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18years  作者: 田中タロウ
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第3部 第12話

『3月31日。お前今日、19歳の誕生日だろ?よくもまあ、こんな年度末のクソ忙しい時に生まれたよな』


なんてサラリーマンなご意見。

って、つっこみどころはそこじゃなくて。


「なんで私の誕生日知ってるんですか!?私でさえ忘れてました・・・」

「さて、なんででしょーか?」

「・・・・・・」

「はい、時間切れー」

「答えは?」

「内緒」


なんだ、それー?

私、廣野組に来てから自分の誕生日なんて誰にも教えたことないぞ?

どうして知ってるんだろう?

そして、今日は私の誕生日だからこのホテルに連れてきてくれた・・・?

それって・・・ものすごく喜んでいいのかな?


「そういえば、統矢さんの誕生日って・・・もう終わってますよね?いつなんですか?」

「おい」

「てゆーか、何歳なんでしたっけ?」

「・・・お前、好きな男の誕生日と歳くらい知っとけ」

「ぐっ!」


そこ、つかれると痛いッス。

なんか、私、統矢さんに弱味握られてないか?


統矢さんはちょっと嫌そうに、口をすぼめて言った。


「3月3日だよ。28歳」

「さんがつみっか・・・ぷっ、雛祭りですか」

「・・・笑うな」

「笑ってません」


あははは!絶対忘れないー。


私が一生懸命笑いを堪えてると、統矢さんがキスをしてきた。

その間に服が脱がされていく。

相変わらず、するための前段階、というだけのキス。

それなのにこんなに幸せな気分になれるのだから、安い女だ。


「・・・なよ」

「え?」

「もう他の男とするなよ」

「・・・組長とも、ですか?」

「・・・なんで、そーゆー意地の悪いことを言えるんだ」

「ふふふ、冗談ですよ。でも・・・本当に、組長とはもうしません」

「どういう意味だ?」

「組長に、もう来なくていいって言われたんです」


統矢さんが、ガバッと起き上がる。


「なんでだ!?」

「さあ?飽きたんじゃないですか?」

「親父が?親父がユウに飽きた?そう言われたのか?」

「言われたわけじゃありませんけど・・・」

「じゃあ、なんでだ?」

「組長に聞いてくださいよ」


そう、あの日。

組長は二つの仕事を私に言い渡した後、更にこう言ったのだ。


『ユウ。それと、俺のところにはもう来なくていい』

『え?どういう意味ですか?』

『お前と寝るのは今日で最後だ』


私は素直に喜べばいいじゃないか。

でも・・・組長にもう抱かれることがないのかと思うと、何故か凄く悲しかった。寂しかった。

だから朝、目が覚めた時泣いたのだ。

統矢さんには内緒だけど。



「ユウが、親父ともうしない・・・」

「はい」

「・・・」


何を考えているのか、統矢さんはしばらくじっと私の顔を見た。


「統矢さん?」

「うん・・・」


統矢さんが私の髪に顔をうずめる。


「髪、伸びたな」

「え?ああ・・・そうですね」


去年、廣野家に来てすぐ統矢さんに切られた髪。

ようやく肩につくかつかないかまで伸びた。

統矢さんはしばらくその髪をなでていたが、しばらくすると思い出したかのうように、

行為を再開した。


その日は何故かしつこいくらいに前戯が長くて、参ってしまった。

結局、私が根を上げせがむ羽目になった・・・恥ずかしい・・・私、そんなキャラじゃないのに・・・



夕食はそのままルームサービスで済ました。

いや、間違い。「済ました」なんてもんじゃない。

ルームサービスで食べさせて頂いた。

だって、このホテルに入っているフレンチレストランの料理を部屋で食べたのだ。

しかも!私が誕生日だとういうことで、ケーキまでサービスしてくれた!

しかも、しかも!部屋からの夜景の綺麗なこと、綺麗なこと・・・まさに、東京の夜景を独り占めって奴だ。

夜景に見とれるようなタマでないことは百も承知だけど、そんな私でも思わずポーッと見とれてしまう。

ううう、幸せ・・・こんな幸せ、もう一生こないんじゃないか・・・


「あ。このワインは飲める!」

「当たり前だろ。料理用とは訳が違う」

「おいしー!」

「・・・おいしいか?」

「はい!」


・・・なんだろ。なんとなく、統矢さんの目が優しい。


「俺、ワインなんか飲めるようになったの、25歳くらいからだぞ」

「え、そうなんですか?」

「それまでは、こんなもん飲めるか、と思ってた。ビールとか日本酒ばっかり飲んでた」

「へー、意外。物心つく前からお酒飲んでそうなのに」

「うん、飲んでたな」

「・・・よく無事に成長しましたね」


お風呂もすごかった。

猫足のバスタブって、実在するんだな、と変なところで感心してしまった。

でも統矢さんにせかされて、お風呂は早々と終了。

統矢さんが寝てからまたゆっくり入ろう。


「俺が先に寝るとかないし」

「ご遠慮なくどうぞ」

「だめ」


まあ、結局統矢さんが正しかった。

私はその日、もうお風呂にすらたどり着けず、統矢さんの腕の中で眠った。


眠りに落ちるほんの少し前。

耳元でかすかに、統矢さんの声がした。


「好きだ」

と。




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