鬼の事情
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「そうだったか…。すまない、世話になった」
私の説明を聞き終わると、鬼はそう言って少し考え込んでいた。
「すると、今まで神隠しに襲われた者達は皆・・・」
何やらブツブツと呟いていたが、私の視線に気付くとポツポツと話をしてくれた。
彼の名前は辰。正真正銘の鬼だ。
タツが元いた世界は、鬼や妖怪、物の怪や土地神などが住まう
妖の世界だったそう。
その世界である時から、急に鬼が消失するという怪奇現象が起こり始めた。
妖の世界で怪奇現象とはこれ如何にと思わんでもないが
なんでも足元に突如魔法陣が現れ、光に包まれ姿が消えてしまうのだとか。
それを彼の世界では「神隠し」と呼び、回避不可能な怪奇現象として
恐れられていたらしい。
しかしなぜか神隠しに合うのは決まって鬼で、いつ、何時起こるか
分からない怪異に戦々恐々としていたそうだ。
そしてあの日、タツは自分が神隠しに襲われた事を悟った。
「気が付くと、俺は森の中に倒れていた。体は普通に動かせたから、少し歩き回ってみたんだ。すると1匹の鹿に遭遇した。その鹿が動いたのを見て、なぜか『斬らなければ』と思っていた。あの男やお前に対しても、そうだ。動いているのを確認した時『斬って息の根を止めなければ』という考えに支配され、それを疑問に思うことすらなかったんだ」
そこまで話すと、タツは一休みするように深い溜め息を吐いた。
「なるほど。きっとその『動いているのものを斬り殺す』というのがタツにかけられた洗脳だったんだね」
「あぁ。今は動いているお前達を見てもなんともないからな・・・。カオリ、といったか。助けてくれたこと、心から礼を言う」
「いいよそんなの。気にしないで。私が放っとけなかっただけだから」
・・・・・日本刀が欲しいという下心があったなんて、口が裂けても言えない。
深々と頭を下げ、感謝を述べるタツを見て、罪悪感でちょっぴり胸が痛んだ。
「それから1つ聞いておきたいのだが・・・今まで神隠しに襲われた同士達もこの世界に来ているのだろうか?だとしたら、その行方を見たり聞いたりしてはいないか?」
「それは・・・」
私が言い淀むと部屋のドアをノックする音が。
ドアを開けると念話で話を聞いていた4人が立っていたので
部屋に招き入れ、全員を紹介した。
「この2人がタツの洗脳を解いてくれたんだ。こう見えて2人とも神様なんだよ」
「こう見えては余計よ」
ヴェールがちょっとむくれた。
「神?…そうか、確かに。というか、カオリもそうだし、ここにいる者は皆、人間ではないのだな」
「あ、うん。そうだよ。見ただけで分かるんだ?」
「まぁ、俺も人間ではないからな。感覚的なものだから、上手く言葉にはできんが…」
「そりゃそうだろうな。んで、お前が知りたがっている他の鬼についてだが、ワリィが殺されてる。1人残らずな」
言いにくい事をヴィータがサラッとカミングアウトした。
「・・・やはりそうか。きっと、洗脳されていたのは俺だけではないだろうとは思っていたが、あんな思考に支配され行動していれば、この世界の人間とて黙ってやられるだけではないだろうからな。覚悟はしていたが・・・」
さすがにショックを受けていた。そりゃそうだよね…。
なんて声をかけたらいいか迷っているとヴェールが助け舟を出してくれた。
「今回、私達があなたの出現に気付けたのは奇跡みたいなものよ。それに多分、私達じゃなかったら洗脳されていることも見抜けなかったわ。酷な頼みだと思うけど、この世界の人間を恨まないであげてね」
「あぁ、分かっている。人間達は己の身を守ろうとしただけだ」
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