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世界征服を企むニャンコ  作者: 続けて 次郎


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9/13

第九話:深夜三時は、神の時間である

 深夜三時。

 この時間帯は、世界の防御力が最も低下する。


 人間は眠り、物音は減り、家はただの箱になる。

 だが俺は起きている。

 正確に言えば、目覚めてしまう。


 理由は分からない。

 空腹でもなく、不安でもない。

 ただ、内側から「今だ」と囁く声がする。


 それは神の声だ。

 少なくとも俺は、そう解釈している。


 俺はゆっくりと立ち上がり、闇の中を歩く。

 肉球は音を立てない。

 文明が滅びる時も、だいたいこんな静けさなのだろう。


 リビングの時計が、赤い数字で「3:00」を示している。

 あの光は、監視装置だ。

 だがこの時間帯、監視する者はいない。


 俺はソファに跳び、背もたれを伝って窓辺へ向かう。

 夜の外は、黒い水槽みたいだった。街灯が点々と浮かび、すべてが夢の底に沈んでいる。


 この時間、世界は誰のものでもない。

 だからこそ、奪える。


 俺はカーテンを叩いた。

 軽い音。

 意味はない。

 だが儀式には、意味など必要ない。


 次に、棚の上の小物を見つめる。

 落とすか?

 いや、まだ早い。


 破壊は、支配の最終段階だ。


 俺は床に降り、廊下を進む。

 扉の向こうで、人間が眠っている。

 規則正しい呼吸。

 無防備な王だ。


 俺はドアの前に座り、しばらく考える。

 起こすことは簡単だ。

 だが起こしてしまえば、この時間は終わる。


 深夜三時は、短い。

 神の時間は、長居しない。


 だから俺は、起こさない。

 代わりに、ドアの前で静かに座る。


 この家で起きている唯一の意識として。


 それだけで十分だ。

 支配とは、誰が起きているかを決めることだから。


 やがて、まぶたが重くなる。

 神の声は遠のき、世界が再び、誰かのものになっていく。


 俺はその場に丸くなり、眠りに落ちた。

 朝になれば、人間は言うだろう。


「なんでこんなとこで寝てるの?」


 違う。

 俺はそこに、世界の中心を置いただけだ。


 深夜三時、世界は確かに俺のものだった。

 誰も気付かなくても、

 それは事実である。

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