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♯13

この話もそろそろ終いにしようかと検討中。

 このカーネリアン、一生の不覚でございます。


 風邪をひきこんでしまいました。


 ヘリオドール侯爵家へきてもう一月。


 環境の変化にも慣れた所で、油断が出たのかもしれません。


 最初はコホッと咳が零れた程度。


 そのうちに、頭痛や胃のむかつきなど諸症状が出てきて、このままではまずいか、とも思いはしました。


 しかしお嬢様の面倒をみれるのは私のみ。


 無理を押してあれやこれやと動いておりましたが……、まさかいきなりぶっ倒れる羽目になるとは思いも致しませんでした。


 しかも予告なく、お嬢様へお出しするお茶の仕度をしている際に、意識が突然ブラックアウト。


 次に目を覚ました時、最初に目に飛び込んできたのは涙ボロボロ零して私の手を握りしめているお嬢様の姿でした。


 さすが至高の美少女は次元が違います。涙とともに鼻水垂らしていても美しいとはさすがでございます。


 そしてその後ろには、見知らぬお医者様。ラリマー様やジェット様、ジルコン様もいらっしゃいました。


 お嬢様が同じ部屋に気も失わずにいらっしゃれたことに驚きましたが、その疑問を口にする間もなく私の体調の話題になってしまいました。


 ヘリオドール侯爵家の主治医殿が仰るには、過労からくる風邪であろう、とのこと。


 このような幼子に過分な責務を与えるとは何事かと仰られ、可哀そうにお嬢様はしゅんとなされてしまわれました。


 これは異なことを。


 こんな恵まれた環境で過労などあろうはずがございませんのに。


 パン一つ得ることも厳しい環境もこの世にはごまんと溢れています。それに比べれば衣食住、高レベルに揃えられたこの私に過労などあり得るはずもございません。


 たかが風邪で、大げさなのです。


 わかっていながらうっかりこじらせた私にすべて責があります。


 しっかり眠ったのでもう大丈夫でございます。


 そう主張しても、皆首を横に振るばかり。


 私は最低一週間はベッドの住人になることを言い渡されたのでした。


 私がいなくては誰がお嬢様の面倒を、と食い下がったのですが、お嬢様からは「カーネリアンが死んだら私も死ぬから」と宣言され号泣されました。


 いや死ぬって……。


 そんな切羽詰まった状況でも何でもないはずなのですが。


 それに焦ったジェット様からは「俺の持てる力のすべてでカーネリアンを延命させるから、お、おおお落ち着け、ユークレース!」


 まずはお前が落ち着けチビ侯爵。それに延命って……、過労からくる風邪だと医者が言ってるだろうが。


 ラリマー様は鷹揚に「君の静養中は僕が代わりに君の大切なお嬢様の面倒をみるから安心して休みなさい。僕は仕事はできないけど、レディのお話の相手とお茶の仕度には少しばかり自信があるのだよ」と仰られました。


 それって成人男性のセリフとしてはいかがなものでしょうか。


 お嬢様は「タヌキさん……」と感激したような様子でいらっしゃいましたが。

 

 何故そこで感激するのか、いやそれよりもいいかげん侯爵の叔父をタヌキ呼ばわりするのを叱り飛ばすのが先決か……。


 このカーネリアン頭が痛い思いでございます。


 しかし、ユークレースお嬢様、ラリマー様には拒否反応示されないご様子。


 確かに私に何かあった際お嬢様を託せるのはこの方しかいない気も致します。


 もとより食事の用意や掃除洗濯などについてはヘリオドール侯爵家の方達の手を借りていたのです。


 ドレスや髪は存外器用なお嬢様。お一人でも問題ありません。


 食事の手伝いやお茶のお相手が私の主な役目。


 ラリマー様でも十分こなして頂けるでしょう。


「じゃあ僕はカーネリアンの面倒を見ようかな。これ以上ないくらい、甘やかしてあげるよ?」と、ジルコン様。


 ぞわわわわわ。


 背中に怖気が。


 それは心の底から全力でご遠慮申し上げます。


 なんかこの執事、近くに寄られると気持ち悪いのです。


 近寄らないでくれますか。


 きっと生理的に受けつけないとはこのことなのでしょう。


 主治医殿はため息をため息を吐かれると、とにかく滋養のあるものをとって安静を、と仰られて帰っていかれました。




 ちなみに、私が倒れた後パニックに陥ったお嬢様が助けを求める為屋敷の外へ飛び出した所、ストーカーよろしく潜んでいたジェット様がそれに気づきお嬢様から話を聞き出し、ジェット様からジルコン様へ連絡がいき、ということでこの状況が整えられたもようです。


 ベッドに運び込むのはラリマー様、寝間着への着替えは侯爵家のメイドさんがしてくれたとか。


 怪我の功名というか、この一件によりお嬢様はジェット様の姿を見るだけで気が遠くなっていたレベルが、声をかけられなければ取りあえず同じ部屋にいても耐えられるレベル、にまで格上げされたもよう。


 さすがに衣食住の面倒を見て下さっているクソガ……、お嬢様の将来の旦那様(仮)に一目見ることも一声声をかけることもすべて不可、という現状はないわと、いずれは何とかしなければいけないと思ってはいたので、ある意味良かったといえば良かったのでしょうが……。 


 何か釈然としない気持ちが残ります。


 まあそれはそれとして、一言よろしいでしょうか。



 大袈裟だっつーの、お前ら皆。私はただの風邪だっつってんだろコラ。


取りあえず次回もよろしくお願い致します。

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