狼一頭 いや、三頭
あの時代劇の主人公の名前は「狼一頭」をもじったものだそうです。
私の雄叫びに、周囲にいたらしき鳥達が一斉に逃げていった。
ケモ耳キッズも驚いてわちゃわちゃしている。
「どうしたの主様!大変な事?」
「主さま、たいへん?」
「たいへん?たいへん?」
焦りまくっている私を尻目にヴェールとヴィータは
「え?」みたいな顔をしていた。
「いやいやいや!言ってたじゃん!」
「「んん〜?・・・・・・あ!あぁー!」」
「そういや言ったな、そんな事。わりぃわりぃ、あの言い方じゃそうなるよな」
「ごめんなさいね。感覚の違いを特に考えずに説明しちゃったから、誤解させちゃったみたいね」
きっと今は私が「え?」みたいな顔をしていることだろう。
「人間の感覚じゃ『成長』と『老化』ってのは別物なんだろ?」
「そりゃ違うよ。ハッキリとした定義は分からないけど、肉体と精神が大人になるまでが『成長』で、そこから衰退していくのが『老化』っていうイメージかな」
「私達からしてみたらどちらも同じなのよ。生まれてから死へ向かって時間を重ねる。その感覚の中に区別するものはないわ」
「つまりだ、あの時俺達は自分等の感覚で『年は取らない』って言っちまったが、正確に言えば『成長』はするが『老化』はしないってコトだ」
「カオリ自身がその状態でしょ?今のカオリは成長しきったベストな状態で、そこから衰退することがない。ね?同じでしょ?」
「そっかぁ~。じゃぁ、この子達はちゃんと大人になれるんだね」
「あぁ。ただ、この状況は少し例外でな」
「本来従魔になった動物は食事の必要がなくなるのだけど、育てる場合は食べさせる必要があるのよ」
「なるほど。それじゃ、しっかり食べさせてあげなきゃね」
成長できるとの話にホッと一安心。
一瞬、手作りの木製ベビーカーに子どもを乗せた侍の姿がよぎった。
「連れ子狼」の爆誕を予感させたがしとぴっちゃんとはならずに済んだ。
「ちゃんとした食事をするためには・・・まず、拠点だ!」
「拠点?連れて行くんじゃダメなのか?」
「うーん、1人ならなんとかなったかもしれないけど、さすがに3人はキツい」
子どもって外でちょっと目を離すとすぐどっか行っちゃうし、ゲスな輩は誘拐や略奪の際真っ先に子どもを狙う。
召喚という手段があるとはいえ、獣人だからこそ安全で健やかに育てるためには連れて歩くよりも、ある程度の時期まで森の中に拠点を構え、自分達の縄張りを持たせる方がいいような気がしたのだ。
適度に街や街道に近い所に居を構えれば
人間の気配や存在に慣れることもできるだろうし、食料を調達しなければならないのであれば尚の事、街には近い方がいい。
しかし成長してしまえば、次に必要になるのは身を護るために戦う力。
森の中で結界を張らなければ、高確率で魔獣と遭遇する。
戦い方を教えつつ成長を見守ることもできる。
うん。やっぱり人里に近い森の中がベストだな。そうと決まれば…
「よし、じゃぁまずは君達に名前を付けよう」
「「「わーい!」」」
何がいいかと考える。
狼3頭・・・大五r・・・いやいや、それはダメだ。
1人をそれにしてしまったら、後の2人が「俺」と「お前」になりかねない。
くだらない雑念が頭をグルグルした。
しっかりしろ!落ち着け私!
改めてよく考える。
確か・・・北欧神話に狼の3兄弟がでてきたよな。
名前は・・・えーっと、フェンリル、ヨルムンガンド、ヘルだったっけ?
…長いな。縮めよう。
・・・よし!決めた!
ここまでお読み頂きありがとうございました。
お分かりいただけただろうか?
名付けのくだり、時代劇から焼酎のCMソングの話にすり替わっていることを…
次回更新は22日木曜日を予定しております。
よろしくお願いします。m(_ _)m




