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最弱骨少女は進化したい! ――強くなれるならゾンビでもかじる!――  作者: kimimaro
第三章 はるか下を目指して!
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第四十五話 やっぱり時代は魔法ね!

「信じられない! おいしいわッ!!」


 あまりのことに、驚きを隠せない。

 かじりついたゴーストの腕は、信じがたいことに甘かった。

 プリンに、生クリームと練乳をたーっぷりと掛けたぐらいの感じだ。

 それでいて、胸焼けするようなしつこさはなく上品。

 後味はちょっと爽やかですらある。

 ゼリー状の身体が意外と硬くてなかなか噛み切れないのが欠点だけど、全体としてかなりの美味だ。

 これは――もっともっと食べるしかないッ!!


『シ、シース!? 眼が怖いのですよ!?』

「ふ、私はこいつらを主食にすることに決めたわ! こら、もっとよこしなさいッ!!」

「ウオ、ウオオオッ!!」


 私がもっと吸い込んでやろうと抱き着くと、ゴーストは非実体化して腕をすり抜けて行ってしまった。

 他のゴーストたちも私から一斉に距離を取ってしまう。

 さっきまで私を取り殺そうとしていたくせに、ヘタレな連中だわッ!!

 まったく、かかってきなさいよ!

 クイクイッと、人差し指を曲げて挑発する。


「フオオッ!!」

「げッ! 魔法ッ!?」


 ゴーストたちの手のひらに、次々と光球が産まれた。

 肉弾戦じゃなくて、魔法でかかってくるの!?

 とっさに剣を構え直すと、四方八方から飛来する光球を何とか弾いていく。


『こんなに撃たれたんじゃ、防ぎきれないのですよ!』

「分かってる!」

『魔法で反撃するのです! それしかないのです!』

「だから、中級以上は使えないんだってば!」

『ええっと、だったら……二重発動をすればいいのですよッ!!』

「無理! そんな器用なことできないッ!! 私ってほとんど魔法の技術はないんだから!」


 私がそう言った途端、精霊さんから驚きの声が上がった。

 よっぽど、意外な事実だったらしい。


『そ、そんな!? だってシース、魔法剣を使えるじゃないですか! あれって、上級魔法並の高等技術なのですよ!? そんな魔法初心者がやるものじゃないのです!』

「そうなの? でも、使えないものは使えないのッ!!」

『じゃあ、どうするのですか! この魔法の嵐を!』


 途切れることなく放たれる光球。

 一つ一つの威力は大したことないけど、これでは全くゴーストたちとの距離が詰められない。

 こうなったら、被弾覚悟で突撃するか?

 だけど、それをしたところで相手は非実体化が出来る。

 斬りかかったところで、上手くすり抜けられてしまうのが関の山だろう。

 食べるという手もあるけど、そちらも同様に逃げられちゃう。

 まとめて一撃でやるしかない、ちまちましてたらこっちが魔法でやられるわ!

 ならば――


「しょうがない、やるわよ!」

『ま、まさか!? そんな溜めた状態で魔法剣を撃ったら、あの時みたいに――』

「狼牙…………爆砕剣ッ!!」


 剣を高く構え、高めた炎の魔力を一気に流し込む。

 光の剣身が長く伸び、空気が灼けた。

 そのまま突きの体勢へと移行すると、ゴーストたちの魔法に構うことなく前に踏み出す。

 ドンッと地面が揺れた。

 神速を持って放たれた切っ先は、ゴーストたちの身体を貫き、その魔力でもって粉砕する。


「とりゃああああァ!!!!」


 とにかく走るッ!!

 叫びながら、ただひたすらにッ!!

 この技は、消費が激しすぎて今の私でも使ったらしばらくは動けなくなる。

 だからそれまでに、倒し切れてない他のゴーストたちの眼が届かなさそうな場所まで、走り切らないといけない!

 遠くへ、目立たない場所へ!!


 やがて体力が尽きる寸前のところで、大きな切り株を見つけた。

 木こりが造ったものではなく、古木が倒れて自然に出来たものだろう。

 しめた、この陰なら目立たない!

 私はすぐさまその後ろに回り込むと、崩れるように座り込む。


「ふう……ふう……。なんとか、なったわね……」

『まったく、無茶し過ぎなのですよー! あの魔法剣の消費の激しさは、シースが一番良く知ってるでしょう!? もうちょっと抑えられなかったのですか!』

「しょうがないでしょ……。だって、あいつらを倒せそうなのってあれぐらいしかなかったし」

『それでも、危険すぎたのです! だいたい、何ですかあの叫び! いつの間に、あんな技名をつけてたのですか!?』

「まあ、暇なときにちょっと。せっかくの大技なんだし、何かないとね」

『はあ……』


 すっかり呆れた様子の精霊さん。

 剣から、軽くどよーんとした雰囲気が漂ってくる。

 だって、ねえ?

 必殺技に名前を付けないなんて、必殺技に対する冒涜だと思う。

 技名を叫ぶのって、人類共通のロマンのはずだわ!

 あ、そっか。

 こいつ精霊だからそれが分からないのか……。


『……むむ、変な哀れみを感じるのです!』

「そ、そんなことないわよ! ……しかし、これからどうしたものかしらね。ゴースト食べたいけど、さすがに毎回この技で切り抜けるわけにも行かないわ。かといって、普通の技だけだとやられるかもしれないし……」

『それだったら、魔法を覚えればいいのですよ。魔力は結構ありますし』

「簡単に言ってくれるわねえ……」


 軽ーい調子の精霊さんに、思わずため息が漏れる。

 そんな簡単に魔法が覚えられるなら、世の中は魔法使いでいっぱいよ!

 魔力がたくさんあることはもちろん、しっかりと練習して初めて魔法は使えるのだ。

 そうそう簡単に、使いこなせてたまるかっつーの!


「あのね、才能があるだけじゃダメなのよ。練習もしなきゃ」

『だったら、するといいのですよ』

「……するといいってさ。誰が教えて――あッ!!」


 そうだ!

 最近、お荷物にしかなってないからすっかり忘れてたけど……!


『そうですよー! 僕が魔法を、教えてあげるのですッ!!』


 精霊さんの誇らしげな念が、この時ばかりは頼もしかった――。


先日のあとがきに対するご意見、ありがとうございます!

悪役令嬢の登場は、もう少し先にした方がよさそうですね。

閑話はダンジョン脱出したころをめどにします!

これからも応援、よろしくお願いいたします!

評価・感想など頂けるととてもうれしいです。


※指摘のあった個所をいくらか修正。

プロットを見落としていました、申し訳ありません。

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