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18years  作者: 田中タロウ
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第3部 第7話

「どうした、ユウ。体調でも悪いか?休みたいのか?」

「そうじゃなくって」

「あ。じゃあ腹減ったのか?夕飯まだだもんな」

「そうじゃなくって」


第3者から見たら、「女から誘ったけど、気づかない振りしてのらりくらりと逃げる男」の図、だろう。

でも、大輔は本気で私の言った意味がわかってない。

本気で私を心配してくれている。


本当にいい奴だな、大輔・・・


でも、ここは心を鬼にしてユウお得意の直球勝負だ!


「ラブホに行こう」

「はあ?なんで?」

「大輔が私のこと、好きだから」

「!!!」


見る見るうちに大輔が真っ赤になる。

意外と純情じゃないか・・・いや、私の言い方がいくらなんでも直球過ぎたか?


「な、なに言って・・・しかもホテルって・・・バカか、お前・・・」

「本気で言ってるんだけど」

「・・・もしかして、統矢さんに何か言われたのか?」

「・・・ううん」

「じゃあ、組長か」

「・・・」

「やっぱりな」


大輔が、はあ、とため息をつく。


「全く、あの人は・・・」

「組長に言われたから嫌々、っていうんじゃないよ?そのほうがいいって、私が思ったから」

「思ったから?俺と寝るのか?好きでもない男と?」

「・・・怒った?」

「怒ってないけどさ。遠慮しとくよ」

「どうして?」

「統矢さんに悪いから。組長にはした、って報告しとけよ」

「そんな嘘、組長はすぐわかるよ」

「わかってもいい」


大輔の断固たる言い方に私はひるんでしまった。

大輔は組長や私が思ってるほど、私のこと好きじゃないのかもしれない。

だとしたら私ってすごい間抜けじゃないか。


「組長に逆らうか、統矢さんを裏切るか、どっちか選べって言われたら俺は組長に逆らう」

「・・・」

「だから、ユウとはしない」

「・・・うん」

「ごめんな」

「なんで大輔が謝るのよ」

「せっかく誘ってくれたのにさ」


そう言って、ニヤっと笑う。


もしかして・・・

組長は大輔を試したんじゃないだろうか?

組長に逆らってまで統矢さんへの忠誠を貫けるかどうか。

そして大輔は迷うことなく統矢さんを選んだ。

この賭けは大輔の勝ちだ。


それにしてもコウちゃんといい、大輔といい、どうしてこうも統矢さんを慕うのか。

そんな人徳があるのか、あの人に。

って私が言えた立場じゃないけど。


「そうだね、私としたって別に楽しくないよ。Bカップだし」

「どういうヒガミ方だよ。そんなこと言ってないだろ」

「女から誘ってるのに断るなんて。恥かかされた」

「あのなあ」


本当に恥ずかしいから、それを隠すためにわざと嫌味っぽいことを言ってるのだ。


「・・・本当にしなくていいの?組長も私も、していいって言ってるのに?」

「うん」

「・・・でも・・・」

「大丈夫。ちゃんと忘れるから」

「・・・」


今度は私が赤くなった。

そんな私を見て、大輔がぼそっと言った。


「じゃあ・・・キスしていい?」

「え?・・・うん、いいよ」


私がうなずくと、大輔はその場で私をそっと抱きしめてキスをした。


びっくりするぐらい優しいキスだった。

まるで唇に羽が降ってきたみたい。


そしてその手は愛おしそうに私の髪や頬をなでる。


大輔の手や唇・・・ううん、全身から、私に対する愛情の深さを感じた。

こんなにも愛されてたんだ・・・

キスされてるだけなのにはっきりそう感じた。


それと同時にこみ上げる罪悪感。

私はこんなに大輔が想ってくれているとは知らず、随分酷いことをしてきたんじゃないか?

大輔はどんな思いで、組長と統矢さんが私を抱くのを見てきたんだろう。

「ユウはやった後、やりました〜って顔してる」と大輔は言ってたけど、

そんなバカな私を見て、一体何を思っていたんだろう・・・


やっぱり私はバカだ、大バカだ。



・・・それにしても本当に気持ちいいキスだ。

私は思わず大輔の身体に手を回した。


思えば、組長にも統矢さんにもこんなキスされたことない。

キスの後には必ず身体を求められたので、キスなんてその前段階に過ぎなかった。


キスのためのキス。


それがこんなに気持ちいいなんて知らなかった。



大輔が顔を離したとき、

私はたぶん、茹でタコみたいに真っ赤になっていた。


大輔は照れくさそうに、あはは、と笑った。









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