アーサーとシンシア
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アーサーが異常であるというタツの言葉に皆困惑した。
タツは説明を続ける。
「アーサーには女の霊が憑いているんだ。カオリが元いた世界なら、コレは何ら珍しいことではない。だが、この世界のシステム上、霊という存在自体が極稀なものになるのであれば、彼女があの状態でアーサーに憑いているのは、相当な理由があるはずだ」
「待ってくれ。仮に今の話が本当だとして、その女のレイ?がアーサーの家族とどう関係してくるんだ?」
そうだった。
元々はタツがアーサーを見て「家族をなくしている」
と発言したことが、今回話をすることになったきっかけだ。
「シンシア」
「!!!」
「彼女はシンシアと名乗っていた。…アーサーの女房だったんじゃないか?」
「それは・・・」
「それに…どうやら、腹にアーサーの子がいたようだ」
「な、何だと!?そんな話、アーサーは何も…当時、俺は任務で東部に出向いていて、彼女が亡くなる数日前に会っているが、その時にもシンシアの腹には何ら代わり映えはなかったし、本人も何も言ってなかった」
「初期だったんじゃない?妊娠したからって、いきなりお腹が大きくなるわけじゃないからね。私が元いた世界では、初期の頃は不安定で何があるかわからないから、安定期に入るまで公表しない夫婦も多かったよ?…ねぇ、シンシアさんはどうして亡くなったの?」
「・・・あぁ。数年前、かなり大規模な魔獣のスタンピードが起こったんだ。それに巻き込まれてな…」
元々、アーサーとシンシアは幼い頃から仲の良い幼馴染みで
両親とも交流があり、家族ぐるみの付き合いだったそうだ。
その関係性は、本人たちが成長してもさほど変わらず
2人は当然のように結婚を意識するようになった。
親同士ももちろん賛成。
トントン拍子で話は進み、2人は家族になった。
結婚をしたことで気合が入ったアーサーは
魔術師団で出世し、団長に昇格した。
「当時まだ団長に就任したばかりだったアーサーは、仕事場の近くに居を構えようと、それまで住んでいた東部から、王都に引っ越すことにしたんだ。それまでは城に泊まり込みで、自宅に帰れるのは月に2回程度だったからな。新婚夫婦には酷な話だろ?新居も決まり、2人で新しい家に移り住む日を心待ちにしていた。そんな矢先に東部でスタンピードが起こった。城に詰めていたアーサーは、知らせを聞いてすぐに救助に向かったが、間に合わなかった…。シンシアは巻き込まれそのまま…。そこからだ。アーサーが今の状態になってしまったのは…」
そうだったのか…。
あのチャラいキャラは元々のものではなく
現実逃避のためだったんだ。
シンシアさんが亡くなったことを受け入れられず
現実に蓋をして、心の隙間を埋めようとしているんだ。
訓練場でケイトが悲しそうな顔をしながら
「アレが本来の団長です」と言っていたのは
当然ながら、ケイトもその背景を知っていたからだ。
「なるほど…そういうことだったのか」
「ねぇ、タツはシンシアさんと話せるの?」
先程、訓練場でアーサーを見つめながら
時折頷いているように見えた。
だから、もしかしたら会話ができているのではないか
と思ったのだ。
「いや、会話が成立していた訳ではないが、彼女が訴えたいことは十分に伝わってきた」
「シンシアは何と?」
「まず、先程も言ったように、腹に子がいたことだが、どうやらアーサーには伝えていなかったようだ」
「え!?なんで!?」
「・・・直接伝えたいと、連絡をしなかったのが仇になったと言っていた」
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