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第68話 天然天使とお弁当5

 ある日の昼休み。



 「キ〜ンコ〜ン、カ〜ンコ〜ン」


 4時限目終了の鐘が鳴った。


 いつもの様に、教室を出て食堂へと向かう。



 「ん、あれは?」



 食堂へ向かう途中で、良く見た事がある姿を見かけた。


 前髪を切り揃えて、髪を肩まで伸ばしたその後ろ姿は、麗子先輩だった。



 「麗子先輩!」


 「あれ、あーちゃん!」



 僕が先輩を呼ぶと、先輩がそれに答える。


 先輩は、可愛い(つつみ)の小さな弁当箱を持っていた。



 「今から、食事ですか」


 「うん、食堂にね。

あーちゃんこそ、どこに行くの?」


 「はい、購買でパンを買って、食堂で食べようと思ってます」


 「じゃあ、一緒に食べない?」


 「良いんですか」


 「うん、私は構わないわよ」



 そう言う訳で、先輩と一緒に昼食を取る事になった。



 ****************



 「スイマセン、お待たせしました」



 パンを買っている間中、待っていてくれた先輩に、お礼を言った。



 「ううん、良いのよ、さあ食べましょうか」



 そう先輩が言うと、僕は先輩の向かいの席に座った。


 先輩が弁当の包を解いて、弁当箱の蓋を取る。


 そして、”いただきます”と言った後で、箸を付ける。


 先輩の弁当を見てみると、中身は、だし巻き玉子、ミニハンバーグ、ウインナー、ベーコン巻など、弁当としてはオーソドックスである。



 「先輩、自分で作っているですか」


 「うん、冷凍食品が多いから、別に大した事は無いよ」


 「それでも、自分で作っているのだから、偉いですよ」


 「そんな事無いよ」



 先輩が照れたように言った。


 そして自分は、パンの包装を破いて、それを両手で持って”モグモグ”と頬張(ほおば)って食べていると。

なぜか、先輩がニコニコしながら僕の事をみている。



 「先輩、どうしたんですか」


 「うん、あーちゃんの食べる姿がかわいいから見ていたの。

静とのどかの言う通り、両手で持って頬張って食べていると、本当にリスみたい。」 



 ・・・僕は赤くなりながら、パンを食べた。



 ****************



 「先輩って、部活はどこですか?」



 この学校は、建前上は一応、全生徒が部活に必ず入っていなければならない。


 しかし、成績との(から)みで、塾などに行かないとイケナイ場合も多いので、実際は色々と抜け道があるのだ。


 ちなみに、有佐先輩は料理部に席を置いているが、家の家事を一手に引き受けている上、その合間に図書委員もしているので、事実上、幽霊になってしまっている。



 「私は天文部だけど、あそこは・・・」



 先輩が言いよどんだのは、天文部は読書部と同じ幽霊だらけだけど、真面目に活動しようとする人間が全くいない為、部活としては全然、機能していない部だからである。


 現部長が一人で頑張っているが、来年は存続しているかどうか、全く分からない。



 「今は、私が行ってみても、誰もいないし」



 最近では、その部長も心が折れたらしく、部活に全く出てこない様だ。



 「でも、読書部が(うらや)ましいな。

あんなに楽しそうだから」



 本当に羨ましそうに言う、先輩。



 「ごめんね、話し込んでしまって」



 見ると、二人共食べ終わって、先輩は弁当箱も片付けたところだ。



 「じゃあ、図書室に行きましょうか」



 そう言って、先輩が立ち上がった。


 それと同時に、僕も立ち上がる。



 「少し急ぎましょう、時間を喰っちゃたんで」



 僕は、そう言いながら、二人で図書室へと急いだ。



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不思議な先輩女子と、平凡な後輩男子との不思議な話。
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姉弟物の短編を取り揃えていますので、どうか、お越し下さい。
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