紛糾議会
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陛下の執務室に静寂が横たわった。
俺が西の森で体験した一部始終を報告し終えると皆一様に同じ反応を見せた。
無理もない。
体験した俺ですら、アレは夢だったのではないかと思う程の出来事だ。
長い沈黙の後、それを破ったのは父だった。
「ほ、本当なのか?本当に契約者が召喚されていたのか?」
「恐らくは、本物かと…。私の目の前で巨大な狼が獣人となり、跪いておりました」
宰相である父にとっては、鬼が洗脳されていた話よりも
契約者の不正召喚の方が衝撃的だったようだ。
「契約者の不正召喚に鬼の洗脳…まさかとは思うが…いや、あり得ない話ではないのか…」
陛下は何やら思い当たる節があるのか、思案顔でブツブツと何か呟いている。
「ダレル、今回の事を知る者は?」
「本日森へ同行していた者達と副団長のコリンのみです。同行した者達へは箝口令を敷いてあります」
いずれは知られることになるとは言え
無駄に噂を先行させて、混乱を招くようなことはするべきではないからな。
兄の質問に答えると、兄はそうか、と頷いた。
「何にせよ、明日の議会は大荒れだろうな。ノービス、神官殿を緊急招集してくれ。アンソニー、明日の議会までに報告書をまとめておいてくれ。ダレルは明日の議会での証言を頼んだぞ」
「「「かしこまりました」」」
陛下は命を下すと、頭を抱え深い溜息を吐いた。
そして翌日の議会場。
いつもはいない神官が招集されているのを見て、会場はざわついていた。
当の神官も詳しく説明されていないのか
不満と困惑が混じったような顔をしていた。
陛下の入場が告げられると、皆立ち上がり、上座に向かい頭を垂れる。
陛下が着席したことを見届けると一同も着席し、王の言葉を待った。
「皆、本日もよく集まってくれた。いつもと違い、神官殿が出席していることに疑問を感じている者もいるだろう。この件については後程説明する。まずは、通常通り議会を始めよう」
陛下は紛糾を見越して釘を刺し、先に片付けるべき案件を処理するようだ。
その後は滞りなく議会が進み、いよいよ俺達兄弟の出番。
陛下に話を振られ立ち上がった。
「では最後に、先日西の森にて出現したと情報のあった、鬼についての報告を致します」
そうして、兄がまとめた報告書を読み上げ
俺が実際にこの目で見たことを証言した。
案の定、しばし横たわる静寂。そして紛糾。
執務室の時と違うのは、重要参考人である神官がいること。
当代神官 ランドル・セウチア
契約者の直系子孫である彼は、契約者、そして鬼と同じ双黒の持ち主。
俺達兄弟とは幼馴染みで、幼少期こそ純朴な少年だったが
双黒=鬼のイメージが定着してしまってから生まれたため
周囲からは冷遇され、純朴な少年がひねくれてしまうには十分な環境で育った。
そのせいか、性格に少々難を抱えている。
「っっじゃっかぁしいわボケェ!!黙って聞いてりゃギャーギャー好き勝手言いよってからに!俺がやった証拠でもあるんか!あ"ぁ!?」
それと、言葉使いが少々特殊だ。
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