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♯11

本編に時間軸追いつきました。


 お嬢様の健やかな寝顔を横目に、怒濤の一日であった本日の出来事を思い返しています。


 今日は大変な一日でした。


 ユークレースお嬢様の婚約されたヘリオドール侯爵家へ身を寄せることとなりました。


 そのお屋敷の立派さ、調度品の一つ一つをとってみてもフローライト子爵家とは比較にならないほどの上質なものでありました。


 これはお嬢様には少々厳しい、と思ったのも無理はありません。


 お嬢様は見かけこそ深窓の粛々たる高貴な御令嬢でありますが、その中身は極度のコミュ障を別とすればその辺の町娘と変わらない……こほんこほん。


 とにかく、高位貴族の女主人としての役割を求められても、無理がありすぎるのではないでしょうか。


 そんな不安を抱きながらお嬢様の未来の旦那様が姿を見せられるのをこれまた高級品なお茶を頂きながら待っていると、そこに現れたのはお嬢様と同年代の少年でした。


 実際に同年齢だった少年の名はジルコン・セレスタイト様。ヘリオドール侯爵家の執事とのこと。


 ヘリオドール侯爵様の御親戚でもいらっしゃるということでした。


 言葉を交わした時間は少なくありますが、私はここに断言致します。


 アレは性格が悪い。


 人が良いばかりではこの世間の荒波を渡っていけないことは百も承知です。


 旦那様の件でそれは身に染みて存じ上げています。


 が、アレはちょっと。


 極力関わりあいたくないタイプの人間です。


 ぶっちゃけ嫌いなタイプです。


 それに比べて侯爵様の叔父様であらせられるラリマー様、穏やかでとても優しそうな方でいらっしゃいました。


 タイプは違いますが、どこか旦那様と通じるところを感じさせる方。


 ああ、こういうタイプが人に騙され家を潰すのですねとしみじみ思いました。


 が、人としてはとても好感が持てる方です。


 お嬢様もラリマー様には少しばかり心を開いた様子でしたし。


 ただ本人に向かって狸呼ばわりは許容出来かねます。


 明日からビシバシ指導開始ですね、これは。


 しかしラリマー様の人柄が非常に好ましいものなのは確かです。


 何かあった際にはまず相談させて頂くことに致しましょう。


 実際に役に立つのか否かは別として。


 そして、最後にお嬢様のお相手、ジェット・ヘリオドール様。


 この方とは今いる別邸にて初めてお会い致しました。


 しかしこの別邸、ユークレースお嬢様の為に用意されたものということですが、非常に快適で居心地が良いです。


 部屋は普段遣いする広間にお嬢様と私の寝室、客室、応接間、食堂にバスルーム……。


 侍従の部屋もありますが、常駐の方は置かないので物置場にする予定です。


 身の回りや食事の世話をしてくれるメイドやコックについては本邸から通いできてくれるとのこと。


 侯爵夫人が住まうには足りないのは確かですが、実際にはお嬢様は未だ婚約者の身の上。


 没落した令嬢に与えられたものとしては十分ではないでしょうか。


 寝具やドレス、お茶屋お菓子、雑貨や身の回りの品々まで不足はありません。


 強いて言えばお嬢様の趣味的なものが足りませんが、言えば用意して頂けるとのこと。


 生活に差し支えない、その準備万端たるお膳立て。


 私はこれは大人しくここにこもって表には出てくるなよという意思表示とお見受けしました。


 なので、一目でお嬢様に心奪われたらしきジェット様が、倒れたお嬢様をおたおたしながら「やはりこんなところではなく本邸に部屋を用意して」と言い出した時に、「それには及びません。お嬢様にとっては日常のこと。むしろこのように素敵に整えられた住まいをご用意頂き感謝しております。お嬢様にとっての一番の苦痛は人の目にさらされること。ここで私がしっかりとお嬢様のお世話をさせて頂きますのでご安心ください。ですから本日はここまでとし、正式なご挨拶はまた後日ということでご容赦下さい。さあさあお嬢様を楽な室内着に着替えさせて頂きたいと思いますので殿方は本日はもうお帰り下さいませ。さあさあさあさあ」と言い切り、ご提案を阻止させて頂きました。


 ジェット様は呆然と、ラリマー様は心配そうに、ジルコン様はタチの悪そうな笑みを浮かべながら本邸へと戻っていかれました。


 名ばかりの花嫁を遠ざけようと画策していたら実際には好みドンピシャだったので近くに寄せようなんてそんな甘い考えどなたが許そうともこのカーネリアンが許しません。


 それに、この別邸はお嬢様にとって現状考えられる中で最高の環境なのです。


 せっかく手に入れた安息の地をそう簡単に取り上げられてなるものですか。


 あの御年で周囲の手助けを受けながらでも侯爵家を切り盛りできている手腕、あのガ……ジェット様も只者ではないのでしょうが、恋は人を愚かにするとも言います。


 侯爵様の頭に花が咲いているうちに、お嬢様にとってより良い環境を整えさせて頂くのがこのカーネリアンの努め。


 このカーネリアン、ユークレースお嬢様の為に誠心誠意最善を尽くして参りたいと存じます。


 それが他者の最善であるか否かは知ったことではありませんが、何か?

 

本編の最終話・カーネリアンの手紙より先の時間までは進めるつもりはないのですが……、残り話数はまだ判断つかないですね。

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