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第83話 天然天使と登校

 ある日の朝。



 僕は改札を抜けて、駅前に出た所で。



 「おはよ〜、あーちゃん」



 後ろから声を掛けられた。


 振り返ると、そこには有佐先輩が僕に笑顔を向けていた。



 「あ、先輩、おはようございます」



 慌てて、僕も挨拶を返す。



 「偶然やね〜、こぎゃんか所で合うとか。

ねえ、一緒に行かん?」


 「はい、一緒に行きましょうか」



 と言う事で、僕らは一緒に学校に向かう事になった。



 ***************



 二人並んで、学校への道を話ながら歩く。



 「はあ、すっかり寒くなりましたね」


 「ホントやね、ここ一、二週間で急激ん寒む〜なったけんねぇ〜」


 「真っ昼間は、暑い位なんですけどね」


 「朝夕は、結構、寒かもんね〜」



 そう言いながら、先輩がカバンを小脇に抱え直して、手を擦り出した。



 「洗い(もん)ばして、手が水気ば含んどるけん、これからの時期は、朝が辛かね」



 よほど冷たいのか、今度は手を揉みだした。



 「先輩、そんなに冷たいんですか」


 「うん、元々が(あた)かかか地方の生まれ育ちん上、結構、冷え性やけんね〜」


 (※暖かかか:誤字じゃありません、本当にかを三回言います)



 う〜ん、先輩の方言を聞いていると、如何(いか)にも、暖かい地方の出身だから、寒さに弱いのが分かるなあ。



 「確かに、先輩の地元は暖かそうですもんね」


 「うん、こっちん方に(くら)ぶっと、暖かとばってん、せやけど、市内ん方は盆地やけん、けっこう寒かし、山ん方もかなり雪が積もるけんね」


 (うん、こっちの方に比べると、暖かいけど、だけど、市内の方は盆地だから、けっこう寒いし、山の方もかなり雪が積もるからね)


 (※市内は最近、政令市になった某県庁所在地、山はカルデラで有名な山です)


 「そうなんですか」


 「そうたい、山ん方は積もるとやけど、下ん方(平地)は、毎年、何回かは雪が振るとばってん、積もるとは何年かに一回かな」


 「へえ〜」



 二人でそんな事を話しながら、学校への道を進んでいた。



 ****************



 学校に着いて、僕は靴を履き替えているが、先輩が下駄箱の所で手を擦っている。


 それを見て僕は、可哀想に思えたので、何とかしてやりたかった。


 どうしたら良いか考えていたら、ある事を(ひらめ)いた。


 周りを見回すと、階段を見つけたので、先輩に。



 「すいません、先輩、こっちに来てくれませんか」


 「?」



 と言って、階段の方に誘うと、先輩が不思議そうな顔をしたが、素直に僕に付いて来てくれた。



 階段下の死角に着くと僕は、先輩の手を取って、自分の制服の下に先輩の手を入る。



 「あ、あーちゃん・・・」



 普段は、照れたりする表情を見せない先輩が、顔を赤くした。



 「先輩、暖かいでしょ」



 僕がそう言うと、先輩が(うなず)いてくれた。


 僕は自分の手を、先輩の手の上に乗せ、それから自分の体の方に押し付ける。



 「あーちゃん、暖かかかね・・・」



 顔を赤くしながら、僕の顔をジッと見詰める、先輩。


 僕は、先輩の手が温まるまで、そうしていた。



有佐先輩の出身は、K県の北部と言う設定で。

同じK県でも、地域が変わると、気候も変わります。

実は、K県は北部よりも南部の方が物凄く寒いのです。

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不思議な先輩女子と、平凡な後輩男子との不思議な話。
夏の涼風
姉弟物の短編を取り揃えていますので、どうか、お越し下さい。
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