静かなる内戦13~ニジェの帰還
『はい、逃げ惑ったのでございますが、わたくしはこの背負籠を背負っておりましたので。
そこに矢が刺さり何とか無事に。』
『この籠に刺さっているのは敵の矢か‼』カマラが言った。
『あッ、まだ刺さっておりましたか‼ なにしろ無我夢中で戻って参りましたので。』
『どれ、見せてみろ。』
カマラが籠から一本矢を抜いた。ディオマンシも座ったままだったが身を乗り出した。
『ほぉ、剣先は鋭いが子供じみた作りだ。』
カマラはもう一本の矢も抜いた。
『似たような幼稚な作りだ。稚拙な部族じゃ。』
『ディオマンシ様、どうなさいましょう。』
カマラはディオマンシに尋ねた。
『殺るしかないであろう。
私の大事な二人を殺ったんだからな。』
『敵は50ほどと言ったの?』
『そのくらいかと。』ニジェは答えた。
『そんな湿地の深い所、住むにはその程度が限界だろ。暮らしているのは、女子供入れても100がいいとこ。』
『たぶん。』
カマラが相槌を打つように答えた。
『では男で150、三倍の民兵を揃えろ。10過ぎのガキ、年寄も全部。指揮はカマラ、お前がとれ!』
『年寄は足手まといに、、道すがら倒れでもしたら面倒でありますが?』
ディオマンシは少しニヤリとしてからこう言った。
『少し淘汰したい。年寄はうるさいからの。』
『それではディオマンシ様お一人になられますが?』
『よいよい、俺は女どもと楽しくやっておる。フランス軍などまだまだ先じゃ。』
ディオマンシは続けた。
『おっそうだ!お前、なぜその水鳥が
フラミンガとわかった?』
『空がピンク色に染まりましたので。』
『お前フラミンガを知っておるのか?』
『あ、、、行きすがらパプ様にお聞きいたしました。』
『そうか。
ではカマラ、農民たちにも声をかけ明日出発しろ。すぐ支度しろと伝えろ‼ ついでにその地も奪うぞ!』
『ニジェ、お前も手伝え。手分けして皆に伝える。』
『はい! あッ、ファルにも手伝わせましょう。』
『よかろう。明日の朝、夜明け前に宮殿の前に集まれと!』
『はッ』
『ゆけ‼』ディオマンシは人差し指を揚げた。




