表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18years  作者: 田中タロウ
77/109

第4部 第3話

赤ちゃんを産む分娩室へ案内されたのは、陣痛室に入ってから3時間後のことだった。

自力では歩けず、看護婦さん二人に抱えられての移動だけど。


陣痛室では出てこようとする赤ちゃんを必死に抑えてた。

でも分娩室では、ようやく思いっきり産める!!


そう思うとかなり気が楽になった。

もっとも身体の方の辛さはピークを越えていたが。


ここからは、さすがに自称弟のコウちゃんも立ち入り禁止。

私一人の戦いだ!

って、なんで一人なんだ、統矢さんは来てくれないの!?

立ち会ってくれないの!?


統矢さんのバカ!!!

バカバカバカ!!!!


私がこんなに辛い思いして統矢さんの子供を産もうとしてるのに、

他の女といちゃついてる場合じゃねーぞ!!!!


くそー!!


思考回路がおかしくなりながらも、怒りに任せてイキむ。


「ユウさん!呼吸して、呼吸!息とめちゃダメですよ!!」


ムリー!!!

好きに産ませてー!!!


その時・・・


オギャアアアアアアア!!!


「ほえ?」

「赤ちゃん出てきましたよー!おめでとうございます!立派な男の子です!」


あれ?

もう出てきたの?


あれほど痛かったお腹と腰から一瞬にして痛みが消えた。

気分の問題ではなく、本当に消えたのだ。

今まで苦しんでたのが嘘みたい。

すぐにでも歩けそうだ。


そんなことを考えながらも、目は赤ちゃんを探す。

どこだ??

ん?

お医者さんが持っている、そのエイリアンみたいな奴か?


「臍の緒、切りますねー」


臍の緒?どれ?


するとお医者さんがエイリアンのお腹の辺りから出ている異常に太くて青いグロテスクな紐を切る。

それが臍の緒?

臍の緒ってもっと細くて、肌色か透明だと思ってたけど・・・なんか・・・カエルの卵みたいだぞ。


目の前の状況に頭がついていかず、

お医者さんにあっちこっち連れて行かれるエイリアンを必死に目で追った。


エイリアンはゲホゲホ言いながら、羊水を機械で吸い取られている。

・・・生きているようだ。生き物なんだ。


「カンガルー抱っこしましょうね」


と、看護婦さんに病院着を脱がされる。

そして私の裸の上半身にエイリアンが上陸した。


「・・・・・・」


おう。なんだこれは?

なんだ、このシワクチャで頭がやたら大きくて赤くて、でも身体は青白い、生き物は?

なんだ、このお世辞にもかわいいと言えない猿のような生き物は?

なんだ、この全然かわいくないのに・・・愛おしい生き物は?


赤ちゃん?


うつ伏せに私の胸に置かれたソレは、必死に首を持ち上げて何かを探しているようだ。


「すごいでしょ?赤ちゃんって、産まれた瞬間からオッパイ探すんですよ。

ほら、ママのオッパイ吸いましょうねー」


そういってお医者さんがソレの口を私の乳首にあてがう。


・・・吸った?くすぐったいぞ・・・


それから私のエイリアンは、身体を拭くからと言って別室に連れて行かれた。

私は、何かを点滴してもらった。



点滴をしながらウトウトと3時間が経った。

ようやく分娩室を出て、入院する個室へ向かう。

いつもの(?)VIPルームだ。


廊下を進むと、ガラス張りの壁に庄治とコウちゃんが張り付いていた。


「あ!ネェちゃん!!!」


コウちゃんが目をウルウルさせて飛びついてきた。

おお、このパターンはやばいぞ、と思う間もなく、熱烈なキスをされた。

なんか、夫婦みたいだ。


「おつかれさま!おめでとう、ネェちゃん!!すげーかわいい!!!」


かわいい?

あのエイリアンが?


コウちゃんに手を引かれ、ガラス張りの壁を覗き込む。

中には産まれたばかりの赤ちゃんがずらりと並んでいた。

庄治が嬉しそうに指をさす。


「ユウ、おつかれ。ほら、あれ。左から3番目」


そこには青い服に青い帽子のちっちゃなちっちゃな赤ちゃんがベッドに寝かされていた。


「あれ・・・私が産んだ赤ちゃん?」

「うん。ほら、ベッドの頭んとこに『廣野ベビー』って書いてあるだろ?」


本当だ。

廣野ベビー。

っぷ。なんだそれ。


ガラス越しに「廣野ベビー」を3人で飽きることなく眺める。


・・・かわいい


心からそう思った。


はじめまして。

私の赤ちゃん。

私があなたのママだよ。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ