苦い報告
所変わって、ここはベルマーノ王国。通称「神聖国」
西の森での任務を終えた討伐隊が帰城した。
城に戻ってきた。
事の次第を陛下に報告しなければならない。
謁見の申し入れをし、同行していた者達に西の森での出来事に関して
箝口令を敷きその場は解散となった。
申請が通るまでの時間、留守にしていた間の報告を受けるべく
副団長のコリンを探し出し、共に騎士団の執務室へ向かう。
扉を開け中に入れば、そこにはいつも自分が使っている机や調度品が並んでいる。
ここを空けたのはほんの1週間程。
しかし中に入った時、酷く久しぶりに帰ってきた心持ちにさせられた。
恐らくは先程までの信じがたい体験がそうさせているのだろう。
鎧を脱ぎ執務机の椅子に座ると、ようやく人心地つけた。
頭を抱え深く溜め息を吐いた俺を見て
コーヒーを入れていたコリンが神妙な顔で尋ねてきた。
「で、何があったんです?団長のそんな深い溜息、久しぶりに聞きましたよ」
「あぁ・・・実はな・・・」
他の者には口外無用と言ったが、これから共に議会に出席しなければならない。
コリンには共有しておく必要がある。俺は西の森で起きた一部始終を伝えた。
「う、嘘でしょう…そんな事って…」
さすがにコリンも言葉を失っていた。
だが、そんな冗談にしても笑えないような嘘を俺がつくはずもないし
つくメリットもないと分かっている。
「…これは、明日の議会は紛糾すること間違いなしですね」
「あぁ、今から気が重い。あの石頭の老害共が素直に納得するとは思えんからな」
「団長…口が悪いですよ」
アカデミーの同期で付き合いの長いコリンと2人だと、少々気が抜けるのだ。
コリンは苦笑いすると、コーヒーを一口飲み表情と口調を改めた。
「ですが、そうなると今までの前提が覆ります。鬼が自分の意志で動いていたわけではなかったということは、鬼を洗脳し操っていた黒幕がいるってことですよね」
「そうだ。…つまり、俺達が今まで葬ってきた鬼達は皆、半分は被害者ということになる」
確かに今まで鬼が人を傷付け殺してしてきたのは紛れもない事実だし
本人達の意志ではなかったとしても、許せるものではない。
あの契約者は、洗脳が解ければ鬼は話が通じると
言っていたが、それも本当かは分からない。
だがもしそれらが真実で、自分が鬼の立場だったとしたら
とてもではないが今の状態は納得できるものではない。
「とにかく、明日の議会の相談も含め、今から陛下に報告をしてくる」
「分かりました。いってらっしゃい」
俺は自分の執務室を出ると、そのまま国王陛下の執務室へ向かった。
帰城した際、謁見の申し入れをし受理されていたので、すんなりと通される。
部屋に入ると、中にいた主要人物達の視線が一斉に向けられた。
ベルマーノ王国国王 ヨハネス・マーニャ・ベルマーノ
宰相 ノービス・バートン
宰相補佐 アンソニー・バートン
宰相であるノービスは、バートン公爵家の長。俺の父だ。
加えてその補佐であるアンソニーは公爵家長男。俺の兄だ。
そして国王、ヨハネス陛下は父の兄。つまりは俺の叔父だ。
「おぉ、ダレル!戻ったか!無事で何より。待っていたぞ」
気さくに声を掛けてくれる叔父に対しても、今日は苦々しい顔しか
見せられない事を少々心苦しく思いながらも、俺は報告を始めるのだった。
ここまでお読み頂きありがとうございました。
この話よりしばらくはダレル視点で神聖国内の状況のお話になります。
次回更新は10日、木曜日を予定しております。
よろしくお願い致しますm(_ _)m




