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第98話 二日酔いの天然先生

 ある日の朝。



 僕はいつもの様に、電車に乗って通学していた。


 学校前の駅に着いたので、電車から降りると。


 多量の学生服、セーラー服を着た人波の中に、ストレートロングにヘアバンドをしていて。

眼鏡を掛けたタレ目の顔と、コートにタイトスカート姿の、良く見た姿が見えた。


 川尻先生である。


 しかし、先生は少し乱れた髪に、やつれた顔で、ヘロヘロになって歩いていた。


 でも先生は、自動車で通勤してたんじゃ、無かったっけ?



 「先生、川尻先生」



 僕は、そんな先生に声を掛けた。



 「・・・ん、あ、あーちゃんか・・・」



 死にそうな声で、そう答えた先生。



 「どうしたんですか?」


 「ん・・・、昨日ね、忘年会で飲み過ぎちゃってね」


 「二日酔いですか」


 「・・・そう」


 「それで、電車で来てたんですね」


 「・・・うん、二日酔いでも、飲酒運転になるから」



 ああ、ナルホド、そう言う訳で電車で来てたのか。



 「大丈夫なんですか?」


 「・・・二日酔いの薬を飲んだから、もうしばらくしたら良くなると思う」



 死にそうな顔と声で、そう答える先生。



 「・・・ねえ、あーちゃん、一緒に行きましょうか」


 「あ、はい」



 力無い声で僕にそう誘うと、僕もそれに答えた。


 少し、心配になったから、一緒に付いて行った方が良いかな。



 ***************



 駅から出て、一緒に通学路を先生と歩いたが。


 先生は、辛そうに下を向いて歩いていた。



 「先生、本当に大丈夫ですか?」


 「・・・」



 とうやら、(しゃべ)る気力も無い様だ。


 心配になって、立ち止まるが、しかし。



 「・・・お願い、立ち止まらないで。

余計、キツくなるから、歩いて頂戴(ちょうだい)・・・」



 そう言いながら、先生が歩き続けた。


 仕方が無いので、僕もまた歩き始める。



 ***************



 しばらく歩いていると、先生がイキナリ。



 「・・・あーちゃん、ごめんなさい」



 謝ったかと思ったら、後ろから僕に抱き付いて来た。


 カバンを僕の前に持っていくと、腕を僕の前で組み。

そうして、僕の肩に額を乗せて歩いた。



 「はあ〜、楽になったわ〜。

ごめんね、学校までこのまま運んでね♡」



 そう言いながら、僕に体重を掛けて来る先生。


 そうされると、僕は余計に歩きにくくなる。


 ふと、周囲を見渡すと、みんな、何とも言えない表情でこちらを見ている。


 そりやあ、女教師が朝っぱらから、男子生徒の背中に抱き付きながら引きずられると言う、光景を見ればねえ。


 もう一度、周囲を見ると、今度は明らかにドン引きした表情で、こちらに見ていた。


 こうして、僕らは、周囲の好奇の目に晒されながら、学校への道を急いだのである。



ハートマークは、携帯では出ないんですねorz

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不思議な先輩女子と、平凡な後輩男子との不思議な話。
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