第65話 天然天使をなだめる
ある日の放課後。
今日は本の状態確認と、痛んだ本の修復を行っている。
修理と言っても、中が割れたり、表紙が外れている物を、保護シールでくっ付けると言った物だが。
僕と静先輩が、本棚から一冊ずつ出して確認し。
のどか先輩と麗子先輩は、準備室で修理を担当している。
恵先輩は、今日はお休みだ。
3年生は普通この学校では、2学期一杯で引退となるけど、部活によりその時期は違い。
中には、2学期で3年が部活にノータッチになり、2年生が実権を握る様な所も多い。
恵先輩は責任感が強いので、2学期一杯までする様だが。
でも、最近、疲れているのが目に見えるので、無理に帰ってもらった。
と言う訳で、二人で本棚の方で本の確認をしていると。
「ふうっ」
静先輩が溜め息を付いた。
どうやら、かなり疲れている様だ。
静先輩は一度決めた事は絶対にやり遂げる、良い意味で言えば責任感が強い、悪く言えば融通が利かない所があるから無理をしやすい。
前に、脚立から落ちたのもそれが原因の一つだったし。(第7話参照)
「今日はこの辺にしませんか?」
と、僕が言っても。
「後もう少しだから」
そう言って、取り合おうともしない。
見ていて、心配でしょうが無い。
無理に止めさせる為に、少し強引な手段に出る。
背中を向けて作業をしている、静先輩を後ろから抱き締めた。
「キャッ!」
先輩が可愛らしい叫び声を出した。
「先輩、無理をしないでください。
先輩、放っておくと無理をするから。」
「・・・でも、あーちゃん」
顔を赤くしながら、それでも何か言いたそうな先輩。
「前に、それで脚立から落ちたでしょ。
そんな事になって貰いたく無くて、お願いします」
「・・・うん」
僕が先輩の頭に、右頬を乗せてそんな事を言うと、先輩が小さく頷いた。
「じゃあ、もう良いですね」
「いや、離れないで」
先輩が僕の言う事を聞いてくれたので、離れようとしたが。
先輩が、声を出して嫌がった。
「もう少しだけで良いから、このままで」
先輩がそう言うので、僕はそのまま先輩を抱きつづけた。
その状態で、僕は先輩に頭に頬ずりをすると、先輩が左手を伸ばして僕の髪を指で梳いた。
「あーちゃん、気持ち良いよぉ、あーちゃんは?」
「はい、僕もきもちいいです」
二人でマッタリしていると。
「あ〜!、何しているの〜!」
と、のどか先輩が叫んだ。
そちらの方を見ると、のどか先輩がこちらを指差し、麗子先輩が両手に口に当てて。
えっ、私の年収これだけ・・・、じゃなくて、驚いていた。
「羨ましい、私もハグして〜!」
そう言って、突入するのどか先輩。
それを見て、オロオロする麗子先輩。
図書室は4人だけで、大混乱になった。




