第72話 文化祭の準備2
ある日の放課後。
今日はいつもとは違い図書室、正確に言えば図書準備室が賑やかだ。
理由は、読書部と手芸部とが合同で出す、出し物の打合せがあるからだ。
カウンターの方は、部員でない図書委員の、麗子先輩にお願いしてもらっている。
準備室では、テーブルを挟んで片側に読書部、もう片側には手芸部の部員が座っている。
「それでは、手芸部、読書部合同の打合せを行います」
「まずは、何を出すのか決めないとね」
翠先輩が打合せを開始すると、恵先輩が切り出した。
「そうですね〜、まずは両方ともに関連した物にしないと」
「でも、ウチの方は簡単に色々と思いつくけど、読書部の方が活動が漠然としているから、イメージが湧かないよね」
静先輩と、手芸部側の女の子がそう言った。
ちなみに、手芸部は当然、4人全員が女子だ。
「そうだよね、読書部の方は、活動内容を出し物に反映させるのに、イマイチ、イメージが涌きにくいね(う〜ん)」
「しかも、それを両方とすり合わせないといけないし」
のどか先輩が更にそう言うと、手芸部の別の女の子がまたそう言った。
「確かに、元々からウチの方は、出し物を決め辛らかったんだよね。
先代部長や先生の話だと、参加する年の出し物は、いつも資料の展示が多いらしかったから」
恵先輩が腕を組んで、悩み出した。
「ウチの方は融通が利くから、そちらが決まったら、それに合わせられるからね」
翠先輩がその状況を見て、そう言う。
今度は、僕ら読書部の面々が考え込んだ。
そうやって考え込んで内に、僕はある事を思い付いた。
「そうだ、童話の登場人物のコスプレをして、その話の読み聞かせ会なんかはどうですか?」
「「「ん!」」」
その僕の言葉に、読書部の3人が反応した。
「例えは、不思議の国のアリスなら、アリスのコスプレをするとか」
「ああっ! なるほど」
「それは良いね」
「さすが、あーちゃん(ないす!)」
直ぐに、意見が纏まる。
「こちらは、こう言う意見で纏まったけど、どうかな?」
恵先輩が手芸部側に、そう提案した。
「それは、良いじゃないの、こちらの腕も生かせるし」
翠先輩の反応もナカナカだ。
「そう言うのもアリだね」
「ただ、製作期間の問題もあるかな」
「まあ、当然、読書部側の協力も必要だね」
他のメンバーも、こちら側の協力が前提だけど、概ね賛成である。
「と言う訳で、そちら側の協力があれば、ウチの方はOKよ」
そんな回答が帰ってきた。
「もちろん、こちらも十分協力するわよ」
恵先輩もこれを了承した。
「はい、これで手芸部と読書部の、合同の出し物は”コスプレ読み聞かせ会”で決定ね」
翠先輩がそう言って、決定した。
だが、この事が自分に返って来る事など、この時は思いもしなかった。




