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18years  作者: 田中タロウ
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第2部 第30話

台所で1人、赤ワインを飲む。


テーマは「クリスマスイブを1人寂しく過ごすOL」


って、うげー!まずー!!!!

私には大人の味過ぎる。



「・・・何1人で百面相やってるんだ?」

「あ。統矢さん、お帰りなさい、早かったですね」

「あんなくだらんパーティ、長居してられるか」


そうは言いながらも、開放感からか表情は晴れやか。

お疲れ様です。


「ところで百面相ってなんですか?」

「大人っぽい表情になったり、吐きそうな表情になったり」

「いや、それはですね、テーマが孤独なOLで、でも私はお子様で・・・」

「はあ?」

「・・・すみません。ほっといてください」


それにしてもワインって結構酔えるな。

マズイけど、酔えば勢いで飲めるぞ。

私は、グラスに残ったワインを一気に飲み干し、また注ぐ。


「そんなにガバガバ飲んだら潰れるぞ。またお持ち帰りされたいのか。懲りないやつだなー」


おう。持ち帰ってみろ、望むところだ!・・・うん、いいよ。


「統矢さんも飲みます?」

「おお、って、おい、これ料理用のワインじゃねーか。よくこんなもん飲めるな」

「ワインって、料理用とか飲む用とかあるんですか?」

「・・・お前、女中失格。てゆーか、女失格」

「ユウはまだ18歳ですから〜お酒のことは分かりません〜」

「・・・もういい」


はあ、とため息をついて統矢さんが冷蔵庫を漁る。


「あ。それダメです。私のチューハイ!」

「俺んちの冷蔵庫だ。何飲んでもいいだろ」


でた、星の王子様。

ためらいなく統矢さんが缶の蓋を開ける。


「自分へのクリスマスプレゼントだったのに・・・」

「・・・え?そうなのか?って、安!」

「ひどい」

「・・・悪かったよ」

「嘘です」

「・・・」


統矢さんは怒って2階へ上がっていってしまった。

ふーん、だ。

ばーか、ばーか、ばーか・・・



「ネェちゃん」

「何?」


ほとんど入れ替わりにコウちゃんが入ってきた。


「統矢さんが帰ってきたよ」

「みたいね。だから?」

「約束は?」

「・・・なんでしたっけ?」

「ひでー」

「酔ったから忘れた」

「ほんと、酒臭いなあ、ってそれ料理用のワインじゃないの?」

「うわ!高校生のくせに、ムカつく!!」

「俺に絡まないで統矢さんに絡んで」


・・・うまいこと言うな。


ほらほら、と手を引かれ2階へ連れて行かれる。


「じゃあね、頑張って」

「何を?」

「当たって砕けろ」


もうじゅうぶん砕けてますが?



仕方なく酔いに任せて統矢さんの部屋をノックする。


「あの〜」

「どちらの酔っ払いですか?」

「・・・意地悪言わないでください」


統矢さんはちょうどタキシードの上着を脱いだところだった。

私に背を向けて、シャツの襟首のボタンを外そうとしている。

少し前まで、統矢さんが服を脱ぐ姿なんて毎日のように平気で見てたのに、

今となっては正視できないほど恥ずかしい。


「まだ怒ってます?」

「酔っ払いに付き合うほど暇じゃない」


統矢さんの背中・・・

そこには大輔のお父さんによって施された立派な鷹の刺青がある。

 

私はもう二度とそれを見ることはないのかな、

なんて思ったら急に寂しくなってきた。


「何の用だ?」


背中を向けたまま統矢さんが面倒くさそうにたずねる。


用なんて・・・別にないけど・・・

そうだ、コウちゃんとの約束を果たしにきたんだった。

でも、どうしたらいいんだろう?


言うべき言葉に悩むと見も蓋もないことしか言えない、という私の悪い癖が出た。


「・・・抱かれにきました」


後ろから統矢さんを抱きしめる。

他に言い方があるだろう、と自分で突っ込んだが口から出た言葉は引っ込められない。




どれくらいそうしていただろう。

一瞬のような、永遠のような・・・

やがて統矢さんは、自分の胸に回された私の手をそっと外して、前を向いたまま言った。


「ダメだ」

「・・・」

「お前は組長の女だ。親父が面白半分で抱いている内はよかったが、今はもう俺が手を出しちゃいけない」

「・・・」

「出て行け」




自分の部屋に戻ると、大輔がドアの前で待っていた。


「ユウ、ちょっと犯人のことで聞きたいことが・・・どうした?」


何が?


「そんな顔して。何かあったのか?」


どんな顔だよ。

俯いたまま、大輔を無視して部屋に入った。


「おい、待てって!」


ドアが閉まる前に大輔が部屋の中に滑り込んだ。



バタン!!



ドアが閉まった瞬間、私は号泣した。




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