静かなる内戦30~ディオマンシと夫人
『寝た?』
『寝た。』
サニヤはコリに答えた。
夫人達は、そっとディオマンシの顔を覗き込んだ。
『寝たね。』
『あんた達、静かにするんじゃないよ。そのまま唄って踊って。』
コリが夫人達に指示した。
『静かにすると逆に起こしちゃうよ。気づいてない振りして。』
『ディオマンシ様、大丈夫でございますか?』
サニヤが大の字になって寝てしまったディオマンシに、寄りそうように話しかけた。
そして、そっと横向きに寝かせた。
『返事ないね。』
『ない。』
『いびきかいてる。』
『サニヤ、その腰ひも。』
サニヤは自分の腰ひもをスルリと解くと、ゆっくりとディオマンシの両腕を後ろ手にした。
【ほら、ディオマンシ、お望みの腕輪だよ。】
サニヤは心の中でつぶやいた。
そして両手を一束にして、そっときゅっと縛った。
『殺っちまいたい所だけど、ファルが絶対に〔生かせっ〕って言ってた。』
『なぜ?』
『わからん。』
『今なら殺れるのに。』
『いいから、足も縛っちゃいな。きつく、解けぬようにぎゅっとだよ。』
『縛ったらどうする?』
『その椅子に括りつけちゃいな。』
『重いよ。』
『あんた達、もう踊りはいいから手伝いな!』
コリは踊っていた夫人達を手招きして呼んだ。
6人とお付きは、いびきをかいたままのディオマンシをそうっと椅子の下まで引きずった。
そして上半身を起こし皆で抱えて椅子に座らせた。
『ふ~、重い。』
『そしたら、椅子と一緒に縛っちゃいな。』
今度はコリが自分の腰ひもを解いた。
『さっ!みんな!帰るよ!』
6人の夫人達は、好きでディオマンシの王妃になったわけではなかった。
皆、ディオマンシに手込めにされた夫人達であったのだ。




