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18years  作者: 田中タロウ
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第3部 第15話

8月のある朝。


ふと目が覚めた。

でも、身体が動かない。

よく見ると統矢さんが私を抱えるようして眠っていた。


苦笑しながらも、目だけ動かす。


4時・・・


まだ4時か・・・


もう一度目を閉じる。


そのとき、

唐突に思い出した。

初めて組長の部屋に泊まった日のことを。


あの朝、私はベッドから落ちて目を覚ました。

あの時の組長の驚いた顔といったら・・・

一人で思い出し笑いをする。


そうだ。

あの時も、4時だった。



私が組長のところに行かなくなって、5ヶ月くらい経つ。

組長は私が一緒だと何故か睡眠薬なしで寝れると言っていたけど、

最近はちゃんと眠れてるんだろうか。

また睡眠薬を飲んでるんだろうか。



急に組長の顔が見たくなって、私はそっと起き上がった。

以前は、私が起きると統矢さんも目を覚ましてしまっていたけど、

最近は慣れたのか、私がベッドを抜け出してもそのまま寝ている。


そっと部屋をでて、廊下の一番奥の組長の部屋へ向かう。

途中、見張りをしていた庄治に「そーゆー渡り歩きってあり?」と笑われた。

でも、かつて組長の部屋に出入りしていた私を誰も止めたりはしなかった。


ノックしようか迷ったけど、

組長が寝てたら起こすのも悪いので、ノックせずに静かに扉を開ける。

中をのぞくと、ベッドで眠る組長の姿が見えた。

私は扉をしめると、ベッドに近づいた。

顔を覗き込む。


組長は仰向けになり、瞼をしっかり閉じて眠っていた。




おかしい


胸がざわざわする


何かおかしい


そうだ。

組長は統矢さんと全く同じ寝方をする。

瞼を軽く閉じ、うつ伏せで寝る。


二人とも、仰向けに眠ることなど一度もなかった・・・!


「組長・・・?」


静かに呼びかける。

組長は返事しない。


「組長!」


今度は少し大きい声で呼びかける。

眠りの浅い組長なら絶対に目を覚ますくらいの大きさだ。


でも


組長の目は開かない。


私は恐る恐る組長の顔を触った。



―――冷たい



私はその場にしゃがみこんだ。




どれくらい、そのままだっただろう。

窓から朝日が差し込んできて、ようやく私は我に返った。


そうだ、早く、早く統矢さんに知らせなきゃ!


そう思って、立ち上がり、扉のほうへ歩いていった。


統矢さんに知らせて・・・

そうすれば、たちまちこの部屋は人で一杯になるだろう。


私は足を止め振り返る。


これが最後なんだ。

組長と私、ここでの二人きりの時間はこれが最後なんだ。


組長とはここで二人きりの時間をたくさん過ごしてきた。

統矢さんと私の関係が途絶えていた間も、組長とはここでずっと一緒に過ごしてきた。

私が寂しい時は、なぜかそれを察して、毎日のようにここに呼んでくれた。

それでいて、私が統矢さんと一緒にいたいと思う夜は、なぜそれがわかるのか決して呼ばなかった。


組長との関係がなくなった後も、ここで一緒に話をしたり食事をしたりした。


それもこれが最後。


そう思うと急に涙が溢れてきた。

でも長くは泣かなかった。

私には組長に言われた仕事がまだ残っている。

それをきちんとやり遂げなければ。


私は再びベッドへ歩み寄った。


そして、

組長にそっとキスをした。


「組長。ありがとうございました。ゆっくり休んでください・・・」


そう言って、私は統矢さんの部屋へと向かった。





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