火蓋の上下 23~新しき王
『ニジェは15でフラミンガの族長あるいは王になっているようじゃ。わしはフラミンガは認めんがな。あれはカザマンス統率の為、偉大なる王カサが考えた架空の神の部族じゃ。簡単にその名に乗っかるものではない。
しかしだ、もうこのカザマンスにはわしらジョラと、ニジェ達マンディンカの残党しか残ってはおらん。
わしらが敵対している場合ではないのだ。助け合わなければ生き残れん。』
皆、ムルの話に聞き入った。
『そこでだ。ファル。お前はニジェとは無二の親友じゃの?奴も15、お前も15じゃ。
今回の策略も二人で考えここまでは見事に事を運んでおる。わしは帰って来る間に皆に一人一人話を聞いてもらった。納得してもらった。』
『何をです?』
『ファル!今日からお前がジョラの王じゃ! お前がここからのジョラを引っ張っていけ!』
『えっ?!ご冗談を!』
ファルは目を真ん丸にした。
『はっ?何を言う‼ ここはわしの椅子だ!誰にも座らせん‼』
それを聞いたディオマンシは声を上げた。
『往生際が悪い!黙って聞いていろ!』
コリがディオマンシの髪を引っ張った。
『わしら男衆の意見は一致した。今は小奴の隠れ家で女衆に話をしているはずじゃ。フランス軍もいつ来るかわからん。そんな時に密かに隠れ家を造り、一人生き延びようとする王なぞいらん!言ってみればわしらを囮に、生贄にでもしようとした王じゃ!』
『いらん!いらん!私も賛成だ!お前の妃だなんて、もうウンザリ!』
『どけ‼』
ムルはコリに、ディオマンシと椅子を結んでいた腰紐を外させた。
コリは紐を解くと、まだ両手両足は縛られたままのディオマンシを足蹴りして椅子からズルと落とした。
ディオマンシはミノムシさながら床に転がった。
『ファル!今日からここにはお前が座れ!』
ムルは腰蓑から何やら取り出すとそれをファルに手渡した。
『これは?』
『虹色石じゃ。ニジェがわしの家に礼にと置いていったものじゃ。きっとお前にニジェとの繋がりを持たせてくれる。』
『綺麗だ!』




