第84話 居眠りあーちゃん
ある日の放課後。
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・・・ん、何だろう、とても柔らかいクッションの上に寝ている。
それに、このクッションは良い匂いがするし。
その滑らかな肌触りに、思わず頬ずりをすると、クッションからビクッとした振動がした。
それで驚いて止めると、今度は、急に僕の頭に手が乗せられ、そして、頭を撫で始める。
その手は、髪を梳る様にして、髪を指の間に滑らせながら、
頭を撫でるように動いた。
その手の優しさと、クッションの柔らかさが気持ち良くて、僕は微睡みの海に沈んでいった・・・。
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「・・・うん」
しばらくして、意識が浮上して来たので、目を開いてみると。
横向きで寝ていた目の前には、襞が付いた黒い布地と、その先には肌色の物体が二つあった。
「あれ、あーちゃん、起きた(おはよ♪)」
耳の方から声が聞こえたので、脚を床に投げ出した状態から、長椅子の上に脚を乗せて頭を上に向けると、僕を覗き込む、のどか先輩の顔が見える。
一瞬、状況を理解出来なかったが、落ち着いて少し前の状況を整理してみた。
・・・確か、少し目が疲れたから、先輩の横で座ってたら眠くなって、そのまま・・・。
そうだ、そのまま眠り込んで、先輩の膝の上に倒れ込んだんだ。
それに気付くと、急いで体を起こそうとしたが。
「だめだよ、あーちゃん、ジッとして(めっ!)」
先輩が上体を倒して、僕の頭をその大きなおっ・・・、じゃなく胸で抑え込む。
「わ、分かりました、ジッとしますから」
くぐもった声で、そう答えると、先輩が上体を起こした。
「もお、人が折角、膝枕をして上げているんだから、大人しくジッとしてなさい(だめだよ)」
言葉では怒った様に言っているが、その手の優しさは変わらずに、僕の頭を撫で続けている。
それも、ただ頭を滑らせる様に撫でるだけで無く、指先で揉むようにして撫でたり、人差し指で円を描くように髪を絡めたり。
または耳の裏や首筋などを人差し指で滑らせたり、あるいは、猫の様に顎の下をくすぐったりなど。
先輩がそうやって、僕の頭をモフっていた。
「どお、あーちゃん、気持ち良い?(いいよね)」
優しい微笑みを浮かべながら、先輩がそう尋ねて来た。
「・・・はい、とてもきもちいいです」
僕はまるで、夢を見ているかの様な声を出して答えた。
そんな僕を見て先輩が、ニコっとする。
「先輩、今、時間はどれくらいですか?」
時間が気になった僕は、先輩に聞いてみた。
「うふふ、まだ正門が締まるまでには時間はあるよ。(まだまだ)
焦らなくても、このままでいられるからね(たっぷりかわいがるよ)」
そう言いながら、先輩が僕の頭をモフモフと撫でる。
そして僕は、そのまましばらく、先輩になされるがままになっていた。




