第67話 二人でぼんやり
ある日の昼休み。
僕は、準備室で長椅子に座って、ボンヤリとしていた。
別に、理由がある訳でも無く、ただ、何となくである。
そう言う時ってあるでしょう?
そうやって、壁を見ながらボンヤリしていると、準備室のドアが開いて、のどか先輩が入って来た。
それから、ボンヤリしている僕を見て。
「ん、あーちゃん、何しているの?(なに?)」
「はい、何となくボーとしているんですよ」
「そうなんだ(ヘンなの)」
「はい」
不審に思いながらも、先輩が僕の隣に座る。
「ねえ、あーちゃん(ねえ)」
「はい」
「学校、楽しい?(どう?)」
「はい、特に図書室にいると楽しいです。
先輩たちと、一緒にいると楽しくてしょうがないですよ」
「私もよ、前から楽しかったけど。
今年は、あーちゃんが来てくれたから嬉しかったんだよ(そうだよ)」
「そうなんですか?」
「うん、こんなに可愛い男の子が来るなんて、思ってもいなかったから(びっくりしたもん)」
「・・・」
思わず、僕は照れてしまった。
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二人で、色々と話ながらボンヤリしている。
周りの空気が、緩やかに流れているのが感じられる。
その内、先輩が僕の横にくっ付いて来た。
そうしていると、先輩が。
「あーちゃんとの関係って、ある意味、理想的な関係だね」
「どうしてですか?」
と言って来たので、僕が尋ねた。
「お互いに甘えたり、甘えられたりして、一方的な関係じゃないから。
あーちゃんとの関係には、好意の循環があるのよ」
「無償の愛とか言うけど、それは好意の循環から生まれる物だと、私は思うの」
「それが無い、一方的な無償の愛と言うのは、病的な関係か、相手を騙すつもりなのか、宗教しか無いんじゃないかと思うの」
「病的?」
「例えば、共依存とか」
それは、心理学の本を読んで聞いた事があるなあ。
先輩が言う好意の循環じゃなく、歪んだの循環の関係だ。
「だからね、後で可愛がってあげるから。(たっぷりと)
ねえ、あーちゃん、甘えさせてね(おねがい)」
そう言いながら、先輩が僕にしなだれて来た。
僕は、自分の肩に頭を付けた先輩の頭の上に、自分の頭を乗せて頬ずりした。
そうすると、先輩が益々、密着して来るのだった。
周りの空気は相変わらずに、緩やかに流れている。
そんな空気の中、二人、ボンヤリしながら寄り添っていた。




