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18years  作者: 田中タロウ
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第2部 第31話

大輔は、床に座り込んで泣きじゃくる私を抱きかかえてベッドに座らせてくれた。

そしてそのまま、ぎゅうっと私を抱きしめた。


背の高い大輔に抱きしめられると私なんてまるで子供のようにすっぽりと腕の中に収まってしまう。

大輔は唇を私の額に押し当て、優しく頭をなで続けてくれた。



偶然とはいえ、大輔がいてくれてよかった。


私は泣きながら、自分の気持ちも含めて洗いざらいぶちまけた、

・・・つもりだった。


「と、とうやさんがね・・・うう」

「うんうん」

「みつきさんが・・・」

「うんうん」

「こうちゃんがぁ」

「うんうん」


全く意味不明の私の説明を大輔は辛抱強く聞いてくれた。

そして、1時間以上かけてようやく事情を理解してもらうに至った。


「つまり、ユウは統矢さんを拒んだ後になって自分の気持ちに気づいたけど、

あっさり振られたってことか」

「ううう、そんなに簡単にまとめないでぇ〜」

「ははは」


いや、実際そんな簡単なことなんだろう。

私が勝手に1人で勘違いしたり悩んだりして、勝手にややこしくしてただけだ。

結果はとっても簡単。

要は、私は振られたってことだ。


なんて単純明快。


そう思うとちょっと落ち着いてきた。


「明日からどうしよう。恥ずかしすぎて統矢さんと顔合わせられない」

「いつも通りでいいんだよ」


そう。

私が拒んだ後も、統矢さんはいつも通り接してくれていた。

今度は私がそうしなくては。


「なあ、ユウ」

「何?」

「ユウはこのまま組長の女になってもいいのか?」

「・・・」

「嫌じゃないのか?」

「・・・わからない」


それが正直な気持ちだった。

わからない。

組長は、はっきり言って好きだ。

ただ、統矢さんに対する気持ちとは少し違う。

憧れというか、一緒にいて安心するというか・・・

だから、「組長の女」と言われても決して嫌じゃない。


そして翌日、「組長の女」が復活することになる。

しかも最悪の形で。




クリスマスの朝、目が覚めると枕元にプレゼントが・・・

なんてことはもちろんない。

てゆーか、いつの間に寝たんだ、私?


そうだ、昨日は大輔に抱きしめられたまま泣きじゃくり、結局そのまま寝てしまったんだ。

たぶん大輔は眠った私をベッドに横たえて、そっと出て行ってくれたんだろう。


ああ。

統矢さんにも大輔にも恥ずかしいところを見せてしまった。

それにしても、大輔・・・いや、今は余計なことは考えないでおこう。

いつも通り、いつも通り・・・いつも通りにしなくては。


ブツブツ言いながら台所に向かうと、マサさんに呼び止められた。


「ユウ。組長が呼んでるぞ」

「はい。ありがとうございます」

「あと・・・犯人がわかった。今日中にはかたがつくから」

「・・・段ボールですか」

「段ボールだな」


クリスマスだというのに、かわいそうな奴らだ、

と、自分をひどい目にあわせた奴らだが、思わず同情してしまう。

だって、クリスマスに段ボール詰めって・・・いっそトナカイに運んでもらってしまえ。



「安藤から連絡があった」

「え?」

「検査の結果は全て陰性。問題ないそうだ」

「そうですか、よかった・・・」


組長に検査結果を伝えられ、胸をなでおろす。

まだ結果を聞いてなかったのに昨日、統矢さんにあんなことを言ってしまった。

もし病気とかが移ってたら、私はどうするつもりだったのか。


まあ・・・そんな心配はいらなかったわけだけど。いろんな意味で。


「ユウ、大丈夫か?」

「え!?」


思わず統矢さんのことを聞かれてるのかと思い、めちゃくちゃ動揺してしまった。


「どうした?」

「あ、いえ。すみません。なんでもありません」

「そうか」

「あの、大丈夫です」

「ふっ。今度はこそ、できるか?という意味だぞ」

「へ?」


あー・・・そういえば、前、勝手に「大丈夫か?」の意味を勘違いしたんだった・・・

おう、どんとこい。


「大丈夫です」

「無理するなよ」

「はい。今夜来ます。何時に来たらいいですか?」

「今だ」


「えっ」と言う間もなくベッドに引きずり込まれる。

まだ朝ですよ、組長・・・


でも、相変わらず、すぐにそんなことはどうでもよくなった。


早く統矢さんのことを忘れたくて、私も夢中だった。

たぶん組長に何か感づかれただろうけど、あの事件の後だ、多少おかしくても変じゃないだろう。


でも今日は気絶しなかった。

頭の片隅に昨日のことがチラついていたせいかもしれない。


それでも身体は動かず、ぐったりとベッドに沈み込んでいたら、

組長が「仕事がある。ユウは好きなだけ寝ていい」と言って、着替えて出かけてしまった。


組長のベッドは当然私のベッドとは比べ物にならないくらい気持ちいい。

いっそこのまま寝てしまおうか。

でも、万が一、誰か入ってきたら困るな、せめて服ぐらい着なきゃ、

と、ぼんやり考えてるとドアをノックする音がした。


げげっ!

どうしよう!?

無視した方がいいかな?でも入ってくるかも・・・


おたおたしてると、思わぬ声がした。


「親父、いるか?入るぞ」


入るなー!!!!!!


大声で叫びたかったけど、できなかった。

どうしよう、どうしよう、どうしよう!

なんでよりによって統矢さんなんだ!!


更に、よりによって私の取った行動は最悪のものだった。



ガチャ


統矢さんがドアを開けて入ってきた。

ベッドの中の私に気づいたのか息を呑む音がした。


私は、と言えば・・・

そう、寝たふりである。

もちろん布団はしっかり顔までかぶってるけど。


こんなシチュエーション、気まずいでしょ〜?

早く出て行ってよ〜


祈るような気持ちでいると、こっちに向かって来る足音がした。

いや、統矢さん、出口はこっちじゃありません、あっちです。

こんなところで方向音痴を披露しないでください。


「ユウ」


はい、と言えるはずもなく。

ひたすら狸寝入りを決め込む。

い、息苦しい。。。

死んだ振りをしてるわけじゃないんだけど、思わず息を止めてしまう。


すると、何を思ったのか統矢さんは布団を胸の辺りまでそっとはいだ。


うわっ


下着もつけてないのに・・・

今更ながら恥ずかしい。


目を閉じてるので統矢さんの表情はわからないけど、

しばらくすると、統矢さんはまた布団をかけて出て行った。



「・・・ぶはっ!!!」


苦しかった!








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