第93話 夢の中で1
何か、上手く出来ませんでした。
・・・・・・
「・・・ちゃん」
「・・・あーちゃん」
んっ・・・。
あれ、誰だろう? 僕を呼ぶのは。
頬も優しく撫でられているし。
目を開けてみると、目の前には恵先輩がいた。
自分の周りを見ると、僕は何故か、とてつも無く大きなベッドの上に寝ている。
先輩はと言うと、僕の傍らにいて、白のヒラヒラしたドレスを着ており。
髪もいつものポニーテールではなく、下に下ろしていた。
「あーちゃん、起きた?」
先輩がそう言うと、ニッコリと笑う。
その様子はいつもとは違い、色っぽい。
「あれ、ここはドコですか?」
「それはね、ひ・み・つ」
”ふふふっ”と笑いながら、僕の胸板を撫でる先輩。
何故か、夏のカッターを着ている僕の胸を、微妙なタッチで撫でると、体にむず痒い様な、気持ち良い様な感覚が走る。
僕がその感触に、戸惑っていると、急に先輩の顔が近づき、そして、唇が塞がれた。
「!」
しばらくの間、先輩に唇を塞がれると、それから、ゆっくりと放されてゆく。
「ねえ、もっと良い事をしない、あーちゃん」
僕の目を見詰めながら、そんな事を言う先輩。
それから、手を伸ばし、僕のズボンのベルトに手を掛けた。
せ、先輩、一体、何をしようとしてるんですか。
ベルトが”カチャカチャ”と音を立てている。
先輩、止めて下さい・・・。
・・・・・・
・・・・・・
「・・・ちゃん」
「・・・あーちゃん」
んっ・・・。
その声に、気付き目を開けると。
「あーちゃん、起きた?」
目の前には、いつも通りのポニーテールに結われた、先輩の姿があった。
僕はしばらく、寝起きの状態でボンヤリしていたが。
段々、意識が覚醒してゆくと、先ほど見ていた夢を思い出した。
「そんな所で寝ていると、風邪をひくよ。
って、どうしたの、顔が赤くなっているよ」
そう言いながら、先輩が顔を近づける。
夢の事を思い出すと、僕は思わず、後ずさりした。
「せ、先輩、何を!」
「何って、熱を測ろうとしただけよ?」
「別に、額じゃなくても手でもいいんじゃないですか」
「? 変な、あーちゃん」
その後しばらく、先輩を見ると、夢の事を思い出して意識してしまうのだった。




