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第84話 居眠りあーちゃん

 ある日の放課後。


 ・・・・・・


 ・・・ん、何だろう、とても柔らかいクッションの上に寝ている。


 それに、このクッションは良い匂いがするし。


 その滑らかな肌触りに、思わず頬ずりをすると、クッションからビクッとした振動がした。


 それで驚いて止めると、今度は、急に僕の頭に手が乗せられ、そして、頭を撫で始める。


 その手は、髪を(くしけず)る様にして、髪を指の間に滑らせながら、

頭を撫でるように動いた。


 その手の優しさと、クッションの柔らかさが気持ち良くて、僕は微睡(まどろ)みの海に沈んでいった・・・。


 ・・・・・・



 ****************



 ・・・・・・



 「・・・うん」



 しばらくして、意識が浮上して来たので、目を開いてみると。

横向きで寝ていた目の前には、襞が付いた黒い布地と、その先には肌色の物体が二つあった。



 「あれ、あーちゃん、起きた(おはよ♪)」



 耳の方から声が聞こえたので、脚を床に投げ出した状態から、長椅子の上に脚を乗せて頭を上に向けると、僕を覗き込む、のどか先輩の顔が見える。


 一瞬、状況を理解出来なかったが、落ち着いて少し前の状況を整理してみた。


 ・・・確か、少し目が疲れたから、先輩の横で座ってたら眠くなって、そのまま・・・。


 そうだ、そのまま眠り込んで、先輩の膝の上に倒れ込んだんだ。


 それに気付くと、急いで体を起こそうとしたが。



 「だめだよ、あーちゃん、ジッとして(めっ!)」



 先輩が上体を倒して、僕の頭をその大きなおっ・・・、じゃなく胸で抑え込む。



 「わ、分かりました、ジッとしますから」



 くぐもった声で、そう答えると、先輩が上体を起こした。



 「もお、人が折角、膝枕をして上げているんだから、大人しくジッとしてなさい(だめだよ)」



 言葉では怒った様に言っているが、その手の優しさは変わらずに、僕の頭を撫で続けている。


 それも、ただ頭を滑らせる様に撫でるだけで無く、指先で揉むようにして撫でたり、人差し指で円を描くように髪を(から)めたり。


 または耳の裏や首筋などを人差し指で滑らせたり、あるいは、猫の様に顎の下をくすぐったりなど。


 先輩がそうやって、僕の頭をモフっていた。



 「どお、あーちゃん、気持ち良い?(いいよね)」


 

 優しい微笑みを浮かべながら、先輩がそう尋ねて来た。



 「・・・はい、とてもきもちいいです」



 僕はまるで、夢を見ているかの様な声を出して答えた。


 そんな僕を見て先輩が、ニコっとする。



 「先輩、今、時間はどれくらいですか?」



 時間が気になった僕は、先輩に聞いてみた。



 「うふふ、まだ正門が締まるまでには時間はあるよ。(まだまだ)

焦らなくても、このままでいられるからね(たっぷりかわいがるよ)」



 そう言いながら、先輩が僕の頭をモフモフと撫でる。


 そして僕は、そのまましばらく、先輩になされるがままになっていた。



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不思議な先輩女子と、平凡な後輩男子との不思議な話。
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