問題は……アメリカだ」


 山本五十六はそう呟いた。


「カナダに政府機能を移転した亡命イギリス政府は自由イギリスへと変更してアメリカからの支援を受けていますからね」


 チャーチルやイギリス王室がカナダに脱出したのは既に全世界に承知されており、ルーズベルトは引き続き自由イギリスに対して武器輸出の支援を表明してアメリカ製の武器が自由イギリスへと引き渡されていた。


「初期のアメリカ製だと今のでドイツでも十分に撃破出来ます。ドイツの問題はソ連ですがね」

「ふむ。ところでドイツに届けた荷物はそろそろ届く頃かな?」


 伏見宮は輝義に聞いた。


「はい、ヒトラーが大喜びしているのは間違いないでしょう」


 輝義は苦笑してそう言った。




――同日アメリカ、ホワイトハウス――


「プレジデント。自由イギリス各国の武器輸出は順調です」

「そうか、それは喜ばしい事だな」


 ハル国務長官の言葉にルーズベルトはニヤリと笑った。

 アメリカが使用している小銃や戦車、戦闘機、艦艇は自由イギリスへと輸出されていた。

 戦車や小銃を搭載した輸送船はインドや南アフリカ、エジプト、オーストラリア等に運ばれて自由イギリスの戦力を整えさせていた。


「後はジャップかドイツが我々の挑発に乗ってくれたらいいのだがな……」

「(いや、それは無理でしょう)」


 ルーズベルトの言葉にハルは内心ではそう思った。ハルが思うのは息子ボーイズ達は戦争が出来るかであった。

 兎も角、アメリカは自由イギリスに武器輸出をしつつも密かに戦争の準備をするのであった。





 一方、自由イギリスはどうであったろうか? オタワに自由イギリス政府を構えたチャーチルは笑顔だった。


「うむうむ、ルーズベルトが武器輸出をしてくれるおかげでエジプトの防衛は捗りそうだな」

「だがチャーチル。リビアやエチオピアにはイタリア軍がいるぞ」


 ジョージ六世はそう言ったがチャーチルは自信満々であった。


「心配ありませんぞ陛下。情報によればイタリア軍の戦車部隊は我がイギリスより劣っています。例え彼等が侵攻したとしても十分に撃破出来ます」


 チャーチルの情報はアメリカ経由でもたらされた情報であった。しかし、実際にアフリカに駐留しているイタリア軍の戦車は国産のM13/40戦車ではなく、ドイツから輸入してライセンス生産した三号、二号戦車、三号突撃砲F型を配備させていた。

 また、ドイツから将校や佐官を派遣してもらったりして戦術や情報の交換を盛んに行っていた。

 更にイタリアはフランス戦で史実同様に国境を僅かに越えたところでフランス軍に阻止されたのでイタリア領リビアから自由イギリス領エジプトへの侵攻を予定していた。

 しかし、事前に侵攻情報を入手したヒトラーはイタリアに対して「勝手な動きをするな。自軍の戦力を十分に整えろ」と苦言を言った。

 ヒトラーの言葉にムッソリーニは仕方なく従い、自軍の戦力補充に務めていたのだ。

 これにより、イタリア軍はドイツからの戦力(ドイツアフリカ軍団)が到着するまでイギリス軍と交戦する事はなかった。


「イタリアとは向こうが侵攻しない限りは放っておくのが先決でしょう」

「……分かった。戦力の補充は十分にするのだ」


 ジョージ六世はチャーチルにそう言ったのである。




――ベルリン、総統官邸――


「対ソ構築はどうかね?」

「順調であります総統。ハンガリーやルーマニア、ブルガリア、ユーゴスラビア等に三号戦車のライセンス生産を許可して順次生産中です」


 俺の問いにフリッチュはそう答えた。ほぼ史実の四号戦車H型と同様の性能を持っているから中小国だと主力戦車の扱いになるだろうな。

 他にも三号突撃砲(三突)もライセンス生産を許可している。

 戦車の他にも七五ミリ野砲、十.五サンチ榴弾砲等のライセンス生産も許可して中小国も生産を急がせていた。

 史実でもソ連侵攻のルーマニア軍第四軍等が敗走しているからな。それだけは阻止しないとな。

 ソ連に関しては防衛メインでの作戦を国防軍が思案しているが……最近親衛隊が五月蝿いんだなこれが。

 ヒトラーが執筆した『我が闘争』で東方への生存圏=ソ連侵攻だからな。改訂版を出した方が良いかもしれんな。

 ヒムラーにも勝手な事はしないように釘を指す必要があるな。それに武装親衛隊の権限を国防軍に回しておくか。


「総統、それと日本から総統宛にプレゼントが届いているようです」


 ヒムラーが俺にそう言ってきた。


「ん? 俺にプレゼントか?」

「はい、オーシマ大使から通じて届けられました」


 ヒムラーは少し大きめの木箱を机に置いた。


「ふむ……これは……」


 木箱を開けて中身を見ると驚いた。中にはレコードが多数あったのだ。

 そして手紙が付けられていたが……輝義からだな。


「……ハハ、これはありがたいプレゼントだな」

「総統、このレコードは一体……」

「幻想物語の音楽が入ったレコードだそうだ」

『オォッ!!』


 俺の言葉にゲーリング達は騒ぎ出した。輝義の手紙によると、このレコードは日本が独自に開発したYJ盤らしい。実は、SP盤が主流の 1925年に、LP盤の原型ともいえる長時間レコード(回転数はLPとほぼ同じで、片面約20分再生可能)を開発した、イギリスのウオルドというメーカーが日本に参入した。

 しかし技術上の問題などからウオルド自体が早々と撤退したこと、競合メーカーが10分程度の盤しか作れなかったなど、わずか3年〜4年で製造が打ち切られ、普及には至らなかった。

 それをたまたま輝義が見つけて、レコードの開発を進めた。そして十五分程度のYJ盤が完成したらしい。

 ……日本ヤバくないか?


「総統、はやく聞きましょうッ!!」

「分かった分かった。そう急かすなゲーリング」


 ゲーリング達に急かされてレコード機で音楽を聴くのであった。

 なお、今回のは紅〇郷だとの事。ゲーリング達にも好評だったのを述べておく。





御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m

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