第98話 二日酔いの天然先生
ある日の朝。
僕はいつもの様に、電車に乗って通学していた。
学校前の駅に着いたので、電車から降りると。
多量の学生服、セーラー服を着た人波の中に、ストレートロングにヘアバンドをしていて。
眼鏡を掛けたタレ目の顔と、コートにタイトスカート姿の、良く見た姿が見えた。
川尻先生である。
しかし、先生は少し乱れた髪に、やつれた顔で、ヘロヘロになって歩いていた。
でも先生は、自動車で通勤してたんじゃ、無かったっけ?
「先生、川尻先生」
僕は、そんな先生に声を掛けた。
「・・・ん、あ、あーちゃんか・・・」
死にそうな声で、そう答えた先生。
「どうしたんですか?」
「ん・・・、昨日ね、忘年会で飲み過ぎちゃってね」
「二日酔いですか」
「・・・そう」
「それで、電車で来てたんですね」
「・・・うん、二日酔いでも、飲酒運転になるから」
ああ、ナルホド、そう言う訳で電車で来てたのか。
「大丈夫なんですか?」
「・・・二日酔いの薬を飲んだから、もうしばらくしたら良くなると思う」
死にそうな顔と声で、そう答える先生。
「・・・ねえ、あーちゃん、一緒に行きましょうか」
「あ、はい」
力無い声で僕にそう誘うと、僕もそれに答えた。
少し、心配になったから、一緒に付いて行った方が良いかな。
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駅から出て、一緒に通学路を先生と歩いたが。
先生は、辛そうに下を向いて歩いていた。
「先生、本当に大丈夫ですか?」
「・・・」
とうやら、喋る気力も無い様だ。
心配になって、立ち止まるが、しかし。
「・・・お願い、立ち止まらないで。
余計、キツくなるから、歩いて頂戴・・・」
そう言いながら、先生が歩き続けた。
仕方が無いので、僕もまた歩き始める。
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しばらく歩いていると、先生がイキナリ。
「・・・あーちゃん、ごめんなさい」
謝ったかと思ったら、後ろから僕に抱き付いて来た。
カバンを僕の前に持っていくと、腕を僕の前で組み。
そうして、僕の肩に額を乗せて歩いた。
「はあ〜、楽になったわ〜。
ごめんね、学校までこのまま運んでね♡」
そう言いながら、僕に体重を掛けて来る先生。
そうされると、僕は余計に歩きにくくなる。
ふと、周囲を見渡すと、みんな、何とも言えない表情でこちらを見ている。
そりやあ、女教師が朝っぱらから、男子生徒の背中に抱き付きながら引きずられると言う、光景を見ればねえ。
もう一度、周囲を見ると、今度は明らかにドン引きした表情で、こちらに見ていた。
こうして、僕らは、周囲の好奇の目に晒されながら、学校への道を急いだのである。
ハートマークは、携帯では出ないんですねorz




