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18years  作者: 田中タロウ
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第4部 第1話

カレンダーを見る。


1月12日

第2月曜


あ、成人の日だ。

あれ?そうだ、私今年の3月で二十歳じゃん。

今日は私の成人式だったんだ。


でも、家出してすでに実家にずっと帰っていない私にとっては、

もはや成人式なんてどうでもいい。


こんな大きなお腹じゃ振袖も何もない。

そういえば、二十歳前に結婚してる人も成人式には留袖ではなく振袖なのかな?


そんなことを考えながらため息をついた。

今年に入り、もう何回ため息をついただろう。

軽く一年分はついた。


いや、一生分かも・・・




--------------------------------------------------------------------------




「はい。順調ですね、また2週間後にきてください」

「ありがとうございました」

「最近旦那様いらっしゃいませんね。お元気ですか?」

「・・・はい。元気です」


だと思います。


病院を後にし、車の中でまたため息が漏れた。



統矢さん・・・

今年に入り、いや、去年の年末あたりから統矢さんの様子がおかしい。

おかしい、というかもっとはっきり言うと、夜、家に帰らないことが多くなった。

会社をやめた統矢さんは、昼間はお屋敷で組の仕事をし、夜になると出かけていく。

そして次の日の午前中に帰り、また仕事をして夜に出て行く・・・の繰り返しだ。


私に対する態度も明らかに変わった。


またため息が出る。


女ができたな。




私が廣野組に来てから、今まで統矢さんが外泊することなんて一度もなかった。

それは私がいたから、と言っても自惚れではないだろう。

恋愛感情があったかどうかは別として、お屋敷に帰れば私がいたから、

女を抱きたい時はお屋敷で私を抱いた。

だから外泊などする必要がなかったのだ。


それがここ3週間ほど頻繁に外泊している。


初めのうちは仕事かな、と思った。

でも、女とは悲しい生き物で、

家を出るときとちょっと服の着こなしが違うとか、

知らない匂いがするとか、

気づきたくなくてもそんな些細なことに気がついてしまうのだ。


どこの昼ドラの主人公だよ、と自分で突っ込んでみるが、

気がついてしまうものは仕方ない。


はあ。


また、ため息。


元々、女関係は適当な統矢さんだ。

生涯女は私だけ、とは正直思っていなかった。

しかも、今は妊娠後期でもう1ヶ月以上身体を重ねていないし、

産後もしばらくは無理だろう。

それに、ここのところ例のマタニティブルーのせいか、自分でも分かるくらい私らしくない。

こんな私とずっと一緒なのも少し気疲れするはずだ。


ちょっと外で遊びたい・・・って気にもなるのかもしれない。


相手は・・・


クリスマスパーティの時の美女が頭をよぎる。


おそらく、愛さん、だ。

前から統矢さんに言い寄っていたと言うし。


統矢さんは相手にしていなかったようだけど、

結婚が決まり、跡取りもできた今、

妊娠中の妻から、自分に言い寄る美女に目移りしたのだろう。


統矢さんが普通のサラリーマンなら即離婚ものだけど、

こういう世界だ、多少の我慢は必要だ。


そう、去年、お藤さんに「ヤクザの女になるには覚悟が必要」と言われた。

その「覚悟」のだいたいは、こういう女関係なのだろう。


わかってる。

大丈夫。

ちょっと遊んだら、きっと統矢さんは私と蓮のところに戻ってきてくれる。


それでも、統矢さんが、あの愛さんを抱いているのかと思うと、

胸が苦しくなる。


そんな時は蓮のことを考える。

後、1ヶ月ほどで生まれてくる蓮。

どんな顔をしてるんだろう?

どんな声で泣くんだろう?


そうやって気を紛らわせる。



大丈夫。

私は統矢さんを信じてる。

統矢さんの一番は私と蓮だ。

私はただ待っていればいいだけだ。






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