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♯14

裏タイトル:ストーカーやばいヤンデレ怖い。

 年月が過ぎるのは早いものです。


 あれほど他者との接触を恐怖し拒まれていらしゃったお嬢様が、無事にヘリオドール侯爵ジェット様と婚礼を迎えることが出来ました。


 花が咲き乱れる中佇む花嫁姿のお嬢様、ユークレース様はこの世の何よりもお美しく、このカーネリアンの心を打ち震わせました。


 さすが、妖精姫の名に相応しいお姿であったと……、そう感じずにはいられませんでした。


 その年齢差からお嬢様を支えるのに足るべきか、と心配されたジェット様もそのお嬢様を任せるに値する方へと成長され、心の荷が軽くなった思いです。


 また季節が過ぎ、お二人のお子様でも誕生された際には忙しくなるでしょうが、ここで私も自分の今後を振り返る余裕ができたように思えます。


 私もお嬢様たっての願いもあり、お嬢様と同じ婚礼衣装を身につけ、花嫁とあいなりました。


 お相手は、ヘリオドール家の執事、ジルコン様です。


 いえ、もう彼の人の妻となったからには、ジルコン、と呼んで差し支えないでしょう。


 初めてお会いしたその時から、気にかかる方ではありました。


 その後、幾度もあったジルコンよりのアプローチ。


 正直、恥ずかしくも嬉しくもありましたが、それを顔に出すことはできませんでした。


 年齢の差もあり、素直になることがなかなかできませんでしたが、後押しをしてくれたのが、ジェット様とユークレース様のご関係です。


 徐々に打ち解けあうお二人……、それを見ているうちに、私の心にも勇気が宿ったのです。


 こんなにも私を想ってくれているジルコンを受け入れ、私もお嬢様と同じように幸せな花嫁になっても良いのではないか、と。


 一時は生涯独身でお嬢様の侍女でいようと頑なに心に決めていた私の心に隙間に、少しずつ、けれど着実に根づいたこの想い。


 これもすべてジルコンが諦めずに、私にその心を捧げて下さったから……。


 ふふ、嫌ですね。こう書き連ねていくと、少し恥ずかしいです。


 まるでなかなか口に出すことのできない、ジルコンへの恋文のようではないですか。


 ……ですが、誰に話をするのもない、だからこそ素直になれる場合というものもあります。


 ここには、誰にも打ちあけられない私の気持ちを記しております。


 だからこそ私の真実を、このジルコンへの想いを余す隠すこともなくさらけ出すことができるのですから……。


 私はここに誓います。


 私ことカーネリアンは最愛の伴侶・ジルコンの妻として彼を愛し抜き、どのような時であっても生涯をともにすることを……。













 ↑

 何ですか。


 何なのですか、この気が狂ったとばかりの内容の文は。


 頭がわいてるとしか思えません。


 しかもこの手記帳隠しておいたはずなのにどうやって見つけてきたのですか。


 何段階も踏まないとわからないようしてしまっておいた上鍵までかけていたというのに……。


 しかも何故虚像と妄想に満ち、偽証された語るにおぞましいものを書いているのですか。


 お嬢様のコミュ障がそう簡単になおれば世話ないですし、あのクソチ……ああもうチビではないですが、生意気ヘタレ侯爵がお嬢様を任せて安心できるレベルまで達したかと言えばからっきしですし、策略に嵌まって婚姻こそはさせられましたが悪魔に心まで売った覚えはありませんが。


 これではまるで私があの悪魔に恋しているかのようではありませんか。


 あり得ない……、これっぽっちも微塵もあり得ないことをさも秘された真実かのように、何故。













 ↑

 嫌だな、我最愛の妻よ。


 夫婦の間で隠し事なんて、あるはずないじゃないか。


 君のことなんてすべてお見通しだよ。


 この手記帳だって、探して欲しくてあんな所に置いていたのだろう?


 すぐにわかったよ、愛しい人。


 鍵なんてもの、僕の君へ想いであっという間に開いてしまったよ。


 まるで君の心のようだね。


 君のその冷たい眼差しの中に潜んでいる愛情、トゲトゲしい言葉の中に含まれている優しさ……、一見それはとてもわかりにくいけれど、僕はいつも君の言動の中に含まれる小さな真実を見つけている。


 この手記帳に書いたことだって、なかなか素直になれない君に代わって君の心の本音を書いてみたまでのことだよ。


 それに悪魔って僕のことかい?


 君を虜にする悪魔のような魅力を持っていると言いたいんだね?


 そんなチャーミングなニックネームを僕につけてくれるなんて…………。


 本当に、君は可愛い人だ。


 本当に僕は君を花嫁に出来て、心から幸せに思うよ、カーネリアン。 

 












 ↑

 ……本当に悪魔の花嫁になった気分です。


 何をどうこうしても、すべてが無駄なような気がします。


 この手記帳もこれが最後になるでしょう。


 何を書いてもあの悪魔が横やりを入れてくると思うと、もう何も書く気はきません。


 それでは、ここでさようならと致しましょう。


 次にお会いできるのは、私があの悪魔から無事逃れられた時かと。


 では今までありがとうございました。


 またお会いできる日まで、ごきげんよう……。


これで最終話です。

どうもありがとうございました。


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