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第78話 天然天使と秋風

 ある日の放課後。



 今日はカウンターで、麗子先輩と一緒に座っていた。


 静先輩とのどか先輩は、予約があったので、予備校に行っている。


 恵先輩は、推薦入試の面接の対策を立てる為に、いまは部活は休止中。


 なので、二人っきりで図書室にいたのだ。


 今、麗子先輩はカウンターに座りながら、文庫本を読んでいる。



 「・・・」



 その、清楚な雰囲気を(たた)えた、横顔を何となく眺めていると。



 「ん、どうしたの、あーちゃん」



 先輩がそんな僕を見て、少し困った様な微笑みを浮かべていた。



 「あ、いえ、先輩がきれいだったから」


 「え、そんな・・・」



 その先輩の表情に、思わず言葉が詰まると。


 先輩が顔を真っ赤にして、(うつむ)いてしまった。 



 **************



 そうして俯いていた先輩が、しばらく()ってから、おもむろにつぶやいた。



 「そう言う、あーちゃんだって、可愛いんだからね」



 先輩が、僕の方を、恨めしそうに見ながらそう言った。



 「えっ!」


 「だって、あーちゃんの女装しているのって、物凄く可愛かったよ」


 「先輩、見てたんですか・・・」



 そう言いながら、してやったりといった笑顔を見せる先輩。



 「うん♪ 特に、アリスの時の、ゴスロリ姿が良かったね。

思わず、モフモフしたくなっちゃうよ」



 先輩がニコニコしながら、そう言う。



 「え〜、先輩、忘れてくださいよ」


 「やだ、しっかりと覚えておくもん♪」



 いつの間にか、先輩に(もてあそ)ばれていた。



 **************



 そうやって、二人でジャレていたら、もう学校が閉鎖される時間だ。



 「先輩、もう帰りましょうか」


 「うん、帰ろっか」


 「・・・先輩、一緒に帰りませんか?」


 「うん、良いよ」



 二人でジャレていたら、先輩と別れるのが惜しくなって、誘ってみたら快く返事してくれた。


 そう言う訳で、先輩と一緒に駅まで帰る事になった。



 ***************



 秋も深まり、すっかり陽が暮れてしまった帰り道。


 僕と先輩は、二人並んで歩いていた。


 そうして歩いていると、突然、突風が吹いて来た。



 「キャッ」



 先輩が可愛らしい、叫び声を出した。


 その声を聞いて、先輩の方を見てみると。

先輩が風で煽られた髪を、掻き上げていたのが見えた。


 その仕草を見た途端、僕の心臓の鼓動は激しくなった。



 「ん、どうしたの、あーちゃん?」



 そんな僕の心の内を知ってか、知らずか、僕の顔を覗き込む様にして、そう言う先輩。


 そんな先輩に僕は、頬を熱くしてしまう。



 「変な、あーちゃん」



 先輩が、口に手を当てながら、クスクスと笑う。


 先輩のそんな様子に、僕は何も出来ずに固まってしまった。



 「ほら、もう急がないと、時間が無いよ」



 しばらくその状態でいたら、そんな僕の様子に()れてしまい、先輩が僕の手を握ってしまう。



 「ほら〜! 急げ、急げ〜!」



 そう言いながら、僕の手を引いて走り出す先輩。

 

 こうして、日が暮れた通りを、先輩に手を引かれながら、僕は走っていった。



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不思議な先輩女子と、平凡な後輩男子との不思議な話。
夏の涼風
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