表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
82/136

第82話 入試に望む天然天使

 ある日の昼休み時間。



 僕は昼食を済ませ、図書室に向かう途中。


 校舎の裏手で、建物の基礎の所に、見たことがある女生徒が座っているのを見かけた。


 良く見ると、それは、恵先輩だった。


 確か、しばらくは大事を取って、部活動や図書委員も休んでいるはずだ。


 先輩を見てみると、遠くを見てボンヤリとしている。


 気になった僕は、先輩の所に行ってみる事にした。



 ***************



 下に降りて来たが、相変わらず、先輩がボンヤリとしている。



 「先輩、何をしているんですか?」



 僕はそう言いながら、先輩に近づく。



 「はっ! あー、あーちゃんか」



 僕が声を掛けた瞬間、ビックリしたみたいだが、僕を見ると安堵(あんど)の表情を見せた。



 「ビックリさせてスイマセン、でもこんな所で何をしているんでしか?」



 僕がそう言って、先輩の左隣に座る。



 「今週、X大の推薦試験があるの。

筆記は最低限の学力を見る為だから、問題ないけど。

同時に、面接があるのよね」


 「一応、面接の想定問題は考えているけど。

それも、大筋は決まっているけども、細かい所はアドリブで通すね。

余り細かい所まで決めると、予想外の事に対応出来なくなるから」


 「それも準備が済んで、後は当日を待つだけなんだけど。

ただ待つのも何だか、落ち着かなくて。

それで、一人になれる所で、気分を落ち着けているの」



 苦笑しながら、先輩がそう言った。


 なるほど、焦っている訳では無いが、気分が落ち着かないので、落ち着けているだけなのか。


 一時は、ちょっとした事で追い詰められていた事があったので、心配していたが、一応は安心した。(第66話参照)



 「所で、あーちゃんの方は、図書室に行かなくても良いの?」


 「あー、後で、他のメンバーには謝って置きます」


 「ゴメンね、また心配かけさせて」



 先輩が、済まなそうな表情でそう言った。



 「でも、あーちゃんに話したら、少しは楽になったかな」



 先輩が、チョット無理をして、笑顔を作った様に見えたので、僕はそんな先輩を楽にしてあげたくて。



 「お姉ちゃん、もっと楽にしてあげるからね」



 そう言って立ち上がると、先輩を抱き締めた。



 「あ、あーちゃん・・・」



 先輩が、ささやく様な声を出した。


 ポニーテールがあるから、頭を撫でられないけど。

その代わりに、背中を優しく擦ってあげた。


 そうしていると、先輩の腕が僕の背に廻されていく。



 「お姉ちゃん、気持ち良い?」


 「うん、気持ち良いよぉ・・・」



 僕がそう言うと、先輩が夢見心地にいる様な声で答えた。


 そうやってしばらくの間、先輩を包み込む様にして抱き締めながら、優しく背中を擦っていた。



 ****************



 「先輩、もうすぐ、授業が始まりますよ」



 時間が無いのに気づいて、先輩にそう言うと。

先輩が、スッキリとした顔で、僕を見た。


 

 「ありがとう、また、あーちゃんに助けられたね」



 照れた様な笑いを見せながら、先輩が僕に礼を言った。



 「キ〜ン、コ〜ン、カ〜ン、コ〜ン」



 二人でその様な話しをしていると、午後の予鈴が聞こえてきた。



 「げ、早く戻らないと」


 「あーちゃん、急ぎましょう」



 僕たちは手を(つな)ぎながら、慌てて、校舎の方に向かった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
不思議な先輩女子と、平凡な後輩男子との不思議な話。
夏の涼風
姉弟物の短編を取り揃えていますので、どうか、お越し下さい。
星空プロフィール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ