第2部 第26話
「お前はアホか」
「・・・すみません、離れに入っちゃいけないって知らなくて」
呆れ顔の組長の前でコウちゃんがうなだれる。
「あ、あの、でもコウちゃんのお陰で、私もう大丈夫ですから」
「それなら、まあいいが・・・。コータ、気をつけろよ。今回はショック療法とでもいうか、
丸く収まったが、普通はこういう場合は悪化するからな」
「はい・・・」
うーん、ってことは私は「普通」ではないってことか?
何はともあれ、私が帰ってきて興奮したコウちゃんのキスという荒治療(?)のお陰で、
私はなんだかすっかり調子を取り戻した。
「コータ、お前はもういい、戻れ」
「はい」
コウちゃんが出て行った後、二人きりになった。
組長は私の手を引き抱きしめる。
「・・・本当にもう大丈夫なのか?」
「はい、ご心配をおかけしました。あ、でももう少し待ってください。血液検査の結果がでないと・・・」
「ふっ、そういうことを心配してるんじゃない。純粋にお前を心配してるんだ」
「あ、すみません・・・」
そういうことか。
私ってば何を勝手にエロい勘違いをしてるのか。。。
思わず顔が赤くなる。
「服を脱げ。身体を見せてみろ」
その言葉に私は固まった。
恥ずかしいとか、まだ怖いとか、そうじゃない。
単純に身体を見せたくないだけだ。
でも私は諦めて服を脱いだ。
私の裸をみて組長が目を見張る。
「・・・ひどいな」
そう。ひどいのだ。
殴られた跡、噛まれた跡、引っ掛かれた跡・・・
ご丁寧にタバコを押し付けた跡まである。
「跡が残るかもしれんな」
「そうですね・・・」
組長がそっとタバコの火傷の跡をなでる。
いつもと変わらない落ち着いた顔をしているけど、
その瞳の奥に怒りの炎が見えた気がした。
「やった奴らのことは覚えてないのか?」
「すみません、暗かったから顔もよくわからなくて」
「お前が廣野組の女だと知ってのことか?」
「・・・違うと思います。本当にただ運悪く変な奴らに絡まれただけです」
「そうか」
「あの、本当にもう大丈夫です。犬に噛まれたと思って忘れます。だから・・・」
「犯人を放っておけというのか?それは俺が許さん」
まさかコウちゃんの同級生がやらせた、とは言えない。
「で、でも何の手がかりもないし探しようがないんじゃないですか?」
「そんなことはない」
組長がニッと笑う。
そう、総勢数百名とも言われる廣野組の力を持ってすれば、探せなくはないだろう。
でも私がわからないと言い張れば、真実はわからないまま終わるはずだ。
そう思ってた。
しかし。
真実は思わぬところから明るみに出た。
ほんと、「思わぬところ」からだった。
まさか、犯人の方からノコノコ出てくるとは。
せっかく黙っててやろうと思ってたのに、勘弁してくれ。




