第二十四話
少しだけ総統閣下。
「総統、もう大丈夫なのですか?」
「まだ背中は痛むが大丈夫だ」
あれから三日後、医務室から自室に戻っていた。
「状況を聞きたい。皆を部屋に集めてくれ」
「ヤー」
ボルマンは部屋から退室した。ゲッベルス達が集まったのは十分後の事だ。
「それではカイテル。状況説明を頼む」
「ヤー、それでは被害からの報告です。民間人の死傷者は総統が親衛隊を使って避難誘導をされたので百名前後です。破壊された家屋も約五十との事です」
カイテルが報告を始めるが、やはり民間人の死傷者は出てしまったようだな。
「破壊された家屋の家族には十分な補償金を渡すのだ。罪も無い市民の苦しみを取り除くのが優先だ」
「分かりました。それで空軍ですが……」
カイテルがそう言った時、ゲーリングが一歩前に出た。
「申し訳ありませんマインフューラー。全ては私の不手際です。初めから夜間空襲をしなければこのような事には成らなかったかもしれません」
「ゲーリング。それならば私にも責任があるぞ? 『アシカ作戦』を命令したのは私だ。だがなゲーリング、過ぎた事を悔やんでも仕方ない。死んでいった民間人のためにもイギリスは降さねばならん」
「……分かりましたマインフューラー。少しは気分が和らぎました」
ゲーリングは少し楽になった表情をした。
「それと防衛線の再構成だな」
「ベルリン市内にはアハトアハトを筆頭に約二百門の高射砲を配備させる予定です。また、大型爆撃機を葬れる三十ミリ機銃を搭載したBf109の試作を命じました」
「うむ。それとリッベントロップ、イギリスへの抗議はどうなったかね?」
実は医務室で入院中に俺は外交ルートを通じて都市爆撃への抗議を行った。
「マインフューラー。実は……」
リッベントロップが言いにくそうしている。そこへ最高司令部作戦部長のアルフレート・ヨードル(総統〇下シリーズのハゲ)が言葉を繋いだ。
「実はイギリス……特にチャーチルは今回の爆撃をロンドン爆撃の報復だと高らかに宣言しており、逆に我々を無差別爆撃をしたジェリーと盛んに言っております」
……あのハゲ……。
「……四人だけ残れ。カイテル、ゲーリング、リッベントロップ、ヨードル」
『………』
俺の言葉に他の将校達は部屋を退室した。
「謝罪したはずだッ!! わざわざ俺が文章を考えて、イギリスの名誉を傷つけないようにしたのにッ!! それをあの葉巻中毒は無視をするとはどういう事だッ!!」
俺は一旦息を整えてまた叫び出す。
「こうなったら我々も報復として無差別爆撃をしてやろうかッ!!」
「マインフューラー。それは言い過ぎですッ!!」
「そんな事は分かっているッ!! それをしたらいたちごっこの繰り返しだからな。分かっているから吠えているだけだッ!! チャーチルの恥さらしめェッ!!」
リッベントロップの言葉に俺は机を思いっきり叩いた。
「都市爆撃をするならまだ軍需工場を爆撃する。爆弾が勿体無いからな」
俺はゲーリングに視線を向けた。
「ゲーリング、空軍は工場爆撃を続行せよ。都市爆撃なんていう考えはするな。迎撃態勢もちゃんと構築するのだ」
「勿論ですマインフューラー。第一航空艦隊の一部をベルリン防衛飛行隊に一時的にですが編入する予定です」
「宜しい。ドイツはイギリスとは違う事を見せつけるのだッ!!」
『ハイルッ!!』
そして『アシカ作戦』は続行されるのであった。俺はその後、爆撃で破壊された街並みを徒歩で歩いていた。
勿論、周りは親衛隊の警備でだ。
「家族は無事かね?」
「おぉ、マインフューラー。はい、家族は先に逃げていたので無事です。ですが家は……」
俺は被災した市民に一人ずつ声をかけていた。
「政府から十分な補償金を出す予定だ。暫くは避難所で我慢してくれ」
「ヤー。泣き言を言っている暇はありません。ありがとうございますマインフューラー」
俺は一人一人に握手をしていく。その時、俺は一人の女の子を見つけた。
女の子は壊された家屋を見ながらぼうっとその場で立っていた。
「どうしたのかねフロイライン?」
「……おじちゃん誰?」
……まぁ小さい子にとっては当然の反応だよな。
「おじちゃんはね、国の偉い人だよ。此処で何をしているのかな?」
「……お父さんとお母さんがいないの……」
「総統、どうやら住民からの情報ではこの子の親は爆撃で……」
「亡くなったのかね?」
「その通りです」
親衛隊の隊員からそう聞いた。俺は無意識に女の子と同じ身長に合わせるように腰を曲げた。
「フロイライン、フロイラインさえよければ……俺のところに来ないかな?」
「おじちゃんのところ?」
「そ、総統ッ!? それは……」
「俺なりの罪滅ぼしだよ。どうかな? 君のお父さんやお母さんを悲しませたくないからね」
「……うん、おじちゃんに付いていく」
女の子は俺に抱きついた。
「そう言えば名前を聞いてないな。フロイラインの名前は何と言うかな?」
「ヒルデガルド・ヴェンクだよ。お父さんとお母さんからはヒルダと呼ばれてるの」
「そうかヒルダ。俺はアドルフ・ヒトラー、アドルフでいいよ」
そして俺はヒルダをおんぶした。なお、この時に同行していた記者からおんぶをしていた写真を撮られ、俺が戦災孤児を引き取ると国内中から頑張って下さいという手紙が届けられた。
ベルリン爆撃から一週間が過ぎた。総統官邸ではヒルダが加入した事により、活気に溢れていた。
「はいヒルダちゃん」
「わぁ〜ゲルダお姉ちゃん、ありがとう」
ヒルダはゲルダが作った巫女服(あの腋巫女の服)を着ていた。
周りではゲッベルスやゲーリング達が写真を撮っていた。
「グート、グートだよヒルダちゃん」
「ヒルダちゃん、後で俺と良いことしないか?」
「ロリは黙っとけヨードルッ!!」
最近、ヨードルが自重しない。そのうち冷たい牢屋にでも入れるか。
「ゲルダさん、次は氷精の服を……」
「好きですねゲーリングさん」
……ゲーリングも候補に入れておくか。
「良かったですね総統。ヒルダちゃんも元気になられて」
「そうだなエリカさん」
最初に総統官邸に来た時は表情は暗かったがゲーリング達が活躍? してくれたおかげで今では明るかった。
まぁそれでも時たま寂しいのか、俺の部屋に来て一緒に寝ているがな。
言っておくが、寝ているだけだからな。疚しい事は一切していない。
ちなみに、これを聞いたヨードルが血涙を流したとかないとか……。
「総統」
そこへ、ヘスが声をかけてきた。
「どうしたヘス?」
「お話があります」
「……分かった。俺の部屋で聞こう」
御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m




