第81話 図書室で誘惑2
ある日の昼休み時間。
「ふう〜」
本棚を見上げながら、一息付いた。
今日は、図書室にある本を一冊一冊、取りだし、中身を確認して破損が無いかを、一週間かけて確認している。
壊れた本があったら、回収して、修理を行う。
そうして疲れたので、一旦、手を止めていたら。
「(ツーーー)」
誰かが、僕の制服の中に手を入れて、指を背筋に沿って滑らせた。
「うわっ!」
ゾクゾクする物が背中に走ったので、背中を反らしながら前に飛び退くと。
「やっほー」
声のする方を振り返ると、以前に僕を誘惑して来た、猫っぽい女の子がいた。(第79話参照)
「えっ、この間の」
「ふふふっ、久しぶりだね」
そう言って、ニコニコしながら僕を見ていた。
その女の子は、笑顔を見せながら、僕の間近まで接近する。
「この間は、邪魔が入ったけど。
今は、誰もいなそうだし、チャンスだね」
僕は周囲を見渡すと、いつも通り図書室は人気が無く、先輩達は、職員室に、修理用のシールをもらいに行っている。
つまりは、当分の間は僕ら、二人きりになる訳だ。
「さあ、この間の続きをしましょうか」
そう言って、なぜか、僕の制服のボタンを外し始める。
「えっ!」
その意表を付く行動に、僕の頭の中は真っ白になった。
そして、ボタンが外れて、制服の前が開き、中の白いカッターが丸見えになると、その女の子が制服の中身に抱き付く。
女の子が僕に抱き付くと、背後に廻した手を上下にネットリと動かす。
そのネチッコイ動きに、僕の体にくすぐったさと気持ち良さが、ない交ぜになった感覚が走る。
「ふふふっ、あなたって、子供みたいに体温が高いのね」
今度は、僕に廻した腕に力を入れて、強く抱き付いた。
一連の行為に、僕はパニック状態になりながらも、その女の子に尋ねた。
「あなたは、誰ですか?」
「そうだね、まだ、名前を教えていなかったね。
私は、瀬田 美咲って言うのよ。
美咲って読んでね」
そんな事を、美咲先輩が耳元でささやいた。
僕は何も出来ずに固まっていると、突然、先輩が僕の頬をペロリと舐めた。
そのヌルリとした舌の感触が、頬をなぞると、僕の頬が熱くなる。
「・・・」
予想外の出来事が続いたので、僕は最早、パニックを通り越して、意識すらもボンヤリしてきた。
焦点の定まらない目で先輩を見てると、そんな僕の様子に微笑みながら。
「あれれ、余りの事に混乱したのかな?
かわいいなあ、秋人くんは♪」
そう言いながら、背中に廻した手を使って、ズボンに入れているシャツを引っ張りだし、シャツの中に手を入れて来た。
それから、直に、僕の肌に手を当てて、まざぐり始める。
先輩の柔らかな手が、僕の背中を滑る。
その手が滑るたびに、服の時以上の感覚が体を走る。
その感覚に悶えていると。
「ガラッ」
図書室の扉が開いた。
「お〜い、あーちゃん、戻ったよ(ただいま)」
それと同時に、のどか先輩の声が聞こえてくる。
「・・・また邪魔が入ったわね、今度は別の場所でしましょうか」
妖しい笑みを浮かべながら、先輩が僕から離れると、背中を向けてその場から立ち去る。
僕は、制服の前を開いて、しかも、後ろのシャツをズボンから出したままの、マヌケな状態で、後ろの本棚に寄りかかっていた。
「はあ〜」
中断された事に、安堵感と惜しい感情がない交ぜになった感覚を感じながら、また先輩の後ろ姿を見送っていた。




